深川岳志

ショートショートを書く人。毎日、一作ずつ書いて、夜にClubhouseのルーム「ショー…

深川岳志

ショートショートを書く人。毎日、一作ずつ書いて、夜にClubhouseのルーム「ショートショートの朗読と雑談と」で朗読しています。よかったら、聞きに来てね。本職はフリーライター。好きな著名人は筒井康隆、色川武大、草彅剛、壇蜜など。

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■なにをするサークルか 「ショートショートの朗読と雑談と」の打ち合わせをしたり、記録を残したり、ショートショートに関する知見を蓄積するサークルです。 ■活動方針や頻度 「ショートショートの朗読と雑談と」はClubhouseで毎日19時から21時まで開いています。ショートショートを通じて交流が図れればいいなと思っています。 ■どんな人に来てほしいか ショートショートを書きたい人、朗読したい人に参加してほしいと願っています。ショートショートの定義は人によって異なると思いますが、ここでは100字から2000字程度の長さの小説を想定しています。 ■どのように参加してほしいか ショートショートを書いたら、どこに書いたか、URLを教えてください。面白い本や朗読があれば、メモを残していってもらえると助かります。また、ショートショートのお題も募集しています。 ■タイトル画像は、EATALK MASKのミムコさんによるものです。マスクケース文庫という面白いプロジェクトを運営されています。

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    平日にショートショートを1編ずつ追加していきます。無料です。ご支援いただける場合はご購読いただけると励みになります。 朗読会や音声配信サービスなどで自由にご利用ください。その際には、タイトルと作者名、URLを記載してください。報告の必要はありません。

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    近況報告的な文章を収めていきます。

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    映画やテレビなど映像ドラマを観た感想文を集めていきます。

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    びすマニアの方々のために。

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    自分でも毎日Clubhouseでショートショートを朗読しているのですが、朗読家の方に読んでいただくとまったく出来上がりが違います。このマガジンは朗読していただいた作品を紹介していくために作りました。

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目次

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    • 【ショートショート】新生活

       記憶には気をつけなければならない。  うっかりしていると、ときどき耳からこぼれることがあるらしいのだ。  こぼれた記憶は浮遊霊のように空中を漂っている。  ふつうの人間には取り憑かないが、記憶をなくしている人間がいると、すっと耳から入り込んで記憶を上書きする。  私はきっとどこかで記憶を落としたのだろう。それが三日分なのか、一年分なのかはわからない。  だが、入ってきた記憶は五年にも及ぶ長期記憶だった。  私は愕然とした。  自分がなにものか、わからないのだ。  五年以内に

      • 【ショートショート】奇病

         道路に穴ができ、だんだん広がっていくという事件が起きた。調査が行われたが、原因は特定できない。  穴は現在も拡大中であり、上に鉄板を乗せて対処している。  やがて穴のほうが大きくなり、さらに大きな鉄板に取り替えなければならないことは明白だが、鉄板というのは、どこまで大きくできるものだろうか?  日本で始まったこの陥没はみるみる世界に拡散し、いろいろなものに穴が空きだした。  私は翼に穴があき、飛べなくなった雀を見たことがある。  人間に穴があくことは滅多にないが、ないわけで

        • 【ショートショート】自動パーティション

           老化は足からという言葉はほんとらしい。  足の筋肉量が減ってくると転倒の機会が増え、そのうちに骨折して寝たきりとなる。  私はなるべく散歩に出かけるようにしていたが、最近はそれも億劫だ。  ベッドの上に寝転がって、ぼうっとしているのが一番楽。  気づくと部屋がずいぶん狭くなっている。  もう本を読む気力もないのですべて売り払い、本棚を処分したところ、その分、壁がぐいと押し出してくる。  天井も低くなってきているようだ。あまり立ち上がることもないので、それでとくに不便とも思わ

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        記事

          【ショートショート】燃える眼

          「火事だぁっ」  とお父さんの怒鳴る声が聞こえた。 「サエコっ、アツヒロ、逃げろっ」  ぼくはベッドの上でばちっと目が開いた。  逃げなきゃ。  とっさに机の上にあったスマホを掴み、部屋を出た。階段にはすでに煙が上がってきている。  つっかけに足をひっかけて、外に出た。野次馬がたくさん集まっている。  ぼくはその姿をスマホで撮影した。  ホームルームの雑談で、担任の先生が「放火魔というのはたいてい野次馬に交じっているんだよ」と言ったのを頭の片隅で覚えていたのだ。  お父さんと

          【ショートショート】燃える眼

          【ショートショート】目覚めの合図

           喋る仏像を探しています。  お心当たりのある方は、どうぞご連絡ください。  話が突然すぎますか?  では、最初からご説明しますね。  私にはよくみる夢があります。石の階段を下ると、あまり広くない部屋があって、そこに二体の仏像がいるのです。金の仏像と銀の仏像です。金の仏像とはおもに金の話を、銀の仏像とはアイドルの話をします。話が終わると握手をするのですが、石のはずなのにくにゃりと柔らかいのですね。これはおかしいと思い目が覚めるというのがいつものパターンです。  ある日、私は会

          【ショートショート】目覚めの合図

          先週のショートショート【24年09月08日~09月13日】

          ■2023年09月08日(日) いつもは20時頃にアップロードするのだが、アイデアが浮かばず、遅くまでかかる。無理して書いたらずいぶん暗い話になった。アメリカ型社会を追究していけば、こういう税金もありかなあ。タイトルは「新しい税金」にする。 ■2024年09月09日(月) スマホのメモに散歩の途中に書いた「渡りロボット」というタイトルが残っている。北国からロボットの群れが去って行く景色を書きたい。タイトルはそのまま「渡りロボット」にした。悪い癖で、またオチらしいオチがない。

          先週のショートショート【24年09月08日~09月13日】

          【ショートショート】言葉を失う

           毎朝、顔を洗うと、テーブルの上にできたての朝食が並んでいる。  たいていはサラダ、チーズトースト、珈琲のメニューだ。  私には結婚した人がいるらしい。  そして、同居しているらしい。  しかし、三年前に私が言葉を失う病気にかかってから、認識できなくなってしまったのだ。  声も聞こえなし、姿も見えないし、触っても生物のように思えない。  「結婚」という言葉は覚えているからかろうじて生活が成り立っているが、それも忘れたら、不気味な日常に耐える自信はない。  食べ終えると、私は会

          【ショートショート】言葉を失う

          【ショートショート】階段の日

          「ずいぶん賑やかね」  とネネがいった。 「そうだな」  オレは街道を見渡した。 「あれは、なんの行列だい」 「階段が出たんだよ。あの脇道は六の村に続いている」  先を急ぐ旅ではない。  オレたちは、のんびりと六の村に向かった。  村に入ると、いくつもの集団にわかれている。  人間がぞろぞろと空に向かって登っている。 「あれが階段か」 「透明で見えないわね」  階段のまわりには藁が敷き詰められており、ときどき絶叫とともに人が落ちてくる。足を滑らせたとか、階段が急に曲がっていた

          【ショートショート】階段の日

          【ショートショート】私の秘密

           朝は四時に起き、五時になったら散歩に出る。  村の端を流れる川に沿って二時間ほど歩き、戻ってくる。  四時間も蓄電すれば、一日活動するにはじゅうぶんなエネルギーが手に入る。  私は昨日で二百五十歳になった。  記憶を外部デバイスに保存してはどうかと医者に勧められたのが、九十五才の時である。百四歳までバージョンアップしたが、それ以上は無理だった。意識が混濁してきたのである。  脳を電子頭脳と交換した。もっとも気になったのは、意識がどうなるかということである。記憶だけしか残らな

          【ショートショート】私の秘密

          【ショートショート】父の葬儀

           病院で父が亡くなった。  だんだん衰弱していっての多臓器不全だ。私も含めみんな覚悟はできていた。  数時間後、スーツ姿の男がふたりあらわれ、 「ご愁傷様です」  という。  ひとりは病院と連携している葬儀屋だ。そしてもうひとりは、葬儀屋と連携している動画編集スタジオだという。  話を聞かれ、父の映っている動画をありったけ回収された。  一週間後に行われた葬儀の場所は、試写会場みたいな場所だった。  スクリーンの下に祭壇が設けられ、父の遺体が入った棺桶もある。  十四時、葬儀

          【ショートショート】父の葬儀

          【ショートショート】渡りロボット

           黒光りするロボットが玄関でバタバタと雪を落としている。  私はバスタオルを渡した。ロボットは器用に全身をぬぐい、水気を取り去ってから、家のなかに上がってきた。 「ちょっと休みなよ」 「はい」  私たちはこたつで向かい合った。  私は自分用にお茶を淹れ直し、ロボット用のマグカップにハイオクのガソリンを注いだ。  ロボットは高性能のバッテリーで動くが、緊急時のためにガソリンでも短時間の動作が可能になっている。  雪下ろしを終えたばかりのロボットは、マグカップから黒い液体をすすっ

          【ショートショート】渡りロボット

          【ショートショート】新しい税金

           ニュースを見ていた父が、 「ぎゃっ」  と叫んだ。 「どうしたの」 「また新しい税金だ」 「今度はなに?」  母が鼻白んだ声できいた。 「体重」  父はシンプルに答えた。  税金のせいで煙草もアルコールもやめた父と母は、絶望的な表情をしている。 「適正体重を超えたら、重さに応じて累進課税がかかるそうだ」 「あんまりだわ」  と母がうめく。  父は私に、 「ダイエットってどうすりゃいいんだ?」  と聞いた。 「食べるものを減らして運動すればいいんじゃない?」 「そんなんじゃ間

          【ショートショート】新しい税金

          先週のショートショート【24年09月01日~09月06日】

          ■2023年09月01日(日) 最近、よく意識が飛ぶ。気がついたら、8時20分前。20分でなにが書けるだろう。前からちらっと意識の片隅にあった「体中から爪が生えてくる」話を書いてみる。ストーリー展開がなくてこれまで書いてこなかったのだけど、追い込まれるとなんとかなった。「乗っ取り」というタイトルをつける。 ■2024年09月02日(月) ぜんぜんうまくいかない。なにも発想がおりてこない。困ったなあと思っているうちに時間がなくなった。巡礼の話を書こうと思った。家が巡礼の道の前

          先週のショートショート【24年09月01日~09月06日】

          【ショートショート】無関心モード

           道路の向こうからタテカワがやってきた。  小中高と同じ学校で、同じ団地に住んでいるから顔見知りではある。  しかし、友だちとは言いたくない。  やつは歴史オタクで、オレは歴史にぜんぜん興味がないからだ。  そして、やつは話し好きで、おれは無口と来ている。  黙って聞いているから、やつはオレのことを歴史好きと勘違いしている。 「おーい、イソジマ」  ほら、やっぱり声をかけてきた。 「なんだよ」 「観たか、昨日の大河」 「いや、まだだけど」 「帰ってすぐ観ろ。すげーから」 「な

          【ショートショート】無関心モード

          【ショートショート】ふるさとの井戸

           四十年ぶりに故郷に戻ってきた。  小学生のときに東京に引っ越して以来だ。  私は懐かしい土地をぼんやりと散策した。比較的郊外なので、変化は少ないほうだ。田畑がアパートに変わっていることを除けば、そんなに大きな変化はない。  十字路を左に曲がると、タナカの家だ。  大きな庭に井戸があった。  生け垣から覗きこむと、当時のままの風景が広がっており、私はタイムスリップしたような気分になった。  勝手知ったる裏口から侵入する。  小学校のときは、毎日のようにこの庭で遊んだ。  疲れ

          【ショートショート】ふるさとの井戸