おおぬき

ゆとり世代で全国紙記者。娘が無事爆誕し、父親業も始めました

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終わりゆく夏に見えるもの

フジファブリックの名曲で「若者のすべて」という歌がある。 「♪真夏のピークが去った…」という歌詞から始まるのはあまりにも有名だが、私の奥さんの友達に毎年真夏のピークが去ったあとに「若者のすべて」を聞くという律儀な人がいる。 季節も相まって、若者のすべてが沁みるようで最高に感情が揺さぶられるらしい。 多くの歌には季節がある。歌詞はもちろん、メロディーによってさらりとした春の陽気を感じることもあれば、照りつける夏の日差しを思うこともある。または肌寒い秋の夕暮れに思いが至ることも

    • 富士スピードウェイで耐久レースを見た話

      欧州と比べるとモータースポーツが日本では盛んではないが、年に何度もレースが行われている。 モータースポーツのうち、日本で最も賑わうのが鈴鹿サーキットでのF1であろう。以前鈴鹿に行った話を書いたけれども、外国人も含めたくさんの人がおりそれはもうとんでもなく混雑していた。 F1以外のレースを知っている人はそれほど多くないだろうが、それこそ一般の人も参加できるようなレースイベントもあれば、日本国内でのみ行われるフォーミュラカーレース、砂地や雪道を疾走するダートカーのレースなど、あ

      • 街並みへのまなざし

        静岡にいる友人に会いに行った時の話である。 友人の奥さんが非常に豊かな感性を持った人で、話をさせてもらって非常に刺激を受けた。 極めて聡明な友人も奥さんの感性に惹かれて結婚を決めたほどであり、そのすごさを窺い知ることができるだろう。 友人の奥さんは長らく静岡にいたといい、大学進学を機に上京したという。地元の静岡ではほとんど変わらない街並みだったなかで、めくるめく変わり続ける東京の街並みは「生きている街」だとして、その街の躍動感にわくわくしたのだという。そして同時に、昭和の雰

        • ラーメン二郎を食べていたら哲学が始まった

          ラーメン二郎という有名なラーメン店がある。熱狂的なファンは「ジロリアン」と呼ばれ、いまや二郎は一つのブランドとして確立している感すらある。 とりわけ有名なラーメン二郎は、テレビのニュースで報じられたことのある「神田神保町店」だろう。 テレビの取材に対してある青年が「割とレベルの高い、合格点を超えてくるような二郎を、オールウェイズ出してくれる」と論評したことでその質の高さが我々一般人にも知られることになった。 私はラーメン二郎の神田神保町店に一度行ったことがある。小ラーメン

        終わりゆく夏に見えるもの

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        • エッセイ・コラム
          271本
        • 男から見る育児
          43本
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        • 経済っぽいやつ
          19本

        記事

          「調子」を考える

          パリオリンピック・パラリンピックが終わった。 選手のインタビューなんかを聞いていると「いい調子で臨めた」といったコメントなんかをよく聞く。この「調子」というのはなんとも不思議なものだ。 「パワプロ」なんかでは選手の調子が悪いときにひどくミートが小さくなったり、投手であれば変化球の曲がり具合がショボくなったりと様々な弊害が起きたりする。それだけにパワプロの選手育成モード「サクセス」では、彼女やチームメイトと遊びつつ調子を高め、練習に身が入らないこともしばしばであった。 水泳

          「調子」を考える

          夢中になれる日々も、暇で仕方ない日々も愛せたらいいよね

          バレーボール好きで、海外を飛び回っている友人がいる。この間たまたま近くにいるということで会って少し話をしたことがあった。 私から見れば、彼は海外でバレーボールを見たり、かなり有名な選手にも取材をしたりと充実している印象だったが、話の中で彼の口から「『YouTube見てえ』とか思わないくらい、夢中になれるものを見つけたい」という言葉が出た。海外と日本を行き来するくらいなので、バレーボールに国内外問わず関わることに夢中になっているとばかり思っていただけに、意外な一言だった。

          夢中になれる日々も、暇で仕方ない日々も愛せたらいいよね

          【育児】音ゲーとしての意思疎通

          ある友人で、盛り上がってくると適当にしゃべりだしてしまうやつがいる。 普段はそれなりに真面目なのに、酒が入ったりすると急にそんな感じになってしまう。なんだか面白いのでいまだに付き合いがあるのだが、このあいだ「他者の投げかけに対して明らかに会話の辻褄が合っていない。どんな感じでしゃべっているのか、会話をしていて『これはミスった』といった違和感はないのか」と尋ねたところ「投げかけられた言葉に対してタイミング良く何かを言ってる感じで、言うなればコミュニケーションは音ゲー」とやはり適

          【育児】音ゲーとしての意思疎通

          ネットで「論破」したところで現実がいい方向に変わるのか

          「論破」という言葉がすっかり人口に膾炙した現代である。 論破というのは、議論をして相手の論の矛盾などをつき、言い負かすことなんかを指す言葉だ。 人間誰しもマウントをとって人より上に立とうとするものである。昔であれば権威とか物理的な力によってマウントを取ることが多かったし、いまでもそういう一面はあろうが、「論破」という言葉を日常的に見かけるようになったのはここ最近の話のように思う。 「論破」の勃興に一役買っているのが、思うにインターネットの世界の登場である。 インターネット

          ネットで「論破」したところで現実がいい方向に変わるのか

          【育児】娘、「ねないこだれだ」をせがむ

          この世界には数多くの絵本が存在している。中には大人になってからでも覚えているほど印象的な作品もあるし、育児の過程で大人になってから読んでみて新たな気づきを得られるものもある。 私にとって、印象的な絵本の一つが「ねないこだれだ」という作品だ。これは夜になっても眠らずに遊んでいる少年がお化けにさらわれ、お化けになってどこかに飛んでいくという話である。 「お化けになりたくない」という恐怖からさっさと眠ることを子供に促す作品なわけだが、気の小さな私にはこれが効果てきめんで、夜遅くに

          【育児】娘、「ねないこだれだ」をせがむ

          「スイマーズ・ハイ」の経験

          この季節になると、小さいころに通っていた水泳クラブで言った夏合宿の機会を思い出す。 4泊5日で5万5000円程度という破格で、みんながいくこともあり何も考えずに合宿に行っていた。 合宿では朝晩と2回の練習をこなす。毎回何らかのメイン練習があり、例えば50mを30本とか、100mを15本とか、200mを8本とか、400mを4本とか大体そんな感じである。そしてタイムを測り、翌日には宿の壁にランキング表が掲示されることもあった。 大半は当時元気いっぱいの少年少女からしても「わりと

          「スイマーズ・ハイ」の経験

          墓参りは、歴史に思いを馳せるとき

          プロイセン(現在のドイツ)の名宰相であるビスマルクが残した「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」ということばはあまりにも有名である。 とはいえ「過去の経験でうまくいかなかったから今回もダメかも」などと経験から学んでしまうことはしばしばある。 歴史から学ぼうとするどころか、歴史そのものに意識を向けること自体、なかなか簡単ではない。 学ぶにしても歴史に思いを馳せる経験がないと学びようがないわけだが、私たちが歴史に思いを馳せる瞬間とはいつなのか。 客観的に記された学校で学ぶ歴史

          墓参りは、歴史に思いを馳せるとき

          力の手加減、言葉の手加減

          娘と遊んでいると、時折ものすごい力で鼻をつかまれたり、指をかみちぎらん勢いで食われることがある。 とても痛いのだが、別に怒るほどでもないので「いててて…」などと見事な大根役者っぷり全開の芝居をすると、娘はしてやったりと笑っている。 まだ1歳である、自分がやったことの重みがまだわからないらしい。 まともな大人は多くの人が「手加減」をすることができる。 それは物理的な力の手加減はもちろんながら、言葉の手加減もそうだ。 一方、子供は手加減を知らない。 娘よろしく何でもかんでも全

          力の手加減、言葉の手加減

          【育児】抱っこの終わり

          育児の過程を振り返ると、「沐浴」や「へその緒の消毒」などかつてやっていたがいまやすっかりやらなくなったことや、逆に「離乳食を作る」とか「保育園にいく」など新たにやりはじめたことがたくさんある。 満を持して、前者の「かつてやっていたがいまやすっかりやらなくなったこと」になりつつあるのが、「抱っこ」である。一言で言えば、「抱っこの終わり」がひしひしと近づいているのだ。 生まれて間もないころの娘は横になるか抱っこをするかの二択で、えーんと泣いてしまったらそのたびに抱っこをするとい

          【育児】抱っこの終わり

          夢とうつつを行き来して

          過去のある出来事について「こうだったらよかったのに」と考えたり、「こんな風になったらいいな」と未来を夢見ることは、現実ではない世界を考えることでもある。 専門用語では、そんな妄想の世界を「可能世界」なんて呼ぶらしい。 昔の偉い人はこの「可能世界」をめぐってあれこれ議論をして、「いま目の前にある世界って神が選び取って現実になっているわけだから可能世界より現実世界が一番いいよね」とか「現実に私たちが起きたと思っていることって、可能世界では起きていないんだから、もしかしたら絶対的

          夢とうつつを行き来して

          「後輩ムーブ」ってまあまあ大事では

          仕事相手との飲み会になったとき、部下の育成についての話がちらりと出ることがある。 いつまでも私たちは若いと思っているが、次第に年を重ねて本物の若者との距離が生じたことに気づくと、部下の扱いに悩み始めるものである。 たとえば、後輩の資料を確認するとき当然出来が悪いわけだが「これ、自分で確認したの?」と聞いたりすると「まぁ軽く…」というリアクションが返ってきたり、「結局何が主張したいの?」と聞くと固まって何も言えなくなったり、「新聞記事を書くためにはまず新聞を読んだほうがいいよ

          「後輩ムーブ」ってまあまあ大事では

          【育児】子による親の「みきわめ」は始まっているような気がする

          自動車の教習では、修了試験などの前に「みきわめ」という科目がある。 この「みきわめ」は試験を受ける実力がちゃんと備わっているのかを「みきわめ」るために行われる。 総じて自動車学校の課程は具体的なタイトルが書かれているものだ。「速度の調節」とか「障害物への対応」とかなのだが、なぜか最後に「みきわめ」とだけ書かれている。 免許を取ろうとしていた当時の私は「みきわめ」の文字を見て、審美眼を磨くための教習が一切存在しないのに何かを最後に見極めなくてはならないのかといたく不思議だった

          【育児】子による親の「みきわめ」は始まっているような気がする