見出し画像

山崎雅弘 『歴史戦と思想戦 』 と、 ミキ・デザキ『主戦場』 : ネトウヨ が読まれて困る本 ・ 観られて困る映画 (再投稿第5版のタイトルのみ改訂版)

書評:山崎雅弘『歴史戦と思想戦 ――歴史問題の読み解き方』(集英社新書)

とても冷静で知的な本。
しかし、そんな著者の冷徹な知性が、ネトウヨ的世界観(安倍晋三・日本会議・歴史修正主義・エセ保守系の歴史観)の理論的解析に向けられたのだから、ネトウヨにとって、これほど不愉快なものはありません。

彼らにしてみれば「パヨクの内田樹と津田大介が推薦してるんだから、ろくなものじゃないというのは、読まなくても分かる!」ということで、読まずに、ここAmazonにもレビューを書いたり、それに「参考になった」評を投じたりもするのでしょう。
たしかに、読まずにレビューを書くのはアンフェアだけど、でも彼らには、本書は知的に難しすぎるでしょうし、気持ち的にもつらいだろうから、そこは勘弁してあげてもいいと、個人的には思います。

画像2

とにかく、ジャンルは違えど、私の本年度のベストワン本である、中村圭志の宗教批判書『西洋人の「無神論」日本人の「無宗教」』にも匹敵する、知的かつ論争的な好著であり、両者に共通するのは、批判対象が「悪しき宗教性=カルト性」だということになるでしょう。
非理性的な信仰者が、無神論者を「悪魔」呼ばわりするのと同様の反知性的嫌悪を、ネトウヨ的世界観(安倍晋三・日本会議・歴修正主義・エセ保守)の持ち主たちが、本書に向けるのは、しごく自然なことなのだと思います。

さて、ここで、本書に関連する、一本の映画を紹介しておきたいと思います。
それは、日系アメリカ人監督、ミキ・デザキのドキュメンタリー映画『主戦場』です。

画像3

この映画は「従軍慰安婦問題」を扱っていますが、その歴史と当事者証言を紹介するといった、これまでのドキュメンタリー映画とは違い、「従軍慰安婦問題・論争」を扱った作品です。つまり「論争」に焦点を絞った作品です。
ですから、「ネトウヨの教科書」の著者である、櫻井よしこ、藤岡信勝、杉田水脈、ケント・ギルバート、テキサス親父といった面々が登場して、自論を得々と展開する一方、それに反論する論者たちの意見も紹介されています。

画像4

(左から、藤岡信勝、杉田水脈、ケント・ギルバート、藤木俊一、テキサス親父

この映画の見所は、良識的でマトモな人たちの方ではなく、前記のようなネトウヨ的な人たちの方です。
もちろん、彼らの主張に説得力があるというのではありません。
彼らのデタラメさが、他でもない、本人の語り口によって明らかになってくるところが、この映画の醍醐味なのです。

例えば、杉田水脈はたかだか数時間のインタビューで言ってることに露骨な矛盾が出てくるし、藤田信勝はバカ正直に『国家は(たとえ悪くても)謝罪してはいけないんです』と、交通事故を起こした際は絶対に謝罪したらダメ的な打算オンリー論を語りますし、特にすごいのが保守系外交評論家の加瀬英明で、歴史は論じれども「本(歴史研究書)は読まない」と公言するのですから、へたなネトウヨ以下。しかも、その表情がまた、ラスボス的な反魅力を漂わせて唯事ではないので、必見です!

画像5
画像6

(実物は、もっともっとインパクトがある)

ともあれ、こんな彼らの理論的なデタラメさは、山崎雅弘『歴史戦と思想戦』の方が懇切丁寧に解説してくれてますが、映画の方では、そのデタラメなネトウヨ系理論家たちの「生きた表情」を見られるところが、なにより素晴らしい。
その表情を見ていれば「こんな表情をする人たちだからこそ、あんな自己中な理屈が出てくるんだな」と、非常に納得させられる映画になっている。

ですから、多くの人に、山崎雅弘『歴史戦と思想戦』と、ミキ・デザキ監督のドキュメンタリー映画『主戦場』を、併せて強くお奨めしたいと思います。

画像6

----------------------------------------------------------------
【補記1】(2020年4月7日)

当レビューを最初に投稿したのは「2019年6月11日」であったが、それから1年2ヶ月も経って、昨日、何者かによって初めて「削除」されたので、再アップしておく。

当レビューにかぎらず、私のレビューはよく削除されるのだが、たびたび削除され、そのたびに再アップするということを繰り返しているものとしては、

(1)稲垣良典『神とは何か』 59
(2)若松英輔、山本芳久『キリスト教講義』29
(3)金子夏樹『リベラルを潰せ』39
(4)大塚英志『感情天皇論』91
(5)三井誠『ルポ 人は科学が苦手』 61
(6)将基面貴巳『愛国の構造』44
(7)門井慶喜『定価のない本』29

のレビューなどがある。
(※ 末尾の数字は、現時点での「参考になった」数)

このうち(1)と(2)は、キリスト教「カトリック保守派」を批判したもの。
(3)以降は、安倍政権や日本会議といった「ネトウヨ系保守」派、つまり「エセ保守」を批判する内容を含むものだ。

これら「(エセ)保守派」批判の私のレビューに対し、「削除者」は、正々堂々と反論批判の論陣を張ることもなく、管理者通報によって、こっそりと「削除」をしているのである。

むろん、今回削除された当レビューも、その例外ではなく「ネトウヨ系保守」派、つまり「エセ保守」を批判する内容を含むものだ。したがって、犯人もそうした輩と見て間違いないだろう。
こういう姑息な輩が「ネトウヨ」であり、安倍政権を支持者なのである。まさに「類は友を呼ぶ」と言えよう。

彼らは、このレビューが読まれることを怖れ、このレビューが扱った、山崎雅弘著『歴史戦と思想戦 歴史問題の読み解き方』(集英社新書)が読まれることを怖れている。だからこそ「削除」するのである。

----------------------------------------------------------------
【補記2】(2021年4月10日)

約1年ぶりの削除があったので、再アップしておきます。

その間に、安倍晋三政権から菅義偉政権に替わったが、安倍政権時に最初の緊急事態宣言が発令されて以来、いまだにコロナ禍は衰えを見せず、徐々に山の高さを増しながら、まもなく第3波をむかえようとしている。

「二つの政権」を象徴する政策は、安倍政権は「アベノマスク」の配布、菅政権は「Go To(トラベル、イート)」。
前者は「やってる感」政策、後者は「命よりも経済」政策だと言えるだろう。

----------------------------------------------------------------
【補記3】(2021年5月3日)

3度目の緊急事態宣言は、解除の目処が立たず。それでも、国民の声を無視して、菅義偉内閣は、オリンピックを開催するのか?

強行すれば、多くのコロナ死者の犠牲の上に開催された「呪われたオリンピック」になることは確実だ。

----------------------------------------------------------------
【補記4】(2021年5月5日)

さっきまで、コロナ禍「緊急事態宣言」の最中である札幌市でのマラソン大会の中継をやっていたが、放送している方もやましさがあるんだろう、寒々として印象しかなかった。

ちなみに、全国の新型コロナ重傷者数は、過去最多だとか。

----------------------------------------------------------------
【補記5】(2021年5月15日)

レビューが削除されたので、再アップしておきます。

さて、「ネトウヨ 」関係の新しいレビューを書きましたので、ご紹介します。
谷岡一郎『悪魔の証明 なかったことを「なかった」と説明できるか 』(ちくま新書)のレビュー

谷岡一郎は〈ネトウヨ御用達(三流)学者〉であるか?

どうぞ、ご笑読ください。

----------------------------------------------------------------

初出:2019年6月11日「アマゾンレビュー」
  (2021年10月15日、管理者により削除)
再録:2019年6月14日「アレクセイの花園」
  (2022年8月1日、閉鎖により閲覧不能)

 ○ ○ ○


 ○ ○ ○


















































 ○ ○ ○


この記事が参加している募集

読書感想文

映画感想文