【おはなし】 夏の小道具
ことしの夏は、小型の扇風機を持っているひとをたくさん見かけた。
学生服を着ている女の子がアクセサリー感覚でカバンにぶら下げているのも見かけた。
首にヘビを巻いているひともたくさん見かけた。
あれも扇風機の仲間みたい。
わたしは使ったことないから、詳しいこと知らないんだ。
ジャンバーの腰の部分に扇風機がついた作業着を着ているおじさんは、もう見慣れてきた。
わたしも着てみたいけど、お買い上げしてまでは、着たくない。
スーパーの試食販売みたいに試着できるイベントがあったら参加してみたいと思っているけど、そういうイベントにまだ出会えない。
ことしの夏は、扇子を使っているひとをあまり見かけなかった。
「Z世代は環境問題に対して意識が高い」
誰が言い出したのか知らないけれど、充電する扇風機よりも、扇子の方がエコだとおもう。
なんだかんだと理由をつけるのは、物を買わせたい大人の都合。
子供たちを箱の中に押し込んでいるのよ。
ギューっと、無理やりにね。
ことしの夏は、電車の車掌さんが帽子を脱いでいた。
制服を着ているけど、頭がいつもと違うから、わたしは違和感を覚えたのだけど、まわりのひとたちは無反応だった。
すぐに自分の手相を見つめる「占い師」たちは、気づいていたのかな。
おしまい