清 繭子/小説家になりたい人(自笑)日記

きよしまゆこ/小説家になりたい人  四十を過ぎて小説家を目指す、己を笑うしかない日々の…

清 繭子/小説家になりたい人(自笑)日記

きよしまゆこ/小説家になりたい人  四十を過ぎて小説家を目指す、己を笑うしかない日々の記録。web「好書好日」にて新人賞受賞者へのインタビュー「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」連載中。出版社で雑誌・まんが編集を経て独立。「深大寺恋物語大賞」審査員特別賞受賞。

マガジン

  • ひとひら小説

    これまでのひとひら小説をまとめました。400字から1000字の掌編です。

  • 刺繍詩集

    清 綿子(きよしわたこ)として、刺繍で詩を描いてたときの作品集です。 「ことばを持って歩く」をコンセプトに、ことばと、そのことばの持つ情景をハンカチに刺繍した「ことばハンカチ」を作っていました。毎年個展をし、装苑で「新しい詩集作家」として取材されたことも。またいつか、詩の続きを描きたいな。

最近の記事

  • 固定された記事

「子どもを産んだ人はいい小説が書けない」

「子どもを産んだ人はいい小説が書けない」と言われたのだった。 あまりの衝撃で唖然としてしまった。ひとまず、公平にするためには文脈もあわせて伝えるべきだろう。 その人は「新人賞を獲るような小説は今は書けないのかもしれないね。別のやり方で小説を書くしかないのかもね」と付け加えた。 理由は、「子どもという大事なものがすでにあるから、(小説と子どもという)二つのものを同時に極めるのは難しい」というようなことを言った。 「今じゃないのかもしれないね」気の毒そうに少し愉快そうにそ

    • 【特別公開】第六回深大寺恋物語 審査員特別賞「象のささくれ」

      連載「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」の特別編として、深大寺恋物語で選考委員を務める井上荒野さんにお話を伺いました。 こちらを記念し、今回、特別に不肖・私めの受賞作「象のささくれ」転載のご許可を事務局様よりいただきました。 あくまで2010年時点での水準ですが、「ふーん、これで審査員特別賞か」「10枚だとこれくらいか」「これなら私の方が巧いわい」などなど目安や奮起の材料になれば幸いです。あらためて書き起こしてみると、たいへんこっぱずかしいのですが、14年前の作品

      • 子どもが子どものままでいられる世界を

        大学時代、学童保育のバイトをしていた。 毎日、可愛い子どもと駆け回り、一緒にお絵描きをし、おやつを食べ、本気でオセロをするという夢みたいなバイトだった。 そのなかに、ちょっと乱暴者の男の子がいた。 小ぶりのジャイアンといった感じで、誰かを叩いたり、癇癪を起して暴れたり、悪口でほかの子を泣かせたりした。 だから、周りの子もその男の子が遊びの輪に入るのをちょっと嫌がるようになった。その子は妹が生まれたばかりだった。だから、赤ちゃん返りもあったんだと思う。 こんなに小さなうちか

        • ドキュメント二次通過、そして…

          R18文学賞が二次通過した。はじめての二次通過だ。 その時私はなぜかスーパー銭湯に来ていた。超リラックスした状態で岩盤浴に寝転びながらXを眺めていたら、R18関連のツイートがちらほら流れてきて、「これは二次の発表あったな……」と思ったもののしばし結果を見に行くのを躊躇してしまった。 せっかく休みを取ってスーパー銭湯にきたというのに、もし結果がダメだったら? そのあとの岩盤浴、そのあとの炭酸泉、そのあとのサウナ、そのあとのオロポ、全部全部心ここにあらずになる。MOTTAINA

        • 固定された記事

        「子どもを産んだ人はいい小説が書けない」

        マガジン

        • ひとひら小説
          11本
        • 刺繍詩集
          4本

        記事

          ことばと新人賞・池谷和浩さんに聞いた、二次選考通過後の正しい過ごし方

          連載「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」第九回は、ことばと新人賞を「フルトラッキング・プリンセサイザ」で受賞した池谷和浩さんにお話を聞きました。 記事にも書いた通り、池谷さんは連載第一回から私のXをフォローしてくださった方。「池谷和浩」というフルネームのアカウント名は印象的で信頼感があり、いつも「いいね」をしてくださるので、心強く思っていました。 じつは、第一回・市川沙央さんのとき、市川さんが千葉雅也さんの小説に影響を受けたくだりを池谷さんが引用リツイートして

          ことばと新人賞・池谷和浩さんに聞いた、二次選考通過後の正しい過ごし方

          「俺はまだ本気出してないだけ」 才能も根性もないまま夢を見る

          40歳で会社を辞めて、小説家を目指した。 人には照れ隠しで「へへ、何やってんだって感じだよね~」ということはあったけど、心の中では「えらい!よくやった私!」って思ってた。 今も小説家になれてないけど、 根拠もなく自己肯定感が高いまま、夢を目指せているのは このマンガと出会えたからだと思う。 「俺はまだ本気出してないだけ」/青野春秋 私の大事なバイブルだ。 バツイチ子持ちの大黒シズオは40歳で会社を辞めて、漫画家を目指す。 たまたま一作目で努力賞をもらったのが運の尽き。

          「俺はまだ本気出してないだけ」 才能も根性もないまま夢を見る

          妹よ

          私には妹がいる。はっきりいって、むちゃくちゃ可愛い。 妹がやってきたとき、あまりにもかわいくて足をぱくっと食べたら 「お兄ちゃんもまゆちゃんにおんなじことやってたよ」と母が言った。 学校から帰ると、真っ先に妹が寝かされているえんじの座布団に飛んでいき、一緒に横になったり、髪の毛の匂いを嗅いだり、布おむつをせっせと畳んだりした。 妹がよちよち歩くようになり、一緒に公園で遊べるようになると 私はみんなに妹を見てほしくてしかたなかった。 当時「フルハウス」というドラマが教育テレ

          文藝賞優秀作・佐佐木陸さん 静かに現実と闘うひとへ

          連載「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」第八回にご登場いただいたのは「解答者は走ってください」が、文藝賞優秀作に選ばれた佐佐木陸さん。 最終候補での落選を四度経験した佐佐木さん。インタビューの答えの端々から、同じく小説家を目指すひとへの応援の思いが伝わり、毎度思うことなのですが、早くこれを記事にしてみなさんに届けたいなと思いました。 記事中のなんとも居心地のよいお部屋に、注目された方も多かったようです。私もあまりの理想の環境に、泊まりたい……ここの本棚にあるも

          文藝賞優秀作・佐佐木陸さん 静かに現実と闘うひとへ

          ひとひら小説 今年最後の落としもの

          とくべつ寒い夜だから、西友へ行って酒粕を買ってきた。紅鮭を入れて舞茸を入れて、石狩鍋を作ろうとおもった。ぜんぶ買って店を出たとこで気づく。 また、やってしまった。 石狩鍋はあの子の得意料理だ。 あの子には二度と会えない。 二つ先の駅に住んでいて、家も知っていても、二度と行かない。 世界で一人だけのひとだから、比べようのないひとだから。 オザケンが耳の中で歌う。 ♩今日の帰り、恋に落ちたりして♩ そんなことが起こるかもしれないよ、そう言い聞かせて一年やってきた。 オザケ

          ひとひら小説 今年最後の落としもの

          ちょうどよく「自分」を書くって?

          このあいだエゴサ―チをしていたら、「自虐が鼻につく」的なコメントが1件あった。「清さんのnote、自虐がいいよね」と言われたこともある。 そうか…私の書いてることって自虐なのか……とちょっと落ち込んだ。 「小説家になりたい人(自笑)日記」というタイトルをつけたけれど、 「自笑」であって「自嘲」ではないつもりだった。 落ち込んだのはなぜかというと、じつは私も他人の自虐が苦手なのだ。 たとえば、「私もうBBAだから」みたいなのが苦手だ。 私と同じアラフォー、場合によっては私

          ちょうどよく「自分」を書くって?

          ひとひら小説「サンタさんには誰がプレゼントをあげるの」

          サンタさんはみんなにプレゼントをあげるけど、サンタさんは誰からプレゼントをもらえばいいんだろう。 小さいとき、そんなことを考えて、父からもらった煙草とおはじきを包んでサンタへのプレゼントにした。 Sくんが遠い街へ行ってしまうのだという。 高校のクラスには1組から8組とはべつに、AからEまでの細かいクラスがあると思ってた。わたしはその中でいえばDにいて、それはいじめられない程度のつまらない女子だった。 そのAからEを、側転で飛び越えるのがSくんだった。 相手がAだかEだ

          ひとひら小説「サンタさんには誰がプレゼントをあげるの」

          ドキュメント落選

          来てる、これは、来てる。 先週、ふぁにーちゃん(大田ステファニー歓人ちゃん)の記事がバズった。その波及効果でnoteもXもフォロワーが増えた。 その前の週に、村山由佳さんが私のnoteをxで紹介してくれ、そちらもバズった。 来てる、これは、来てる。 この流れで、金曜日、私は林芙美子文学賞の二次を通過するはずだった。 ふぁにーちゃんのおかげで通知が止まらないXを眺めつつ、私は合間に何度も林芙美子文学賞のサイト更新をチェックした。 昨年はこの日に発表があったのだ。土日は事務

          私達はいつも同じところに立って 

          インタビューのいちばん最初に、その人はこう言った。 「繭子さんは、なにを書かれるんですか」 一瞬、何を聞かれたのかわからなくて。 だってこれは小説家になりたい「私が」なった人に聞いてみる連載だから。あ、この人はもしかして、これまでの連載記事を読んでいないのかもしれない。 「あの、この連載は小説家になりたい私が、あ、私、小説家を一応目指してるんですけど、文学の新人賞を取った方々に……」と説明しかけて、こちらを気遣いながらも目がはてなになっているその人の顔を見て、気づいた。

          私達はいつも同じところに立って 

          すばる文学賞・大田ステファニー歓人さんの執筆ルーティン

          好書好日での連載「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」で、すばる文学賞を受賞した大田ステファニー歓人さんに取材をしました。 今日はそのこぼれ話。記事でもちらっと紹介したふぁにーちゃんの執筆ルーティンについて。 現在、ゴミ収集の仕事をしているふぁにーちゃん。朝7時には会社に着かないといけません。 元々、起きてからエンジンがかかるまで時間がかかるタイプで朝4時に起きていましたが、小説を書くようになってからは朝(?)2時〜3時に起きるようにして書いていたそう。 起

          すばる文学賞・大田ステファニー歓人さんの執筆ルーティン

          小説ともだち

          小説ともだちができた。 出会いはTwitter(X)のDMから。 男性の名前のアカウントから「小説家になりたい人(自笑)日記、めちゃくちゃ共感しました!」と熱い感想がきて、 うれしいな~とお礼を書き込むと、 「ぼくも小説家志望なんで、一回お茶して情報交換やモチベーション上げしませんか?」と……。 怪しい……。 彼は冒頭に自己紹介してくれたのだが、 「J-WAVEでカルチャー系のラジオ番組をやってるタカノシンヤと申します」というのだ。 私はてっきり構成作家さんかと思ったの

          小説家志望、大阪に帰る

          「小説家志望です」って何歳までいける言葉なんだろう。いや、何歳でもわりとぎょっとされる言葉だよな。いわんをや、41歳をや。 このたび小説に嫌気がさした私は実家に帰ることにした。 そんなに振り向いてくれないなら、いい!最初からお前のことなんか別に興味ないし!お前が先に私のこと振ったんだからな、いいな!後悔してももう遅いんだからな!!! というわけで(どういうわけだ) 家族を引き連れ、パソコンも持たずに3泊4日大阪へ帰ることにしたのである(ただの帰省) そして夜は、久しぶ