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残念ながら収録漏れがあるみたい🥺 探せなくて残念🙇‍♀️ 自分でも使っちゃってます🤗
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#小説

名前のない書物(第十七回)

名前のない書物(第十七回)

図書館6(承前)

***
「なるほどーー」
 ほとんど眠っているかのような状態で座っていたコシロが口を開いたのは、ぼくが話し疲れて、冷えた茶をすすったときだった。
「才能への嫉妬か」
 わかるよ、と口をつぐむ。その目には、まぎれもない、真実の光があった。彼とそんな想いを共有したい気持ちがわき上がってきたが、その感情をぼくは抑え込んだ。今はもっと、優先すべきことがある。
「何か気づいたことがありま

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毎日400字小説「けっこう幸せ」

毎日400字小説「けっこう幸せ」

「だからさ、あなたは平凡なんだから身の丈に合った仕事をしてそこそこの男と結婚して、二人ぐらい子供を産むのが最高の幸せなんだっていうことを教えておいて欲しかったわけよ」というのが戸高里穂の口癖だった。「かわいいだの天才だの将来はピアニストだのちやほやするから、私は何かになるんだって勘違いするんじゃない」それに反論するのは同僚の吉永だった。「あんたそういうのは大人になれば気づくものよ」七十歳になるこの

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『仏果を得ず』 〜たどり着いたときの恍惚〜

『仏果を得ず』 〜たどり着いたときの恍惚〜

仕事柄、インタビューをすることが多い。人物インタビューとして記事にまとめるときは、取材相手の言葉をそのまままとめるんじゃなく、その人が言ったことを、さらにわかりやすく、響きやすくまとめていく。

書くときはいつものめり込んでしまう。あの発言の底にあった意味はどういうことなのか、あの言葉をどうすればもっとわかりやすく伝えられるか…。繰り返し考える。だんだんと自分がその人と重なっていく、自分自身がその

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【おはなし】 ねこにエサをあげないでください

【おはなし】 ねこにエサをあげないでください

西側と東側を結ぶ大きな橋の下でサンカクは考え込んでいる。金網のフェンスで囲われた入り口には「関係者以外立ち入り禁止」の看板があり、その奥には古い機材が放置されている。

「うーむ、あの廃材が俺を呼んでいる気がする」

橋が建築されていたときに使われた機材だろうか。災害が起きたらにすぐに対処できるようにこの場に残されているのだろうか。今では人間の身長よりも伸びている草花にまじり砂埃までもが覆い被さっ

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【ショートショート】嘘の雨音

【ショートショート】嘘の雨音

 七月に入った。
 とっくに梅雨の季節は終わっている。
「結局、空梅雨だったなあ」
 とヒロシは言った。
「暑いなあ」
 と、ケンジは雲ひとつない青空を仰いだ。
 ふたりはコンビニに入るかどうか、迷っている。飲料水の値段がやたら高くなっているのだ。
「このままじゃ熱中症だよ」
 コーラを一本買って、分けて飲んだ。
 目の前をスーツ姿の男が歩いて行く。
 ざーっ、ざーっと雨粒のような音がした。
「最

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【ショートショート】沈黙

【ショートショート】沈黙

 私は正義感の強い自分が嫌いだ。SNSの巡回がやめられない。
「根拠はなんですか」
「ソースを示してください」
「権力にこびを売ってうれしいですか」
 書き込んだあとでしまったと思う。他人事だからほっておけばいいのに、なぜ私はいらない一言を書き込んでしまうのだろう。
 ある日、SNSを運営している会社から「正義官」の認証マークが送られてきた。
 このマークがついていると、発言力が強くなる。
 でも

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命日

命日

 今までとても幸せだったし運が良かったから、これから先、何か不幸や不運なことが起こるのじゃないかという気がしていました。だから、自分が地獄に落ちたようなつらい目にあった時、やっぱり来たか…と思ったのです。辛くて泣きながらも、冷静な自分もいたのです。

 今は涙も枯れ果て、自分は死んでいるような感じで、痛みや空腹とか何も感じません。眠りから自然に目が覚めてぼんやりと思います、まだ生きているんだな、と

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栗と柿と冷静な査定2

栗と柿と冷静な査定2

ある朝、彼女からLINEが入っていた。

「あなたのお母さんに交際を止められる夢を見たよ🥲別れたほうがいいんかな?」

(また始まった)

と内心思ったが、こう返した。

「大丈夫やで。夢は夢やから。ちゃんと好きやから安心してな♥」

俺は無理やりハートを付けて彼女に返事をした。

夢、か。

最近見てないな。仕事に追われて、帰宅してからも風呂に入って飯を食って好きなアニメを見て気分転換して24

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とんでもなく上手くいく。

とんでもなく上手くいく。

とんでもなく上手くいく。

どんな独り言をいっているか。
わたしはとんでもなく上手くいく。

言葉が人生を変える。
内も外も変わって上手くいく。

つかう言葉で人生が決まるという。

どんなことばをいっているか。

そのとおりの自分になる。

汚い言葉をいう人は汚い人生になる。

きれいな言葉はきれいな人生。

お金なんてといえばお金に振り回されない人生。

どんなことばをつかっているだろか。

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地獄のサイクリング

地獄のサイクリング

我が家のハロウィンパーティーの裏側である。
いつものことではあるが、ハロウィンパーティー当日。
その日僕はお腹が痛かった。

時は事前準備の日に遡る。
ハロウィンパーティー開催の5日ほど前だ。

我が家のハロウィンパーティーは、仕込みが重要である。

ハロウィンパーティーでは通常、仮装した子供たちが「トリックオアトリート!お菓子をくれないとイタズラしちゃうぞ?」と言う、理不尽な条件を大人達に強制し

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主食

主食

昨日から主食が麺や米から、オートミールになりました、最近食べる癖が断酒以降ついてしまいまずいなと思っていたのですが、オートミールでおなかが膨らみますし、炭酸水でもおなかが膨らむので、ダイエット再開となることを期待したいです、炭水化物への誘惑はないと言えば嘘です、ここは正念場かなぁと感じておいます。ワサビ茶漬けにしてごま塩をかけて食べてますが、鮭茶漬けでワサビ入れた方が、美味しい気がしています。

祭りの日に...1

祭りの日に...1

この夏、俺は職場のみずきと祭りに行くことにした。祭りは全部で2日だがおれは2日とも行きたかった。みずきの浴衣姿を見たくて…

当日になり、みずきは浴衣姿姿で現れた。髪を1つにまとめてうちわを帯にはさむ姿は本当にきれいだった。

俺たちは知らずのうちに手を繋ぎ、ブラブラと屋台を歩く。
街ゆく人達は浴衣の女性もいるが普段着の人も結構多かった。
だが、俺はどうしてもみずきに浴衣姿を着て欲しかった。

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ホロスコ星物語94

ホロスコ星物語94

老執事を降ろした二人は、そのまま方向転換をして一度南進し、東地区の方へと馬車を進めます。

王都の構造は、西には庶民の店が立ち並び、生活の拠点として繁栄している一方、東には貴族御用達の高級店が並んでいて、中央の貴族街を軸に東西が分かれる形になっています。

この東地区に出るには、貴族街の南の大通りから東へ進むことになります。コエリはこの街を横断する通りに出る直前、南に見えてきた景色に、複雑な思いを

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