深川岳志

ショートショートを書く人。毎日、一作ずつ書いて、夜にClubhouseのルーム「ショー…

深川岳志

ショートショートを書く人。毎日、一作ずつ書いて、夜にClubhouseのルーム「ショートショートの朗読と雑談と」で朗読しています。よかったら、聞きに来てね。本職はフリーライター。好きな著名人は筒井康隆、色川武大、草彅剛、壇蜜など。

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■なにをするサークルか 「ショートショートの朗読と雑談と」の打ち合わせをしたり、記録を残したり、ショートショートに関する知見を蓄積するサークルです。 ■活動方針や頻度 「ショートショートの朗読と雑談と」はClubhouseで毎日19時から21時まで開いています。ショートショートを通じて交流が図れればいいなと思っています。 ■どんな人に来てほしいか ショートショートを書きたい人、朗読したい人に参加してほしいと願っています。ショートショートの定義は人によって異なると思いますが、ここでは100字から2000字程度の長さの小説を想定しています。 ■どのように参加してほしいか ショートショートを書いたら、どこに書いたか、URLを教えてください。面白い本や朗読があれば、メモを残していってもらえると助かります。また、ショートショートのお題も募集しています。 ■タイトル画像は、EATALK MASKのミムコさんによるものです。マスクケース文庫という面白いプロジェクトを運営されています。

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    • ショートショート】霧吹き村

       名物も観光資源もない、ただの田舎。  そう思っていた。  学校は高校までしかないので、専門学校や大学に行きたいやつは都会に出ていく。ぼくはとくにやりたいこともなかったけど、流されるように都会に出た。  そして、ぼくたちの村には特殊な遺伝子が受け継がれていることを知った。  ぼくは炎天下の下でも、雪降る冬のように口から白い息を吐くことができる。都会ではミスト人間と呼ばれているらしい。  就職情報誌をめくっていると、ときおり、資格の欄に「ミスト人間」と書かれているものがある。そ

      • 先週のショートショート【24年07月14日~07月19日】

        ■2023年07月14日(日) 妻からのお題は「樽」。樽は前にも書いたなあ。ずいぶん苦労して変なものを書いた覚えがある。今回は第三次世界大戦後の樽職人の話を書いた。タイトルを「職人の復活」にする。アップロード。 ■2024年07月15日(月) 妻からのお題は「弁当箱」。頭が疲れて朦朧としている。ええい、ロボットものにしてしまおう。書き出してしまってから終わり方に困る。ええい、無理やり終わらせた。「番長の失敗」。番長ってもう死語ではあるまいか。 ■2023年07月16日(火

        • 【ショートショート】不良品の呟き

           仕事に向き不向きがあるようにタオルにも向き不向きがある。  オレはなぜ落下傘工場に紛れ込んでしまったのだろう。  ご存じのように、などと呑気な口上を述べているとオレにつながっている人間が怒るに違いないが、タオルはいたって通気性のよい素材である。  したがって、空気もどんどん通す。  ということは、オレなんぞにすがってもぜんぜん落下速度は低下しないということである。なにもないよりはマシにしろ。  人間は何度もスカイダイビング体験があるのか、素早く異常に気づいた。 「なぜだなぜ

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        記事

          【ショートショート】ちょいとお待ちなさい

           空の色がどんどん黒くなっている。  私は急ぎ足で駅に向かって歩いていた。 「ちょいと、ちょいとお待ちなさい」  粘りつくような声が聞こえた。  振り向くと、明るい雑踏のなかにそこだけ異空間のように薄ぐらい場所があった。小さな机と椅子。そして「人相」と書かれた提灯。おばあさんが私を手招きしていた。 「なんですか」 「あなた、ちょっと座って顔を見せなさい」 「強引ですね」 「おや、やはりそうだ。死相が出ている」 「冗談はやめてください」  おばあさんは私の顔をまじまじと見て、

          【ショートショート】ちょいとお待ちなさい

          【ショートショート】血液泥棒

           気がついたら病室だった。白い天井に白いカーテン。 「検診の時間ですよ」  看護婦さんの声がした。  私はベッドから起き上がった。  そのまま第一採血室に案内される。  窓口がずらりと並び、何十人という人が採血を待っている。 「担当のスズキでございます。右手を台の上に置いてください」 「はい」  すっと針が皮膚の中に潜り込んだ。採血専門だけあって、まったく痛くない。カプセルを外し、次のカプセルに取り替える感触がする。思わずこっくりとしそうなほど時間がたった。 「まだですか」

          【ショートショート】血液泥棒

          【ショートショート】一風呂浴びる

           私はバスターミナルでバスが来るのを待っていた。  インバウンドが主流産業になるつけ、へんなものがいろいろと登場する。  「バス・バス」などはその最たるものであろう。  バスの中が温泉になっているのである。 「都会でも楽しめる移動温泉!」  というのがうたい文句だ。  バスの階段を登って天井で料金を支払い、更衣室で裸になって湯に浸かる。  男風呂、女風呂、混浴湯、選びたい放題である。全国からバス・バスがやってくるので、いろいろな名湯を楽しむことができる。  日本人にも好評であ

          【ショートショート】一風呂浴びる

          【ショートショート】番長の失敗

           家族でテレビショッピングを眺めていたら、材料を投入するだけで自動的にお弁当を作ってくれる「お弁当ロボ」を格安で販売していた。  お母さんの目がぎらりと輝いた。  三十分以内に注文すると、もう一台オマケについてくる、というところがツボだったようだ。  好きなお弁当を五つまで登録できる。僕は「ハンバーグ弁当」「生姜焼き弁当」「海老チリ弁当」「唐揚げ弁当」「とんかつの卵とじ弁当」にした。  大切なのは材料の購入だ。僕はお母さんに二千円もらってスーパーに行った。まず合い挽きの挽肉、

          【ショートショート】番長の失敗

          【ショートショート】職人の復活

           ぼおおお。  汽笛が聞こえる。  今日も、世界中から生き残りの人やロボットを載せて、引き揚げ船が港に着く。  私は、ロビーの到着者リストを目で追っていた。 「和助はいないか」  と目をこらす。  いた!  日本に残された最後の樽職人かもしれしないロボット、和助。 「坊ちゃんですか」  と和助は聞いた。 「そうだよ、和助。ずっと待ってたんだ。じいちゃんやお父さんはこの戦争で死んでしまった」 「ご愁傷様です」  爆撃された樽工場は、私がひとりで復活させた。しかし、文献だけで樽を

          【ショートショート】職人の復活

          先週のショートショート【24年07月07日~07月12日】

          ■2023年07月07日(日) 妻からのお題は「ロケ」。昨日、二本書いておいたから、計四本。ホラー映画の撮影現場の話。雷雨に包まれたバスの話。ロケ隊が村にやってくる話。ロケ弁当の話。四本とも妻に拒否される。「理屈が勝っている」「長い」「つまらない」。外れかあ。あまり直しようもなく――できることは短くすることくらいだ。村にカツドウが来た話を「最後の言葉」として、ロケ弁当の話を「ロケ弁の秘密」としてアップロードする。この作業だけでずいぶん時間を食った。 ■2024年07月08日

          先週のショートショート【24年07月07日~07月12日】

          【ショートショート】行き止まり

           会議室にはさまざまな職種の人間が集められていた。  議題は、新製品の広告について。 「ご存じのとおり」  と司会者が喋りだした。 「この広告嫌いの世の中で、新製品を認知してもらうことは非常に困難であります。今日はそのためのアイデアを広く募りたいと思います」 「広告代理店の人がいないようだけど」  新製品の企画者が聞いた。 「先月、日本で最後の広告代理店が倒産しました」  たしかにもうテレビもなければ新聞もない。街頭からは看板やディスプレイが撤去された。  残ったのは混沌とし

          【ショートショート】行き止まり

          【ショートショート】青空町のゴロウ

           縁側から凪の海が見える。  ちゃぶ台の上にはレトロなラジオがひとつ。  サブロウじいさんは、座椅子に座り、孫のゴロウがプレゼントしてくれたラジオのスイッチを入れた。  デューク・エイセスの「筑波山麓男声合唱団」が流れてきた。カエルの歌である。じいさんはちょっと笑う。 「ケロケロケロ」  と声を合わせていると、 「では、ここでリスナーからのお便りです」  とパーソナリティーが言った。 「ラジオネーム「青空町のゴロウ」さんからのお便りです。おはよう! じいちゃん、元気? もう朝

          【ショートショート】青空町のゴロウ

          【ショートショート】黄金色のコロッケ

           彼女は郵便受けから封書を取り出し、部屋のドアを開けた。  封書をテーブルのうえに放り出し、冷蔵庫から水を取り出して飲む。 「ふーっ」  ベッドに腰かけてため息をついた。  彼女は医療事務の仕事をしているが、手取りはわずか十四万円。ワーキングプアだ。  部屋代を支払い、税金と公共料金を支払うといくらも残らない。  社会保険料は先月から値上げされ、公共料金の値上げももうすぐだと聞いている。  彼女の生活はここ二十年近くずっと圧迫され続けてきた。外食を止め、ペットボトルを止め、間

          【ショートショート】黄金色のコロッケ

          【ショートショート】モレンド

           その子育てロボットには名前がない。  ご主人様である坊ちゃんが名前をつけてくれなかった。 「おまえ」  と呼ぶ。  そのうち誰もが「オマエ」と呼ぶようになった。  オマエは学校の前で、坊ちゃんが出てくるのを待っている。  ほかの子どもたちは次々と姿を消していった。  坊ちゃんは逃げ出したのだとオマエは判断する。  オマエは坊ちゃんの行きそうな場所を探してまわった。  そのうち、モレンドの残量が三十パーセントを切った。いったん家に戻って補給しないと立ち往生してしてしまう。  

          【ショートショート】モレンド

          【ショートショート】禁止条項

           友だちの家を訪ねた。 「どうぞ」  紅茶と小さなチョコがお盆の上に乗っている。 「ありがとうございます」  私は一口すすった。 「おいしいですね。さわやかな風が吹き抜けるようです」 「モレンドのティーよ。チョコも食べてみて」  私は銀紙を剥いた。 「あ、たしかに共通したなにかが」 「そうでしょ」  友だちは一週間ほどモレンドに行っていた。 「なにをしていたんですか」 「だからモレンドよ」  国名ではないのか。 「なにが一番よかったですか」 「昼寝したことかな。それはもう深い

          【ショートショート】禁止条項

          【ショートショート】指示に従う

           ジジイの繰り言と言われてもいい。カタカナ語が苦手だ。  よく使うターミナル駅の階段に「モレンド」という大きな文字があらわれたのだ。南側出口には、下りエスカレーター、昇りエスカレーター、階段が並んでいる。エスカレーターには「トマリャータ」と書かれている。これは私の勝手な解釈によると「歩くな」だ。  だが、「モレンド」はわからない。気の短そうな人々が階段を駆け上がろうとして、「モレンド」の存在に気づき、ちっと吐き捨て、昇りエスカレーターに並び直しに行く。誰も階段を登ってくれない

          【ショートショート】指示に従う