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マグニフィセントなnoter様

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心に響いた”マグニフィセント”な記事をまとめています。わたくしの独断と偏見で選出しております。不定期ではありますが紹介記事も書きたいなと思っております🐈
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#小説

マグニフィセントなnoter様📒総合受付案内所📒

マグニフィセントなnoter様📒総合受付案内所📒

ようそこいらっしゃいませ。

こちら、ネコぐらしの勉強暮らしpresents

マグニフィセントなnoter様
📒総合受付案内所📒
でございます🐈

『マグニフィセントなnoter様』とは?
文才や表現力にあふれる方が、noteの世界にはたくさんいらっしゃいます。

特に「これは皆に広めたい!」と心に響いたnoterさんをピックアップしているマガジン。

それが『マグニフィセントなnoter

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エロを小さじ1 《第一話》

エロを小さじ1 《第一話》

《第一話》エロティックの素は、いかが?

 『モテる女になる! セクシーへの最短距離』という講習会は、まるで料理教室のような雰囲気で進んでいる。
 料理教室と違うのは、玉ねぎや人参やじゃがいもを切りながら「モテる女になるために最も重要な要素、それはセクシー」と講師が繰り返し言っていることだ。
「皆さん、世の中には外見が特に目立つわけでもないのに、常に異性を惹きつける女性がいますでしょう。皆さんは、

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神秘をかたどる -小説『フランケンシュタイン』を巡る随想

神秘をかたどる -小説『フランケンシュタイン』を巡る随想



【水曜日は文学の日】


人類の創作の中には、元の作品世界を超えて、ある種の人類共通の象徴になった存在があります。神話の中から現実のイコンになったような存在。

「フランケンシュタイン」は、そんなイコンの中でも、かなり数奇な広まり方をした例でしょう。

イギリスの作家メアリー・シェリーの創作した小説『フランケンシュタイン』から出てきた怪物は、ポピュラー・カルチャーの中に深く浸透していま

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エッセイストになるまで【4】売れるタイトルか似合うタイトルか、それが問題だ

エッセイストになるまで【4】売れるタイトルか似合うタイトルか、それが問題だ

初稿に取り掛かる前に、エッセイ本のタイトル案をいくつか考えることになった。タイトルのニュアンスによって、エッセイの方向性も固まる。まだ仮とはいえ、大事な作業だ。

編集者時代も、本のタイトルを考えるのは好きだった。小説のタイトル付けもわりと上手い方なんじゃないかと思う。(井上荒野さんに褒められたこと、あるし!)

だから今回も張り切って考えた。
それをKさんと書評家の藤田香織さん、ライターの菊池良

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青に居た

青に居た

山と山のあいだにひっそり存在する集落に住んでいた。

家を出て道路に立ち、南を向けば海へと続く道。
北を向けばふたつの山と空。

ふたつの山のうち、東側の山を越えれば観光名所。
西側の山を越えれば学校とささやかな町。

西側の山にある緩やかな坂になったぐねぐね道をのぼって山を越えないとどこにも行けない、そんな山と山のあいだに住んでいた。

小学校高学年の時に、東の山と西の山を頂上付近で繋ぐ橋が架か

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人間椅子、「人間椅子」、『人間椅子』

人間椅子、「人間椅子」、『人間椅子』

 今回は「立体人間と平面人間」の続きです。それぞれが別の方向をむいた言いたいこと(断片)がたくさんあり、まとまりのない文章になっています。申し訳ありません。

 お急ぎの方は最後にある「まとめ」だけをお読みください。

人間椅子から「人間椅子」へ
 江戸川乱歩の『人間椅子』の文章は朗読に適していると思います。音読してすらすらと頭に入ってくる文体で書かれているのです。特に難しい漢語が使われているわけ

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街中華のマトリックス

街中華のマトリックス

 街中華と瓶ビール。そして強火を使った食事はどこからか抜け出す力を生み出すのかもしれない。

 
 二月の金曜の夜。西高東低の強い気圧配置が列島を覆う。そこに南岸低気圧が八丈島沖を進み、夜半に雪が降る。それまでは三国山脈を乗り越えた冷たく渇いた風が吹く。

 大きな発送ミスがあり、会社の冷え切った倉庫で肉体労働を後輩の佐藤と朝から始めた。体を動かした時にかいた汗が冷気に包まれ体を冷やす。それが何度

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「好き」の原体験を探る

「好き」の原体験を探る

そういえば、ことあるごとに文章を書くのが好きだ好きだと言って憚らない私だが、そもそも文章を書くのが好きになったきっかけはなんだったのだろうか。

仕事をする前、大学の時分には暇を持て余してつたない小説を書いたことがあった。どれも陰鬱な作品ばかりで小説とは人間性がよく出るものだと我ながら感心したものだが、同時に小説を書く作業というのは苦難以外の何物でもなく、おそらく私には向いていないのだろうと半ばあ

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太宰治【人間失格】におけるキリスト的「父性愛」と仏教的「母性愛」

太宰治【人間失格】におけるキリスト的「父性愛」と仏教的「母性愛」

 破滅型私小説の書き手である太宰治が上梓した、「人間失格」という異様な作品について取り上げる。太宰の自己否定的な作風を、単に精神病気質の一言で片付けてしまう様では、文学としてつまらない。一方で太宰の作品は評価が難しい所もあるため、この記事では個人的な読解が多く含まれる事を了承して頂きたい。

人間とは何か

 人間とはどの様な存在かと問われた時、我々は漠然とした感覚を抱く事しか出来ず、詳細に言語化

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【短編小説】幸せな夢

【短編小説】幸せな夢

 夢を見ていた。見知らぬ場所で長く付き合っている彼女と手を繋いで歩いている。空を見れば、澄んだ青空に形の良い雲が流れていた。風は暖かく近くの飲食店の良い匂いを運んでくれる。すれ違う人達は笑顔で、それを見ていると胸が温かくなり、二人は自然と笑顔になってしまいそうだった。
 しばらく歩いていると、見覚えのある顔があった。彼は確か、高校の同級生だ。穏やかで物静かな彼は唯一の友達と言える存在だった。そんな

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時雨はいざなう

時雨はいざなう

1・時雨模様映画館内の待合室は、カンヌ国際映画祭受賞の日本映画が、上映されていることもあって、通常より多くの人が、館内で開始時間を待っていた。待ち椅子で広げるパンフレットの微かな紙音だけが、人の気配を感じさせた。

その静けさを破ったのは中年の女性の、「あ、来たわ、おはよう!」と叫んだ声であった。螺旋状の階段を上り切って、顔を覗かせた白髪の婦人を捉えての挨拶であった。

女性の隣に座っていた私は、

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虹の橋〜命の意味を知ったわんこの物語

虹の橋〜命の意味を知ったわんこの物語

 ぼくはゴンタって名前のワンコ。おじいさんがつけてくれた名前だ。優しいおじいさんと、ぼくと、クロって名前の最近うちにやってきた猫と三人で暮らしている。小さなクロは、雨の日に、ミィミィ鳴いておじいさんの家の庭に入ってきた。優しいおじいさんは、クロを家に入れて、おふろにいれて、ご飯を食べさせた。おじいさんがその時こんなふうに言っていた。
「ゴンタや。おまえに出会ったのも、雨の日だったなぁ。いつも散歩に

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蟹壺(第1話)

蟹壺(第1話)

■あらすじ 心を病んでしまった主人公が田舎の町で出会ったのはいずみというどこか妖しげな美しさを漂わせた少女だった。彼女と出会い、魅せられてしまった僕はいずみのいいなりになって死体の処理を手伝うことに。死体を処理した場所こそ、蟹の住処とされる「蟹の壺」と呼ばれる地だった。
 時が流れ、大学生の「僕」は大学の屋上でいずみと名乗る女性と出会う。彼女に誘われるままにアパートへとついて行き、いずみが席を外し

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ムブガル・サール『人類の深奥に秘められた記憶』

ムブガル・サール『人類の深奥に秘められた記憶』

2023年に翻訳された小説の中ではかなり優れていたと思う、モアメド・ムブガル・サール作『人類の深奥に秘められた記憶』(Mohamed Mbougar Sarr La plus secrète mèmoire des hommes)についての小文です。

作者は1990年生まれのセネガル人で、パリ在住。本作は2021年にフランス最高の文学賞であるゴンクール賞を受賞し、フランスで65万部の歴史的ベスト

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