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エッセイ他

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長めの詩と、物語と、ポエムの延長線上にあるエッセイと。
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#アダルトチルドレン

【詩】愛されて

【詩】愛されて

それが愛だと言うのなら
愛とは致死の毒でしょう

僕のためを思ってと
届けてくれた言葉なら
どうかもう見放して

わかってるよ
わかってたってできないんだ
愛されて育ったあの子みたいに
上手に笑いかけられないよ

愛に恵まれて育った子
優しく愛情深い親
……という役名
あなたの中では真実なのかな

仮面の裏では飢えているよ
都合が良いときの優しさじゃなくて
媚びるための笑顔じゃなくて
いつも変わら

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ただの日記(20240524)

ただの日記(20240524)

 少年たちの締まったしなやかな肢体を見て湧き上がるのは憧れだ。僕にも少年時代が欲しかった。少女時代ではなく。

 胸に無駄な肉の塊ができて、骨盤がバキボキと音を立てて育った。

 骨が薄くて皮下脂肪が柔らかい身体が一概に嫌いなわけではない。人間の身体は男性より女性のほうが美しくできていると個人的には思っている。客観的に見て女性の身体は嫌いではない、だが自分が女性の身体でいることはまた別の話だ。綺麗

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ただの日記(20240519)

ただの日記(20240519)

 傷ついたときに傷ついていないふりをしなくていいし、怒っているときに怒っていないふりをしなくていいという、人によっては考えるまでもないこと。

 今からでも身につけていきたいと思う。

 傷ついたとき、あからさまに傷ついた顔をしたら、それは相手を責めているのと変わらない。相手が僕を傷つけたという事実を当人に知らしめ、罪悪感を抱かせる。相手を罪人に仕立て上げることになる。

 だから僕は傷ついたこと

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伝わらないタイプの対人不安

伝わらないタイプの対人不安

 落ち着いてるねと言われることが結構あった。他人からそう認識されているということは自分は落ち着いた人間なのかなと漠然と思っていた。

 心の中を覗いてみれば不安と葛藤が渦巻いて波立っていることも多いのだが、比較対象となる他人の心を覗くことはできないから、自分の波が平均よりも高いのか低いのかわからない。これが落ち着いているということならば、他の人はもっと激しい嵐の中にいつもいるのだろう。もっと大変な

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喪失をこれ以上知りたくない

喪失をこれ以上知りたくない

 ずっとペットロスを拗らせていた。今ではマシになったと言えるものの、乗り越えたと言えるようなものではない。死者の思い出を笑って話せる日が来るとはなかなか想像できない。

 ずっとずっと悲嘆している。人格の形成過程で悲嘆を中核に取り込んでしまった。

 八歳の時、三歳の頃から一緒に育った犬が目の前で野犬に噛まれ、手術も虚しく数日後に死んだ。次に来た犬は家の前に撒かれていた毒餌を食べて死んだ。生後一年

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母を助けたかったんじゃない、母に助けてほしかった

母を助けたかったんじゃない、母に助けてほしかった

 もしも母が僕の背中に手を添えて慰めようとしてきたら、僕はその手を叩き落とすだろう。今更優しい振りをするな、もう騙されない、と。昔の母なら、せっかく気遣ってやったのにとキレ散らかすだろう。今ならどうかわからない。

 僕の反応は明らかに過剰だ。母は軽く手を触れただけ。非のないはずの温もりが過去を呼び起こす。僕は過去に怒っている。かつて表現することも持つことさえも許されなかった怒りを、胸の深い空白か

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優しさという生存戦略

優しさという生存戦略

 自己申告も何だが僕は基本的に優しい人間だ。ただし別に人格が優れているから優しいのではないし、優しいから偉いというものでもない。他人にとって都合の良い人間になることで居場所を得ようとしているだけだ。

 どのくらい優しいかというと、自分を傷付ける人間にも事情があったのだろうと考えるくらい。これは攻撃を仕掛けてくる人物から離れられない場合に有効である。戦闘体制てはなく共感的に寄り添うことで、相手の攻

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褒められたって嬉しくなかった

褒められたって嬉しくなかった

 僕がもらった賞状を見て、母さんは僕より喜んだ。その瞬間から主役は母さんになった。

 母さんは僕を優秀だと褒めた。母さんは優秀な子供を育てた優秀な母親になった。

 母さんは僕が自慢だと言った。僕は母さんの価値を証明するための賞状になった。

 嬉しかった僕の気持ちはすっかり母さんに盗まれた。母さんの「嬉しい」の餌にするために、僕は「嬉しい」をたくさん持って帰らなきゃいけないと思った。

 母さ

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エッセイこわい

エッセイこわい

 エッセイは怖い。我が身に密着し過ぎているから。創作だからと逃げることも、架空の人物の陰に隠れて腹話術で話すことも許されない。エッセイに書いたことはそのまま自分の中身と解釈される。間違ったことを書いて責められるのも、誰かの感情を逆撫でして嫌われるのも自分。

 腹の中にあるものを隠して善人ぶっていない、正しいとされる価値観を振りかざしていない、むき出しの自分を知られるのが何より恐ろしい。そういう風

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「男嫌いのトランス男性」だったのかもしれない疑惑

「男嫌いのトランス男性」だったのかもしれない疑惑

 ここ数年は自分の性自認を男女どちらでもない「Xジェンダー」と位置付けてきたが、実は内面は男性に近いのに「男であること」から逃げていたのかもしれないと思い始めた。

 きっかけはX(Twitter)のスペースだった。

 タイトルの通りノンバイナリーのお二人がおしゃべりをするスペースなのだが、今回は「子供の頃、ジェンダー的に影響を受けたキャラクター」について話されていた。魅力的だったキャラ、共感し

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あなたは死ぬまで知らなくていい

あなたは死ぬまで知らなくていい

 あなたを好きになりたかった。

 あなたを好きな私でいたかった。

 あなたを愛する見返りに、あなたに愛してほしかった。

 真冬の川に飛び込めともし言われたら、私は飛び込む覚悟があった。

 あなたを喜ばせるためならば、辱めにも耐えられた。

 あなたに命じられたなら、

 それが望ましいことなのだと、当たり前だと言われたなら、

 行間の期待を読み取りさえしたら。

 足を引っ張るわがままを

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親への気持ちの区切り(暫定)

親への気持ちの区切り(暫定)

 親に対する気持ちに一旦の決着が付いた気がするので書き留めておく。

 母親への今の気持ちを一言で言えば、「普通に人として嫌いだな」というところだ。恨んでいるとか、許すとか許さないとか、そういうのはもうあまり重要ではなくて、ただただ性格が合わない。

 少し前まではやっぱり親への期待を捨てきれず、親への怒りを抱えていた。けれど最近になって、親は私の求めているものを悪意で与えてくれないのではなく、そ

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HSPと発達障害と愛着障害(アダルトチルドレン)は似ている

HSPと発達障害と愛着障害(アダルトチルドレン)は似ている

 HSP(highly sensitive person)と、ADHDやASDなどの発達障害と、愛着障害。どれに当てはまる人であっても、なぜだかみんなと同じようにできなくて、人間関係にストレスを抱えやすいという点では共通していると思う。

 この三つは起こる原因も違うし対処法も違うけれど、似たような現れ方をする場合がある。

 HSPの五感の敏感さは発達障害の感覚過敏のようでもある。HSPと愛着障

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見えないところで歪んでいても(親の愚痴です)

見えないところで歪んでいても(親の愚痴です)

 私には脊柱側湾症がある。背骨が左右方向に湾曲する病気だ。と言っても程度は軽く、特に症状も無いので何の対処もせずに過ごしている。

 発覚したのは中学校に上がるか上がらないかくらいの頃だったと思う。背中の筋肉が左側だけ盛り上がっていることに母親が気付いた。背骨が左右非対称になっているせいだった。

 整形外科で側湾症と診断され、しばらく様子を見ることになった。母は私が猫背にしていたり姿勢を崩してい

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