秋山 茂之(おはなし屋さん)

日常のできごとを料理して読み物をつくっています。よくつかう調味料は「おかしみ」と「かわ…

秋山 茂之(おはなし屋さん)

日常のできごとを料理して読み物をつくっています。よくつかう調味料は「おかしみ」と「かわいさ」です。隠し味は「ナイショ」だよ。ティータイムにお楽しみください。

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【おはなし】 もうすぐ工事中

どうも、わたしは帽子です。 作者の頭に乗っかってる変な形をしてるやつです。プロフィールのアイコンっていうんですかね? あれに写っているジャガイモみたいな見た目の変な帽子がわたしです。 どうやら作者はリニューアルを検討しているみたいです。わたしは帽子ですから作者の考えていることがまるわかりなのです、はい。 それでですね、今日はわたしが入手した極秘情報をですね、こっそりとみなさまにお伝えするために参じたわけであります。 どうやら作者は、統一感のあるページにしたいと考えてい

    • 【おはなし】 べちゃべチャーハン 

      「餃子を一人前とチャーハンをください」 「はいよー」 木曜日の仕事終わり。僕はいつもの中華料理屋さんに寄り道をして夕食をいただくことにした。 いつもならそこそこ混んでいる時間帯なのに、ポツポツと雨が降っている影響なのか、お客さんの数が少なく見える。 「ちょっとマズイかも・・・」 ヒマな時間になると気が緩むのは全人類共通の課題事項だと思っている僕は、少し警戒しながら料理の到着を待つことにした。 僕の餃子を担当してくれるのはベテランのおばちゃん。アルバイトで働いている

      • 【おはなし】 カウントダウン

        派遣契約が残り4日で終了する。 わたしよりも後に入ってきた彼女は、来月から正社員として引き抜かれるらしい。せまいオフィスの中でこしょこしょ話をしていれば、聞きたくなくてもわたしの耳に入ってくる。 「田村さんには内緒にしといてほしいんだ、こしょこしょ」 「はい、私も自分からは伝えにくいですし、こしょこしょ」 「彼女はあと4日で終了だから、穏便にすすめたいんだよ、こしょこしょ」 「部長のお気持ち、痛いほど分かります、こしょこしょ」 チラチラとわたしに視線を向けながら話

        • 【おはなし】 火の国のガラクタ

          汽車に乗り込んだサンカクは、窓際の席に座り外の景色をぼんやりと眺めながら時間を過ごしている。 乗客たちはというと、火の国へ資材を届ける男たちが目立っている。土の国から木材や山菜が運ばれ、水の国からは川の湧き水や葡萄酒が運ばれている。 火の国にあるレストランに運ばれていくこれらの食材たちと一緒にサンカクは少しの間移動することになる。 水の国から葡萄酒を運んでいるたくましい肉体をした男性がサンカクを見つけて話しかけてきた。 「サンカクさんじゃねえか。あんたも腹を空かせてカ

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          【おはなし】 100万円と元気な身体

          「先輩、僕は会社を辞めることにしました」 いつものように3時のおやつタイムを職場の屋上で過ごしていると、派遣契約の後輩が私に宣言した。 「そうか・・・。キミはまだ続けてくれると思っていたから、オレは残念だよ」 「派遣の営業さんからも、ここの職場の部長さんからも契約の更新依頼があったのですが、僕は決断しました」 「来週までは考える時間が欲しいと聞いていたよ。まだ3日も残っているじゃないか。いつもうじう悩むキミらしくない気がするな」 「ええ、た〜っぷりと悩んだ結果、辞め

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          【おはなし】 そのころ、サカナは

          空気中に漂っているチリやほこりに混じって、ぼくの近くでは、サカナが浮かんでいる。 色は透明、形は日替わり。 そんなデタラメな生命体は、どういうわけかぼくのことが気に入ってるみたいだ。 いろいろ飛んでくる春。 マスクをつけて防御力を高めるかわりに、ぼくはノーガードで地球を歩いている。雨が降るときにはカサをさすけど、紫外線とか小さな砂とか、そういった目に見えないものはサカナがパクパク食べてくれる。 そのお礼にぼくがサカナにお返しをするのは、彼らの存在を認めてあげること。

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          【おはなし】 おじさんのセカイ旅行

          職安で求職の手続きを済ませた私が近くの喫茶店でコーヒーを飲んでいると、女子大生らしき2人組の席から話し声が聞こえてきた。 「もうすぐ新学期になるじゃない。3回生にもなると就活が本格化するから、その前に旅行に行こうと思ってるのよね」 「あんた、また海外に行こうと思ってるんじゃないわよね?」 「もちろん、海外に決まってるじゃない」 「こないだ行ったのはインドだっけ?」 「インドは去年よ」 「ドバイに行ったのは?」 「おととし」 「マカオは?」 「覚えてないかも」

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          【おはなし】 雨としずく

          雨降りの火曜日。 昨日ほどではないけれど、電車の中はどんよりとしている。カサをたたんでしずくが他人につかないように気をつけながら、乗客たちは無表情のまま時間だけが景色と共に通り過ぎていく。 そんななか、スイひとりだけはウキウキ気分をこらえるのに必死になっている。 駅に到着して扉が開くと、ちいさな女の子がお母さんと手を繋いで乗ってきた。女の子はスイを見つけると興味を示した。 スイは長靴を履いている。大人になっても黄色い長靴を恥ずかしげもなく履いている。 「だって、晴れ

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          【おはなし】 フライパンと切り株

          石の国を出発して、火の国を通過し、土の国へとたどり着いた修理屋のサンカクは、教会までもう少しのところまで歩いてきた。 ヒュー てけっ ♪ サンカクの足元に不時着したのは、紙飛行機だった。 「おじちゃん、それ、ぼくの」 半ズボンを履いた小学生くらいの男の子がサンカクが拾い上げた紙飛行機を返して欲しそうに見つめている。 「こいつは、坊やが作ったのかい?」 「うん、そうだよ」 「ちょいと改造しても構わないかね?」 「やだよ。せっかく作ったんだから」 「そうか・・・

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          【おはなし】 風の揺らぎ

          面接官1 「はい、どうもありがとうございます。リナさんは元気な妹キャラにエントリーされているのですが、実際にお兄さんかお姉さんはいるのですか?」 「いえ、いません。うちは施設で育てられた捨て少女やから」 面接官1 「そうでしたね。では15歳というのは本当でしょうか」 「それはちょっとサバ読んでます」 面接官1 「そうでしたか。実際の年齢は非公開でもちろん構わないのですが、少し中途半端な年齢の気がしますね」 面接官2 「厨二病って言葉はまだ健在ですから、14歳の設定の

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          【おはなし】 水の予兆

          雨がやんだ数時間後、彼女はピアノの前に座っている。 両手は膝の上にそろえられ、視線は鍵盤を捉えているが、彼女が実際に見ているモノは何もない。 穴の空いた天井からは、雲が残していった水滴がポツリぽつりと落ちてきては地面に水の溜まりをこしらえていく。流れていった暑い雲がさっきまでいた場所には明るい日差しが溢れ、古びた建屋にぬくもりを与えている。 彼女が捉えようとしているのは、言葉にならない言葉であり、音にならない音でもある。 この先どれくらいの時間をその姿勢で過ごすことに

          【おはなし】 石の美学

          この世界のどこかにあるといわれている石の国では、列車の線路はひとの手によって切り替えられている。 「いちばん見晴らしのいい場所、そうさなぁ、あれは高台みたいな建物じゃった。その小屋の中で汽車が到着するホームをじいっと見つめるんじゃ。そうしているうちに汽車が近づいてくるわな。その汽車をどのホームに誘導するのかを決めるのがワシの仕事じゃった」 私の目の前で話している男は、自分が線路交換士をしていた時代のできごとを振り返っている。 「ミッツからイツツのホームがあったわな。ワシ

          【おはなし】 かくしんぼ

          「最近、コンビニが眩しくないかね」 昼休みにランチを一緒に食べている先輩が変なことを言い出した。 「蛍光灯がLSDになったからですかね」 サバの塩焼き定食を食べながら僕は感想を述べた。 「そりゃあ、LSDをキメていたら眩しさも感じるだろう」 「幻覚も見えると言われてますしね」 「ああ、そうとうアツイらしいな」 「先輩は経験ないんですか?」 「むかし海外でちょこっとな。少量だけをキメただけで幻覚が見えたものさ」 「へー」 先輩は鶏のからあげ定食を食べながら話

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          【おはなし】 トーメイさん

          ふつか酔いで午前の貴重な時間をベッドの上でダラダラと過ごしてしまった僕は、そろそろ起きることにした。 お腹はすいてないから簡単に掃除でもしようと思い書斎のドアを開けると、床に写真が散らばっているのが見えた。 「写真なんて最近撮った記憶がないんだけど」 床に散らばっている写真は、なぜかパズルみたいに切り裂かれている。 「もしかして、トーメイさんが来てたのかな」 パズルを組み合わせるように写真の断片を拾い集めていくと、学生時代の友人が白いタキシードを着て綺麗な女性を抱き

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          【おはなし】 たんぽぽ担当

          妹が作ってくれた夕食をふたりで食べている夜。僕は以前から考えていたことを彼女に伝えることにした。 「来週から僕は、たんぽぽになるよ」 肉じゃがに入っているにんじんを避けながら、牛肉でしらたきを包んでいる妹は、ちょうど2秒間だけ動きを止めた。 「じゃあわたしは、来週から1人分の食事を作ればいいのね?」 「そういうことになる」 「じゃあわたしは、芳醇な香りのする兄さんの靴下とパンツも洗わなくて済むのね?」 「そうだな」 「それだったら、わたしにはメリット以外には何も

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          【おはなし】 メロンパン化現象

          あったかそうな服を着ているひとほど、なぜか寒そうにしている。 彼らはメロンパンみたいなモコモコのダウンジャケットを着て、亀みたいに首を縮めて歩いている。背中は『?』マークみたいにカーブを描き、小刻みに震えながら歩いている。 2月になってもまだ半袖姿の僕は、すれ違うひとたちの好奇の視線をビシビシと感じる。 「あのですね、これはアレを3回も打ったから身体がおかしくなったんですよ」と説明をしたいけど、僕と目が合うと誰もが足速に通り過ぎていく。誰も相手にしてくれないから、僕は毎

          【おはなし】 メロンパン化現象