名前のない書物(第三十五回)
図書館13、
ワシリ・ザロフ警部は呆気にとられた表情だったが、それはこちらも同じであった。少なくとも、ぼくは完全に意表をつかれていた。というか混乱していた。スウが姿を消したとおぼしき先に、捜索を頼んだ相手がいるなんてことが、あるだろうか?
「おいっ、貴様らそこで何をしている!」
怒号とともに警部が、デスク・チェアから弾かれたように立ち上がった。いち早く我に返ったようだった。そしてこちらに向き合ったときにはすでに、手妻めいた鮮やかで、特殊警棒を取り出していた。いかにもプ