月の人

精神科医/ライター。 ポップカルチャーは裏切らないをモットーに Real Soun…

月の人

精神科医/ライター。 ポップカルチャーは裏切らないをモットーに Real Soundでも執筆中→https://realsound.jp/person/about/812327 依頼などありましたら本noteの仕事依頼タブに連絡先あります

マガジン

  • 50音で語る

    “あ”〜”ん”まで、50音の頭文字で始まるものを順番に語っていくシリーズ企画です。対象となるテーマは物事、人物、作品など様々。主に自分の根っこに息づく趣味嗜好を掘り下げて、不定期で自分語りをしていこうと思います。

  • 遅日記

    愛しの我が子のことや、日常の話などをちょっと遅れて文章化する日記たちです。

  • ポップカルチャーは裏切らない

    ”好きなものを好きだと言う"を基本姿勢に、ライブレポート、ディスクレビュー、感想文、コラムなどを書いている、本noteのメインマガジン。

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「ぼっち・ざ・ろっく!」とアジカンが寄り添う自傷的自己愛

臨床場面で向き合う自傷的自己愛精神科外来では様々な病状を抱えた患者と向き合い治療を行う。ストレスの原因となる職場や家庭の環境調整を行い、薬剤を適切に使用することで改善するのが一般的だが、そういった治療だけでは回復に至らない患者も多い。 たとえば過剰に思える程の自己否定を行う患者たち。自分の外見やステータスを卑下したり、社会や家庭環境に不満を述べたりしながら、周囲を困らせる行動を取ったり、時に希死念慮に繋がったりもする。そのような"生き辛さそのもの“を訴える患者はスッキリとし

    • 《う》Wikipedia【50音で語る】

      Wikipedia 情報だけを流し込んでいた日々 Wikipediaをとにかく見続けていた時期があります。中学1、2年頃。週末になるたびに1日2、3時間はずっとWikipediaを見ている時期がありました。ページからページへ数珠繋ぎのようにジャンプしていき、最終的にここからここまで来たのかぁと感慨に耽る遊びをしていました。友達いなさすぎ。情報だけが友達だったと言えるでしょう。 この習慣によって昔のバンドのシングルのリリース順や売り上げランキング、昔のドラマの時間帯ごとの

      • さらばベビーベッド【遅日記】

        ヘッダーで並べて見て思うけどもデケェな、ベビの人。服もぶかぶかだった冬を超え、みるみる成長したを春を経て、遂にだいたいの服がピッチピチな夏へ。季節も巡り、ベビーベッドを卒業する時期が来た。 最初はベビーベッドの真ん中にちょこんと置かれては弱々しくクネクネ動いてたベビの人だけど、いつの間にか寝返りを打つようになり、柵にガンガンアタックするようにもなってきた。最近では“柵品評家”のような佇まいで柵を眺めては、頭をゴチンとぶつけるということも起きているため、ベビーベッド卒業やむな

        • 2024年上半期ベストドラマ トップ10

          最近は上半期ベストドラマというのは選んでこなかったけど今年はどういうわけか山ほどドラマを観ている。これは恐らく昨年「ゲーム・オブ・スローンズ」全シリーズを観ていた時間をドラマ視聴時間に充てることができている、ということなのだけど、それにしても良作が多すぎる気がする。年間ベストで拾い切れなくなる作品が惜しいので、トップ10を久々に決めてみた。 10位 エリック 今年、数多い"子供が失踪する"という作品の中でも、親に極めて問題のある作品。しかしそれだけに留めず、街の暗部と心の

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        「ぼっち・ざ・ろっく!」とアジカンが寄り添う自傷的自己愛

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        記事

          2024年上半期ベストアルバム トップ10

          アルバム編、今回の10枚は結構新鮮な顔ぶれになっているのではないだろうか。何度目かの新たなものを求めるターム。それでいて、常に安心感をくれるものも同時に愛したいターム。これですね 10位 グソクムズ『ハロー!グッドモーニング』 振り幅も円熟味もフレッシュさとはかけ離れた充実のメジャー1stアルバム。各曲ごとのフォークとロックンロールとダンスビートの切替が絶妙で、それぞれのキャラは濃いのにつるんと聴けてしまう。もはや良い歌を追究しているバンド形態の音楽、というだけで好感を持

          2024年上半期ベストアルバム トップ10

          呪いの考察、考察の呪い〜『THE CURSE/ザ・カース』【ドラマ感想】

          さすがにこれを観て何も書かないわけにはいかないので、書き始めてはみたものの何から書けばいいのか分からない状態ではある。ひとまず概要。『THE CURSE/ザ・カース』というアメリカのドラマで、日本ではU-NEXTで独占配信中。 エマ・ストーンが、カナダのコメディアンであるネイサン・フィールダーと組んで、A24を背負って製作した本作。確かにあらすじの通りのドラマであるが最終話まで見ると全てどうでもよくなる程に奇妙な心地になるはず。どうにかしてこのドラマが描こうとしてるものを掴

          呪いの考察、考察の呪い〜『THE CURSE/ザ・カース』【ドラマ感想】

          2024年6月を振り返る

          今年も上半期終わり。慌ただしい! 今月書いたnoteこれは手前味噌ながら良いディスクレビューになったと思います。ギターの加藤くんにもお褒め頂けました。名盤なので皆様、是非とも! ちびちびと書き進めていたことが最終話を観終わって一気にまとめあがって気持ち良い感想文でした。終盤は最後に気付いて慌てて付け足しましたが。 時間おいてライブレポートを出すという試みをしてみました。 久々に2作品を並列して感想を書くようなのも。時間がなかっただけですが 50音で語ろうシリーズ、4

          2024年6月を振り返る

          2024年6月に更新したポッドキャスト

          今月は『ポップカルチャーは裏切らない』を2本、『海月の人々(((通信)))』を1本更新。 『ポップカルチャーは裏切らない』第116回は7月まではこのオープニングSEで行けることになった、という報告の回です。時間が余ったので、“わざわざ言いにいくこと”について話しました。だんだん1人喋りが文章で伝わりにくいことを語る場になりつつあります。 『ポップカルチャーは裏切らない』第117回は毎年恒例でnoteに書いている上半期ベストの記事から惜しくも漏れてしまった作品について語りま

          2024年6月に更新したポッドキャスト

          2024年上半期ベスト映画 トップ10

          映画館に見に行く本数は減ってしまったけれども、配信などで食らいつくことができたと思う。結論をすぐ出さない、"揺らぎ"のある映画たちを10本。 10位 アメリカン・フィクション 本年のアカデミー賞作品賞ノミネート作。海外の作品を見始めたのはここ数年だけど、“真っ当”なものとして見てきた傑作にもこのコメディが刺そうしている目線があるのでは?と思わせるような毒と説得力があった。戯画化された正しげな配慮の行く末に待つ皮肉と悲哀。お前の視点はどこに?と問われる。 9位 もっと遠く

          2024年上半期ベスト映画 トップ10

          《い》伊坂幸太郎【50音で語る】

          《い》伊坂幸太郎浸りたくなる会話たち あまり本を読まなくなった(それでも今年は結構読んでる)最近ですが、子供の頃はかなりの本好きで夏休みは山ほど本を読める期間と捉えてるくらいには読んでいまして。で、中学生ぐらいの時にこれは!という思いになったのが伊坂幸太郎の「アヒルと鴨のコインロッカー」でした。この映画版に当時ハローバイバイだった関暁夫が出ていて、都市伝説大好き中学生でもあった私は大いに反応し、原作を読もうと思うに至ったのでした。今思い返すと、ヘンすぎる伊坂幸太郎の入口。

          《い》伊坂幸太郎【50音で語る】

          MONO NO AWAREはなぜメシを食うアルバムを作ったのか/『ザ・ビュッフェ』【ディスクレビュー】

          メシを食う。何をするにしても、生命はその行為から逃れられない。根本的には生命維持の役割を持ちながら、五感を充足させる快楽物としての役割も果たす。そんな個人としての本能を満たすものでありつつ、時には食を共にする人との絆を確かめるような役割も果たすし、宴や儀式のようにより大きな存在へ捧げられる役割も果たす。 上の記事に書いたように、種々の表現やスタンスの表明としても食事は機能する。しかし食事はこうしたポジティブな事象だけを連想させるものではない。例えば摂食障害の人は食卓で“食べ

          MONO NO AWAREはなぜメシを食うアルバムを作ったのか/『ザ・ビュッフェ』【ディスクレビュー】

          空白を埋めるもの~『エリック』と『ミッシング』

          大切な人が突然いなくなる、という出来事がトリガーになる作品は古来より多いが、今年は特に顕著な気がしてならない。それは例えば「四月になれば彼女は」のような婚約相手が突如姿を消すものであったり、公開を控える黒沢清の『蛇の道』のような子供を殺されるというものであったりと様々であるが、特に今年において印象的なのが"子供"が“突如姿を消す”作品である。 誰かを恨むこともできぬまま宙ぶらりんにされる感情。また子供という純真の象徴を突如奪われる恐ろしさ。全てを容赦なく奪い去る巨大な戦争の

          空白を埋めるもの~『エリック』と『ミッシング』

          “穴”を前にして語ること/加藤拓也『滅相も無い』

          加藤拓也が脚本・演出を務めたSFドラマ『滅相も無い』は語り甲斐しかない作品だった。「演劇をやれば映像的だ、映画をやれば演劇的だと言われることに嫌気が差し」(参照)、本作ではそのどちらの手法も用いられて作られている。 自分の人生を8人が語り合うBBQの場面は映像作品として見せられるが、それぞれの語りの内容は舞台上で披露する様を見せられる。舞台上には劇伴を演奏するUNCHAINがおり、役柄の決められていない俳優たちが8人の人生の場面を演じて再現していく。ドラマの中に演劇がある構

          “穴”を前にして語ること/加藤拓也『滅相も無い』

          円環的時間を生きる〜2024.03.09 Base Ball Bear『天使だったじゃないか』ツアー@福岡DRUM Be-1

          もう3ヶ月も前のことだが、今こそBase Ball Bear『天使だったじゃないかツアー』の福岡公演を振り返ってみようと思う。基本的にはいかに早く出すかを考えてきたライブレポートであるが、思考を熟成することでより深まった部分もあるし、今回の新作『天使だったじゃないか』の意義を考えることに繋がるような気がしたからだ。 ティーンネイジ・ファンクラブが流れ続ける開場SEが終わり、ライブは幕を開ける。1曲目「ランドリー」からまずもってその出音がこれまでとまるで違うことに驚く。特に小

          円環的時間を生きる〜2024.03.09 Base Ball Bear『天使だったじゃないか』ツアー@福岡DRUM Be-1

          2024年5月を振り返る

          今月書いたnoteディスクレビューを2本。こういうのサラッとした短文が良いのはわかってるんですが、書いてるうちにあれもこれも、となってしまいます。 映画の感想は1本。これはあまり他の人が書いてない観点だと思います。おすすめ! ドラマの感想は1本。観るつもりのなかった作品がとんでもなかったというケース。危うく逃すところだった。 Twitterで小バズりしたツイートから発展させたもの。「真剣に考えるとか言ってメシ食ってるアー写集めてるだけ」とかRT先で言われたのでクソムカつ

          2024年5月を振り返る

          2024年5月に更新したPodcast『ポップカルチャーは裏切らない』

          今月は2本。この2本でオープニングSEが終了することを散々仄めかしましたが7/9まではあのSEで出来そうなので、よろしくお願いします 5月末でSpotify for Podcastersでの録音/編集が終了する事態に際して最近の回で移転などをほのめかしてきましたが、やはりここでPodcast『ポップカルチャーは裏切らない』を続行します、という宣言の回です。あと時間が余ったので、「自由に踊って」問題について喋りました。 別刊 is Back!!! 高校時代の同級生と録音する

          2024年5月に更新したPodcast『ポップカルチャーは裏切らない』