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宇宙の隅っこで言葉を吐き出して眠る怪獣、008 。 小説 詩 ポエム になれたらい…

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宇宙の隅っこで言葉を吐き出して眠る怪獣、008 。 小説 詩 ポエム になれたらいいな ◆Twitter https://twitter.com/No_00000008 ◆アクセサリーやグッズ https://lit.link/008

最近の記事

白線の内側までお下がりください

行きつく先が地獄だったとして、私はそれでも構わないのにね。 と、ぼんやり思いながら貴方の横顔をちらりと覗く。 間に合ってよかった、と最終電車の時刻が光る掲示板を見上げて息を吐く貴方とは目が合わない。 白線の内側をのろのろと歩く。 時折りわざと外側にはみ出してみる。 危ないよ、だなんて私の肩を抱き寄せないでよ。 一緒にはみ出してよ。 なんてね。 正しく生きている貴方が大好きで、大嫌いだよ。 《白線の内側までお下がりください》とでも言うように、貴方はとても綺麗な人。

    • しゅるり

      心 から 大切な ものだけ しゅるりと 取り出したら そのあとに 残るのは なんだ ろう か

      • あなたのいない楽園で 【詩】

        あなたのいない楽園で、 わたしはなんにでもなれる きょうは金魚になったので あすはポピーになりましょう きのうは檸檬になったので 来世はクジラになりましょう あなたのいない楽園で、 わたしはなんにでもなれる

        • 滴る8月のこと 【詩】

          8月 透明な果汁 手首に滴る 赤いシロップ スプーンから滴る ひと夏の遊び 髪先に滴る 夏の匂い 背中を滴る アルコール消毒液 靴先に滴る 新しい生活様式 汗 プール かき氷 桃 8月 いつもより目に入る自分の手指と いつもより目に入らないあなたの顔 入道雲を見上げるのなんて忘れて 半年も経ったのでこの生活にも慣れました けれども マスク越しに夏を吸っても味気ない マスク越しに口づけしても味気ない 夏が滴る8月に 心から何かが滴りおちては消え

        白線の内側までお下がりください

          天国なんてありません 地獄なんてありません 【詩】

          人は死んだらどこへいきますか 天国はありますか 善い行いをすれば必ず天国にいけますか それはやさしいところですか 人とはなんですか 血は流れてどこへいきますか 地獄はありますか 悪いことをすれば必ず地獄にいけますか それはくるしいところですか 生きるとはなんですか わたしたちが生きる この世の中は天国ではないのですね わたしたちが生きる この世の中は地獄ではありませんか 善いことと悪いことを繰り返して 人が呼吸を繰り返す意味はありますか 人とは罪で

          天国なんてありません 地獄なんてありません 【詩】

          ひとりぼっちで眠るのがこわいなら 【詩】

          ひとりぼっちで眠るのがこわいなら すてきな魔法をかけてあげよう おいで 魔法はすぐにとけてしまうから 泣くのはよして さあ はやく こわいことなど なにひとつないよ 泣きつかれて眠るより ゆめのなかで 泣くほうがましさ きっと泣いたことなど 忘れてしまうから ひとりぼっちで眠るのがこわいなら すてきな魔法をかけてあげよう ごらん 魔法はすぐにとけてしまうから 泣くのはよして さあ はやく こわいことなど なにひとつないよ 街をあるく みんな ひとりぼっちさ きみと

          ひとりぼっちで眠るのがこわいなら 【詩】

          海に眠る(3)【短編小説】

          海に眠る(2) ◇ ◇ ◇  一九八五年、冬。  私たち二人は誰にも許されなかった、と言って泣いたひとりの女の子は、西の海に沈んでいった。冷たい世界を嫌った彼女は、冷たく白い波間に消えた。最愛の人をひとり残して。  それは、最愛の人を世間の許さぬ道へと歩ませてしまった償いのようだった。  それは、最愛の人へ愛を永遠に誓うようだった。  それは、最愛の人を腕から解放するかのようだった。  彼女の遺体は上がらなかった。  私はひとり、彼女と生きた日々ばかりを思い出す。 「あ

          海に眠る(3)【短編小説】

          海に眠る(2)【短編小説】

          海に眠る(1) ◇ ◇ ◇  いつものように私と彼女は手をつないで小さな岬で海を見ていた。  私たちはこの海が大好きだ。なんだかあたたかい気がする。今は冬だけれど、海の底の方はきっとあたたかい気がする。  あたたかい海の底で暮らしたいね。あっちの岬の底には温泉も湧いているかもしれないね。泳げなくても海の底をきっと歩けるから問題ないね。海底でもアイスクリームは食べたいね。結婚式にはこの岬に上がってあたたかい風に祝福されようね。  私たちはいつもそんなことを話す。そんな冗談

          海に眠る(2)【短編小説】

          海に眠る(1)【短編小説】

           西の海の、その底には、彼女が愛した彼女が眠っているのだという。  潮騒が彼女の声をかき消す。僕は彼女が泣いているのかと思ったが、ただ寂しそうに海を見つめているだけだった。シンプルな黒いワンピースが風に揺れている。  夏の灼けつくような陽射しの下で、偶然この小さな岬にただ居合わせただけの見知らぬ僕に、彼女はなぜかたくさんの秘密を教えてくれた。それは、彼女たちが愛し合って生きていたこと。この岬で手を繋いで海を眺めながら二人が生きた日々のこと。それが、許されなかった、ということ

          海に眠る(1)【短編小説】

          夏の毒液が散り散りに 【掌編小説】

          窓から夕暮れの陽が差して、まだ薄らと明るい部屋には夏の匂いがむうんと立ち込めておりました。シュルシュルとドレスの背中を編み上げていたコルセットの紐を解きほぐす音が、私の耳をくすぐって全身をすすすっと駆け巡るようでございました。私に毒が回ってゆくようでしございました。 急に窓辺に押しつけられたお芹(せり)は驚いた顔をして私を振りかえりました。その愛らしい顔に赤く開いた可憐な唇を噛むと、お芹は驚いたあまりに声も出せずに私の肩を押して抗議することもできないでおりました。

          夏の毒液が散り散りに 【掌編小説】

          はじめまして、008です

          はじめまして。008です。 ゼロゼロハチ、と読みます。 とはいえ、ハチでもエイトでも、読み方はなんでもよいのです。 各々、読みやすいように、どうぞよろしくお願いします。 私は自分が何者であるか、どんな人物か、そもそも人間と言ってもいいものか、なんだかよくわからないので、まるで名前を持たない生物のようだ、と常々思っています。 008という数字は、大量生産されるロボットの品番のようでも、囚人番号のようでもあります。 意図せずこの世に生まれてしまった気がします。生きていくこ

          はじめまして、008です