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褒められたって嬉しくなかった
僕がもらった賞状を見て、母さんは僕より喜んだ。その瞬間から主役は母さんになった。
母さんは僕を優秀だと褒めた。母さんは優秀な子供を育てた優秀な母親になった。
母さんは僕が自慢だと言った。僕は母さんの価値を証明するための賞状になった。
嬉しかった僕の気持ちはすっかり母さんに盗まれた。母さんの「嬉しい」の餌にするために、僕は「嬉しい」をたくさん持って帰らなきゃいけないと思った。
母さんは僕の賞状を大事そうに額に飾った。僕がどんな顔をしていたか、母さんは一度も見ようとはしなかった。
褒めるのも叱るのも一緒だ。大人の物差しで子供を値踏みすることだ。
人として許されていないことや、命を危うくすることは、叱ってでもやめさせたほうがいい。じゃあ褒めるのは何のためだろう。子供がやりたいことならば、大人に褒められなくたって、子供は勝手にやるだろう。大人に都合の良いことに子供を誘導するために、ご褒美で釣っているだけじゃないのか?
小学校の先生に、「がんばっとるな」と声をかけられた。僕は跳ね回るくらい嬉しかった。
褒められなくたってよかった。その頑張りに点数なんてつけられなくてよかった。頑張っている事実を認めてくれるだけで、受け止めてくれるだけでよかった。
子供が頑張って出した成果は、その子供自身のものだ。大人の手柄にするものじゃない。結果が出るのも出ないのも、子供自身の人生だ。小さくたって、子供も他人だ。他人の人生を乗っ取ったりしてはいけない。
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