月の人

精神科医/ライター。 ポップカルチャーは裏切らないをモットーに Real Soundでも執筆中→https://realsound.jp/person/about/812327 依頼などありましたら本noteの仕事依頼タブに連絡先あります

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    ”好きなものを好きだと言う"を基本姿勢に、ライブレポート、ディスクレビュー、感想文、コラムなどを書いている、本noteのメインマガジン。

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「ぼっち・ざ・ろっく!」とアジカンが寄り添う自傷的自己愛

臨床場面で向き合う自傷的自己愛精神科外来では様々な病状を抱えた患者と向き合い治療を行う。ストレスの原因となる職場や家庭の環境調整を行い、薬剤を適切に使用することで改善するのが一般的だが、そういった治療だけでは回復に至らない患者も多い。 たとえば過剰に思える程の自己否定を行う患者たち。自分の外見やステータスを卑下したり、社会や家庭環境に不満を述べたりしながら、周囲を困らせる行動を取ったり、時に希死念慮に繋がったりもする。そのような"生き辛さそのもの“を訴える患者はスッキリとし

    • 鏡を覗く、誰かと繋がる/森井勇佑『ルート29』【映画感想】

      森井勇佑監督による長編映画第2作『ルート29』が桁外れに素晴らしかった。綾瀬はるかを主演に迎え、そのバディとして前作『こちらあみ子』で主人公を演じた大沢一菜を引き続き抜擢。その意外性のある組み合わせで紡がれるのは、およそ明快さとは無縁のストレンジな幻想譚だった。 このあらすじで確かに間違いはないのだが、このプロットだけでは到底語り切ることのできないイリュージョンに満ちたシーンだらけの怪作でもある。最初の印象は“劇場版ランジャタイ”。これ以上展開しないでくれ!と思うほど難解な

      • 【文学フリマデビュー】最終批評神話『exp.1』に寄稿しました

        12/1(日)に東京ビッグサイトで開催される文学作品展示即売会・文学フリマ東京39にて頒布予定の評論/批評の同人雑誌『exp.1』に評論文を寄稿することになりました。作家/批評家/編集者の村上裕一さんが主宰する「最終批評神話」のブースにて販売される予定となります。ブースはF-01 (西3・4ホール)で、こちらが会場配置図です。 『exp.1』は今回の文学フリマ東京で初刊行となるテーマフリーの同人誌で、私が寄稿したのは「羊文学と“轟音・女性ボーカルバンド”~閉じて開くためのベ

        • これが若者のすべて/フジファブリック × ASIAN KUNG-FU GENERATION × くるり「ノンフィクション」(2024.11.10)

          フジファブリックのメジャーデビュー20周年を祝うイベントシリーズ、そのラストを目撃するべく大阪城ホールに足を運んだ。「ノンフィクション」と名付けられたこの3マンライブに集ったのはASIAN KUNG-FU GENERATION、くるりという豪華なラインナップ。2組はそのキャリアにおいてフジファブリックと大きく関わっている。 フジファブリックは2010年のフジ富士フジQから2011年『STAR』のリリースまでライブ活動を休止しており、その期間に金澤ダイスケ(Key)はアジカン

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          ダウ90000『旅館じゃないんだからさ』と一緒に聴きたいBase Ball Bearプレイリスト

          ダウ90000 第6回演劇公演「旅館じゃないんだからさ」 を配信で観た。2021年に初演され、ダウの名を一躍世に広めた名作の3年ぶりの再演である。千葉のTSUTAYAを舞台に、様々な恋慕がひしめき合う物語だ。あれから3年経ち、より色濃くなった”レンタルビデオ“への郷愁が記憶をくすぐってくる。 本公演のテーマソングはBase Ball Bearの「夏の細部」。作品との呼応性、劇中での使われ方など両者のファンとしてこれ以上ない贅沢なコラボである。『天使だったじゃないか』のビデオ

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          宇宙を抱える/荻上直子「まる」

          先日、広島県福山市にある「神勝寺 禅と庭のミュージアム」を訪れた。ここには「洸庭」と言う建物がある。まるで舞い降りた宇宙船のような造形で、その厳かな存在感に圧倒された。 この建物の中では、彫刻家・名和晃平によるインスタレーション作品を鑑賞できる。暗闇の中で徐々に浮かび上がる光と波によって、禅の世界を体験するというもの。得難い美しさだった。 すっかり禅への関心が生まれた折、鑑賞した映画「まる」がまさしく禅、それでいてアートを題材した作品で驚いた。荻上直子監督が堂本剛を主演に

          宇宙を抱える/荻上直子「まる」

          2024年10月を振り返る

          下旬はヘヴィな原稿と向き合っていたので、今月は上旬にいっぱい更新。決してさぼったわけではないです!後日、お知らせさせてください。 今月書いたnote 久々にライブレポートをしっかり書いてみた。一点突破と拡大解釈。それぞれに特化した2本。 全然読まれなかったけどスルスル書けた。この目線で『Cloud』語ってるのレアと思います。 本当は書くつもりなかったけど、思わず溢れてきたので。短いですが、弾け飛ぶ種の文章かと。 今まで決めてきた「ベスト女の子ランキング」をまとめる上

          2024年10月を振り返る

          2024年10月にアップしたPodcast『ポップカルチャーは裏切らない』

          今月は2本、合計5本を更新。 第122回はハタショーさんとの恒例企画、「ポップカルチャー定期健診 2024.7-9月」です。過去最長の回となりました。 [回診]クリープハイプ トリビュート [回診]街裏ぴんく&ランジャタイ 🚩米津玄師「がらくた」 🌙米津玄師『LOST CORNER』 🚩「SILK LABO」(女性向けAVレーベル) 🌙宮藤官九郎ドラマ「新宿野戦病院」「終りに見た街」 🚩 "あ"から始まるドラマ「彩香ちゃんは弘子先輩に恋してる」「あの子の子ども」 🌙映画「

          2024年10月にアップしたPodcast『ポップカルチャーは裏切らない』

          《お》乙葉【50音で語る】

          乙葉 最初に好きになった芸能人 男子ってたぶん小学校高学年ぐらいから友達の間で「好きな女性芸能人、誰?」みたいな話題が出てくると思うのですが、私がそれを聞かれてよく答えていたのが乙葉だったと記憶しています。それに次ぐぐらいEvery Little Thingの持田香織の名もしょっちゅう挙げてた気がしますがそれはたぶん中学生ぐらいから。ゆえに、最初に好きになったのは乙葉ということで確定で良いはずです。 乙葉の存在を初めて認識したのは恐らく「笑っていいとも!」ですね。調べて

          《お》乙葉【50音で語る】

          ラブレターズ、愛は光/『キングオブコント2024』

          キングオブコント2024、優勝となったラブレターズのネタは素晴らしかった。バリカンのジュビロサポーターと海釣りナンパ師が浜辺で交差する前衛的かつ混沌とした2本目の決勝ネタも最高だったが、ここで強く語りたいのは1本目。「光」と名付けられたあのネタについてである。 引きこもりの息子を抱える夫婦が、息子のズボンのポケットからどんぐりを見つけるところから始まるこの物語。“外に出ているかもしれない”という可能性が少しずつ2人の心を支え直していく導入。リアルなラインの喜びの発露にグッと

          ラブレターズ、愛は光/『キングオブコント2024』

          1つのサクセスストーリーとしての黒沢清『Cloud』【映画感想】

          黒沢清、今年3本目の新作映画『Cloud』。転売屋の男が知らずに周囲から反感を買い、いつしか恐怖の渦中へと引きずり込まれるという物語で、薄気味悪いサスペンススリラーなのだが、どうにも妙な高揚感が止まらない作品でもあった。 この物語を味わい直してみると、おかしな部分も多々あるのだが極めて王道で、ある種のサクセスストーリーを描いているように思えた。暴力と恐怖の連鎖による精神の成長譚という切り口で、ユング心理学を用いつつ本作を掘り下げてみたい。 劣等感コンプレックスの闘争主人公

          1つのサクセスストーリーとしての黒沢清『Cloud』【映画感想】

          箱庭の正しさについて/9.21 UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2024『20th BEST MACHINE』@福岡サンパレス

          ユニゾン結成20周年を記念する、7月リリースのベストアルバムを引っ提げたツアーの福岡公演に行った。事前にシングル曲をメインとしたセットリストになることがインタビューで予告されており、普段のように過去のアルバムからも満遍なく選曲するツアーになることは明白であった。ベストアルバムの収録は20曲以上、普通に全てやればワンマンの尺は足りてしまう。ある意味、これまでで最も何を演奏するかを想像しやすいツアーであった。 しかし始まってしまえば想像は容易く裏切られる。やるとは思っていた曲を

          箱庭の正しさについて/9.21 UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2024『20th BEST MACHINE』@福岡サンパレス

          ベールなどなかった/9.20 羊文学 TOUR2024「"soft soul, prickly eyes"」@ Zepp Fukuoka

          羊文学、1年ぶりのワンマンツアー。去年は参加できなかったので福岡でワンマンを観るのはこれが初めてとなる。いちおうアルバム『12 hugs(like butterflies) 』が出てからは初の全国ツアーだが冒頭3曲が「金色」「電波の街」「風になれ」と続き、アルバムとは無関係なことをそれとなく示す。既にリリースから9ヶ月が経過しているゆえ今回はフラットに、今歌いたい曲が選ばれているように思えた(「GO!!」が無かったことには驚いたが。) 。 そして印象的なのはステージの前面に

          ベールなどなかった/9.20 羊文学 TOUR2024「"soft soul, prickly eyes"」@ Zepp Fukuoka

          2024年9月を振り返る

          今月書いたnote 本作のことはよく考えました。同業者が精神科的見地から"考察"しててゾッとしたので、絶対にそのアプローチでは書かんぞと思いながら書きました。 今年のクドカンのドラマの感想を書くときはどうしても自分の話をし過ぎてしまいますね。「終りに見た街」も凄かった。総括的なものも書きたいです 久しぶりにフェスのレポートなんかを書いてみました。さようなら、と書きつつ、絶対に復活を諦めてないぞという気持ちでずっといます。 とらつば最終話の日に書いたので遅日記ではないけ

          2024年9月を振り返る

          2024年9月にアップしたPodcast『ポップカルチャーは裏切らない』『海月の人々(((通信)))』

          今月は山盛り更新! 夫婦ポッドキャスト『海月の人々(((通信)))』第32回は前半に野木亜紀子脚本の映画「ラストマイル」を、後半に松尾スズキ作演出の演劇」「ふくすけ2024-歌舞伎町黙示録-」の話をしました。どちらも阿部サダヲの出演作、そして"欲望"を扱っている作品ということで妙に呼応した2作品でした。 『海月の人々(((通信)))』第33回は本日千秋楽を迎えたシソンヌライブ[treize]の感想回。初めてのシソンヌ単独ライブへの参加しが喜びとその内容を大いに語りつつ、後

          2024年9月にアップしたPodcast『ポップカルチャーは裏切らない』『海月の人々(((通信)))』

          「虎に翼」とオープニング食いつきベビのこと

          「虎に翼」が終わった。個人的に2013年「あまちゃん」以来の朝ドラ完走。「あまちゃん」が新たな層に朝ドラの存在を訴求した作品だとするならば、「虎に翼」は別角度から朝ドラの在り方を照らし直す強烈な1作だった。 伊藤沙莉を始めとするコメディ巧者たちによる軽妙な会話劇、生活へと持ち帰りたい重厚なメッセージなど様々に受け取ったものはあるが1つ大きなものとしてオープニング映像の素晴らしさがある。米津玄師が歌う主題歌「さよーならまたいつか!」が一体となったOPが流れ出す時、我が家のベビ

          「虎に翼」とオープニング食いつきベビのこと