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ポップカルチャーは裏切らない

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”好きなものを好きだと言う"を基本姿勢に、ライブレポート、ディスクレビュー、感想文、コラムなどを書いている、本noteのメインマガジン。
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2023年7月の記事一覧

欲動と享楽を巡る旅/宮﨑駿「君たちはどう生きるか」の精神分析的な1つの見立て

欲動と享楽を巡る旅/宮﨑駿「君たちはどう生きるか」の精神分析的な1つの見立て

宮﨑駿監督の10年ぶりの新作長編映画「君たちはどう生きるか」に打ちのめされている。その幻惑的な世界と複層的な作品構造が思索に耽ることをやめさせてくれない。様々な見方がある作品であり、多くの解釈が既にある中で私も私なりに精神分析的な見方で本作を好き勝手読み解いてみようと思う。

眞人のエディプス・コンプレックス精神分析の創始者・フロイトは男児とは元来、母親に性愛的感情を抱く生物であると捉えた。ゆえに

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2023年上半期ベスト映画 10

2023年上半期ベスト映画 10

10位 フレーミングホット!チートス物語

あまり観ない伝記モノだが知られたお菓子という題材に釣られて観たらとても面白かった。自分はこのぐらいのモン、と社会や時代に思わされてしまう境遇においても、ユーモアとアイデアの輝きはきっとずっとそこにあることを実直に描いていた。こういうニッチなヒストリードラマ、もっと観たい。

9位 フェイブルマンズ

スピルバーグの巨匠への道筋をなぞる映画だと思いきやその

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"痛みたい"という欲望/石田夏穂「その周囲、五十八センチ」〜メンタルヘルスとポップカルチャー

"痛みたい"という欲望/石田夏穂「その周囲、五十八センチ」〜メンタルヘルスとポップカルチャー

精神科診療の現場において「これさえ変えれば全てがうまくいく」という強い確信に囚われている人とよく出会う。例えば整形。このパーツを理想的なものに変えれば絶対に人生がうまくいくという確信を持ちながらも整形のためにお金を稼ぐ上でトラブルに巻き込まれ精神科受診に至った人もいた。人生を良い方向に持っていくために取った選択が、自分を苦しめてしまった。

自分に自信を持つため、という選択で整形を選ぶ人もいるが「

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アジカン精神分析的レビュー『サーフ ブンガク カマクラ』/今を肯定するノスタルジア

アジカン精神分析的レビュー『サーフ ブンガク カマクラ』/今を肯定するノスタルジア

5thアルバム『サーフ ブンガク カマクラ』(2008.11.5)

11thアルバム『サーフ ブンガク カマクラ(完全版)』(2023.7.5)

2008年にリリースされた2枚目のフルアルバム。江ノ島電鉄の駅名を冠したタイトルの楽曲を藤沢から鎌倉に至るまで順番通りに揃えたコンセプト作品で、サウンドはパワーポップに傾倒し、レコーディングはやり直しや修正ナシの一発録り。歌詞も従来と異なり甘酸っぱい

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カネコアヤノの2本のツアー/2023年上半期ベストライブ

カネコアヤノの2本のツアー/2023年上半期ベストライブ

カネコアヤノの2本のツアー

先に結果から述べておくと、上半期のベストライブ1、2位はカネコアヤノのツアーだった。2位はZepp Nagoyaでのライブハウス編、1位は福岡市民会館でのホール編。年始にリリースされた『タオルケットは穏やかな』のツアーだ。まとまった感想をnoteに書けずにいたがここに記しておきたい。

まずライブハウス編。長年サポートドラマーを続けてきたBob(HAPPY)が去って初

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2023年上半期ベストアルバム トップ10

2023年上半期ベストアルバム トップ10

例年よりは遅れてしまったけれども、今年も上半期ベストnoteを書き上げることができた。良い歌モノとの出会いのきっかけになればこれ幸い。どのアルバムも、すごく優しい、というのは共通点かもしれない。心に寄り添うという作品が年々好きになっている。下半期も、音楽に抱えられていきたい。

10位 クラムボン『添春編』

蛙化現象という言葉がZ世代の流行語であり、しかもそれがYouTuberの動画を基に流行し

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