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エッセイ他

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長めの詩と、物語と、ポエムの延長線上にあるエッセイと。
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記事一覧

【詩】愛されて

【詩】愛されて

それが愛だと言うのなら
愛とは致死の毒でしょう

僕のためを思ってと
届けてくれた言葉なら
どうかもう見放して

わかってるよ
わかってたってできないんだ
愛されて育ったあの子みたいに
上手に笑いかけられないよ

愛に恵まれて育った子
優しく愛情深い親
……という役名
あなたの中では真実なのかな

仮面の裏では飢えているよ
都合が良いときの優しさじゃなくて
媚びるための笑顔じゃなくて
いつも変わら

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ただの日記(20240524)

ただの日記(20240524)

 少年たちの締まったしなやかな肢体を見て湧き上がるのは憧れだ。僕にも少年時代が欲しかった。少女時代ではなく。

 胸に無駄な肉の塊ができて、骨盤がバキボキと音を立てて育った。

 骨が薄くて皮下脂肪が柔らかい身体が一概に嫌いなわけではない。人間の身体は男性より女性のほうが美しくできていると個人的には思っている。客観的に見て女性の身体は嫌いではない、だが自分が女性の身体でいることはまた別の話だ。綺麗

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ただの日記(20240519)

ただの日記(20240519)

 傷ついたときに傷ついていないふりをしなくていいし、怒っているときに怒っていないふりをしなくていいという、人によっては考えるまでもないこと。

 今からでも身につけていきたいと思う。

 傷ついたとき、あからさまに傷ついた顔をしたら、それは相手を責めているのと変わらない。相手が僕を傷つけたという事実を当人に知らしめ、罪悪感を抱かせる。相手を罪人に仕立て上げることになる。

 だから僕は傷ついたこと

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ただの日記(20240516)

ただの日記(20240516)

 ある日突然不眠症になってから、微妙に嫌な夢をよく見る。

 集合時間に間に合わないとか、台詞もストーリーも知らないまま演劇の舞台に立たされるとか。母親に向かって叫んで怒りをぶつけていたりとか。

 たぶん過去に嫌だったこととか無意識下で恐れていることとかを夢で発散しているのだと思う。そんなにストレスを感じているのだろうか。よくわからない。

 他の人はもっと大変なはずなのだからもっと頑張らなけれ

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ただの日記(20240128)

ただの日記(20240128)

 朝起きて、「アップルパイが食べたい」と思った。

 前日にアップルパイの情報を目にしたわけでも夢に出てきたわけでもない。それは天啓のようなものだった。直凪よ、アップルパイを食べよ、と。

 それはともかくとりあえず犬の散歩に行き、朝食の米を食べる。最近のお気に入りふりかけは「しそわかめ」だ。しっとりとして、上品な風味がある。しかも体に良いものを食べている気分になれる。

 しばしだらだらしてから

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体の性を自分で決める

体の性を自分で決める

 胸が膨らんでいても、子宮に続く穴があっても、毎月のように血を流しても。この体は「男の体」なのだ。

 常識で考えるなら女の体なのだろうけれど。体の性を決めるのは、意外とそんなに簡単じゃない。

 性器の形とか。

 顔の造りとか。

 背の高さとか。

 毛の生え方とか。

 筋肉や脂肪の付き方とか。

 そういうもので僕らは何となく人の性別を判定している。

 基準はあくまで平均に基づくもので

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手芸アカウント作りました

手芸アカウント作りました

Treadsに平和な手芸アカウントを開設しました。

ぬいぐるみ作りの進捗などちょくちょく更新していくと思います。まぁ気まぐれなのでいつまで続くかわかりませんが。

よければ見てやってください。

ぬいぐるみと悪夢

ぬいぐるみと悪夢

 ぬいぐるみを抱いて眠るようになってから、頻繁に悪夢を見る。ただ不快なだけの夢ではなく、抑え込んでいた感情に気付かせるような、示唆的な悪夢を。

 どうしても嫌なことをやらされそうになって、必死の訴えも聞いてもらえなくて、どうしてわかってくれないのと泣きながら追っ手から逃げ回ったりとか。

 パニック症のことを母親に打ち明けたら心無い言葉をかけられ、怒りと悲しみを爆発させたりとか。

 心の痛みと

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救済が死にしかなくてもいい

救済が死にしかなくてもいい

 漫画でもアニメでもゲームでも、死によってしか救われないような不憫なキャラクターが好きだ。最終的に「殺してくれ……」とか言い出すような。どう足掻いても報われないタイプの。

 そんな自分の性質を恥じた。自分も含め現実の人間にはもっと救いがなければならない。救いのない人生を好む悪趣味、人の不幸を喜ぶ下劣。

 でも本当にそうだろうかと疑い始める。みんなが幸せであるほうが良い、努力は報われたほが良いけ

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「本当に役に立つ仕事」がしたい

「本当に役に立つ仕事」がしたい

 宮沢賢治の『グスコーブドリの伝記』、そのアニメ映画版を何となく観た。登場人物が二足歩行の猫のやつ。

 飢饉に追われるようにして街に出たブドリは言った。

「どんな仕事でもいいんです」

 続けて、

「とにかく、本当に役に立つ仕事がしたいんです」

 全然どんな仕事でもよくない。人(猫)を食い物にするような詐欺まがいの仕事だったら、飢えていたってきっとブドリはやらない。役に立つ仕事でなければし

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伝わらないタイプの対人不安

伝わらないタイプの対人不安

 落ち着いてるねと言われることが結構あった。他人からそう認識されているということは自分は落ち着いた人間なのかなと漠然と思っていた。

 心の中を覗いてみれば不安と葛藤が渦巻いて波立っていることも多いのだが、比較対象となる他人の心を覗くことはできないから、自分の波が平均よりも高いのか低いのかわからない。これが落ち着いているということならば、他の人はもっと激しい嵐の中にいつもいるのだろう。もっと大変な

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実写は怖いのでアニメを観る

実写は怖いのでアニメを観る

 テレビドラマの中の世界では、現実世界にいるような姿形をした人たちが、現実と同じく肉体と不可分に紐付いた声で、現実の人々に似せた話し方をしている。そうしたリアリティの持つ鈍器のような硬さに耐えられない時がある。

 日常系のほのぼのしたドラマを見つけ、これなら心穏やかに観られるだろうと思っていた。大きな波乱もなく物語は進んでいたのだが、最終回付近で一度だけ、主人公が声を荒げるシーンがあった。時間に

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恋愛ソングが苦手な人のための音楽をクリスマスシーズンに向けて紹介してみる

恋愛ソングが苦手な人のための音楽をクリスマスシーズンに向けて紹介してみる

 冬の歌といえばクリスマスソング。クリスマスソングといえば恋の歌。つまり冬になると理解できない歌が増える。

 いや、まぁ、歌詞の意味は言葉としてわかるが、ロマンス的な感覚がピンと来ないのであくまで他人事。ハッピーラブソングなら良かったねと思うし、失恋ソングなら大変だねと思う。共感はできない。

 こんな自分でも音楽は好きだ。何を聞いているかというと、だいたいアニソンかゲームミュージック。というわ

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恐怖していた、被害妄想だったとしても

恐怖していた、被害妄想だったとしても

 何だか知らないが疲れている。注意力散漫でさっきまで何をしていたかすぐ忘れるし、口の粘膜が荒れて口内炎が次々にできる。どこにも行きたくないし、何もしたくない。手持ち無沙汰になるとゲームをしたりYouTubeを流したりして何となく時間を潰す。停滞、あるいは縮退。途切れた道の続きを探すのも面倒で、快適でもないがそこそこ安全な藪の中にだらだらと留まっている。

 急に訪れた秋に鬱っぽくなっているのか、猛

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