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白線の内側までお下がりください
行きつく先が地獄だったとして、私はそれでも構わないのにね。
と、ぼんやり思いながら貴方の横顔をちらりと覗く。
間に合ってよかった、と最終電車の時刻が光る掲示板を見上げて息を吐く貴方とは目が合わない。
白線の内側をのろのろと歩く。
時折りわざと外側にはみ出してみる。
危ないよ、だなんて私の肩を抱き寄せないでよ。
一緒にはみ出してよ。
なんてね。
正しく生きている貴方が大好きで、大嫌いだよ。
天国なんてありません 地獄なんてありません 【詩】
人は死んだらどこへいきますか
天国はありますか
善い行いをすれば必ず天国にいけますか
それはやさしいところですか
人とはなんですか
血は流れてどこへいきますか
地獄はありますか
悪いことをすれば必ず地獄にいけますか
それはくるしいところですか
生きるとはなんですか
わたしたちが生きる この世の中は天国ではないのですね
わたしたちが生きる この世の中は地獄ではありませんか
善
ひとりぼっちで眠るのがこわいなら 【詩】
ひとりぼっちで眠るのがこわいなら
すてきな魔法をかけてあげよう
おいで
魔法はすぐにとけてしまうから
泣くのはよして さあ はやく
こわいことなど なにひとつないよ
泣きつかれて眠るより
ゆめのなかで 泣くほうがましさ
きっと泣いたことなど
忘れてしまうから
ひとりぼっちで眠るのがこわいなら
すてきな魔法をかけてあげよう
ごらん
魔法はすぐにとけてしまうから
泣くのはよして さあ はやく
夏の毒液が散り散りに 【掌編小説】
窓から夕暮れの陽が差して、まだ薄らと明るい部屋には夏の匂いがむうんと立ち込めておりました。シュルシュルとドレスの背中を編み上げていたコルセットの紐を解きほぐす音が、私の耳をくすぐって全身をすすすっと駆け巡るようでございました。私に毒が回ってゆくようでしございました。
急に窓辺に押しつけられたお芹(せり)は驚いた顔をして私を振りかえりました。その愛らしい顔に赤く開いた可憐な唇を噛むと、お