月の人

精神科医/ライター。 ポップカルチャーは裏切らないをモットーに Real Soun…

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精神科医/ライター。 ポップカルチャーは裏切らないをモットーに Real Soundでも執筆中→https://realsound.jp/person/about/812327 依頼などありましたら本noteの仕事依頼タブに連絡先あります

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  • ポップカルチャーは裏切らない

    ”好きなものを好きだと言う"を基本姿勢に、ライブレポート、ディスクレビュー、感想文、コラムなどを書いている、本noteのメインマガジン。

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    毎週火曜に更新予定のポッドキャスト。暇つぶしにだらだらと好きなカルチャーについて喋っています。

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記事一覧

固定された記事

「ぼっち・ざ・ろっく!」とアジカンが寄り添う自傷的自己愛

臨床場面で向き合う自傷的自己愛精神科外来では様々な病状を抱えた患者と向き合い治療を行う。ストレスの原因となる職場や家庭の環境調整を行い、薬剤を適切に使用すること…

月の人
1年前
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境界で踊る〜橋本絵莉子『街よ街よ』【ディスクレビュー】

橋本絵莉子の2ndアルバム『街よ街よ』に感動しきっている。前作『日記を燃やして』では柔らかなアレンジはアコースティックギターの音色も印象的だったが、本作はずっしり…

月の人
1日前
5

2024年4月を振り返る

新年度。育休明けの仕事にヘロヘロになる日もありますが、色々書きました。 今月書いたnote映画の感想を2本。どちらも今観ておいて良かったと思う作品。 そしてドラマが…

月の人
2日前
4

2024年4月のPodcast『ポップカルチャーは裏切らない』

今月は2回、合計4本の更新。 まずはハタショーさんとの定例企画「ポップカルチャー定期健診」。今回は2024年1-3月までの昨日の中から気に入ったものを3本ずつ、そして今あ…

月の人
3日前
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また甘えられる世界へ〜『異人たち』と『異人たちとの夏』

山田太一の小説『異人たちとの夏』を原作とし、アンドリュー・ヘイ監督がアンドリュー・スコットを主演に迎えて映画化した『異人たち』。孤独に生きる脚本家の男がふと幼少…

月の人
6日前
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《あ》ASIAN KUNG-FU GENERATION 【50音で語る】

せめて週に1度はなんらかのnoteを更新したい、しかしライフステージも変わり毎週新作の何かを摂取できるわけじゃない。ということでその代わりになる、長くできそうな企画…

月の人
10日前
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アニメ『ボボボーボ・ボーボボ』をちゃんと考えてみる②(25話-51話)

前回1-24話にあたる感想を書いた。アニメ『ボボボーボ・ボーボボ』の初期の作風、そして一貫して存在する笑いの概要についてはひと通り網羅できたつもりである。今回の記事…

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2週間前
3

皮膚との対話/『寄生獣ーザ・グレイー』【ドラマ感想】

岩明均原作による漫画『寄生獣』を韓国で実写化されたNetflix『寄生獣ーザ・グレイー』。人の脳を奪って寄生する地球外生命体と人類の戦いという漫画の基本要素は引き継ぎ…

月の人
2週間前
6

Netflix「三体」シーズン1が残してくれた関心について【ドラマの感想】

Netflixで3/21より配信開始となったドラマ「三体」が異次元の面白さであった。元々原作小説の時点で興味はあったが、ドラマ化が決まり、ならばそちらをと思い先延ばしにし…

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3週間前
19

分裂し続けるもの/クリストファー・ノーラン『オッペンハイマー』【映画感想】

クリストファー・ノーランの12作目の長編映画『オッペンハイマー』を観た。原子爆弾の開発の中心人物であるオッペンハイマー博士を描いた本作。映画2~3本分とも言えるほど…

月の人
3週間前
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歌い踊り揺れる/宮藤官九郎『不適切にもほどがある!』【ドラマの感想】

宮藤官九郎脚本によるTBS金曜22時ドラマ最新作『不適切にもほどがある!』が完結した。”好きなものを好きと言う“が基本姿勢でありながらもここ数年は総合点を重視した嗜…

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1か月前
10

2024年3月を振り返る

育休の隙間を縫ってあれこれ書きました。 今月書いた記事ベボベのレビューはかなり力が入った。人生と音楽って重なるもんですね。 読書、続いてます。森見登美彦は作風の…

月の人
1か月前
5

2024年3月のポッドキャスト『海月の人々(((通信)))』

久々の更新となる夫婦ポッドキャスト「海月の人々(((通信)))」第30回は新メンバー・ベビの人の加入記念にお互いの人生に影響を与えた100のコンテンツを語りました。 前編…

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1か月前
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断念から始まる世界/森見登美彦「シャーロック・ホームズの凱旋」【本の感想】

1月に刊行された森見登美彦4年ぶりの新刊「シャーロック・ホームズの凱旋」。本作はヴィクトリア朝京都なる世界を舞台に、名探偵シャーロック・ホームズや助手のワトソン君…

月の人
1か月前
10

アニメ『ボボボーボ・ボーボボ』をちゃんと考えてみる①(1~24話)

30歳を迎え、子供が生まれ、取るべき資格試験を一応全て終え、人生が一区切りついたように思うこの折。こういう時こそ、自分のルーツに向き合おうと思い今年からNetflixで…

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1か月前
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そのリズムに転がされ【遅日記】

3-4時間おきにミルクを作り、我が子に飲んでもらうというルーティーンが日常に加わって幾ヶ月か経つ。3月から育児休暇を取ってからはさらにそのリズムと併走して生きている…

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1か月前
6
固定された記事

「ぼっち・ざ・ろっく!」とアジカンが寄り添う自傷的自己愛

臨床場面で向き合う自傷的自己愛精神科外来では様々な病状を抱えた患者と向き合い治療を行う。ストレスの原因となる職場や家庭の環境調整を行い、薬剤を適切に使用することで改善するのが一般的だが、そういった治療だけでは回復に至らない患者も多い。 たとえば過剰に思える程の自己否定を行う患者たち。自分の外見やステータスを卑下したり、社会や家庭環境に不満を述べたりしながら、周囲を困らせる行動を取ったり、時に希死念慮に繋がったりもする。そのような"生き辛さそのもの“を訴える患者はスッキリとし

境界で踊る〜橋本絵莉子『街よ街よ』【ディスクレビュー】

橋本絵莉子の2ndアルバム『街よ街よ』に感動しきっている。前作『日記を燃やして』では柔らかなアレンジはアコースティックギターの音色も印象的だったが、本作はずっしりとしたグルーヴを活かしたロックバンドらしさ溢れる1作。ライブでの経験値が制作にも反映された好例だろう。 40歳を迎えた橋本が自身の年齢を「若くもないけど老いてもいない、この感じがちょうど踊り場っぽいなって。(中略)ただスッと過ぎていくだけ、次の階に向かうための通り道にすぎないっていうか。」と上記インタビューで語る。

2024年4月を振り返る

新年度。育休明けの仕事にヘロヘロになる日もありますが、色々書きました。 今月書いたnote映画の感想を2本。どちらも今観ておいて良かったと思う作品。 そしてドラマがとにかく面白い春。どうなってるんですか。嬉しい。 始めたからにはやり遂げる。ボーボボ論考その②。 そして今月からの新企画。不定期に、新作を最近観れてナイヨ~、語るものがナイヨ~っていう時に現れます。皆様へ送りたい念も最後に書いてます。 今月の寄稿記事余談ですが今回の米津玄師の記事は、私がReal Soun

2024年4月のPodcast『ポップカルチャーは裏切らない』

今月は2回、合計4本の更新。 まずはハタショーさんとの定例企画「ポップカルチャー定期健診」。今回は2024年1-3月までの昨日の中から気に入ったものを3本ずつ、そして今あえて観ている過去作1本ずつ紹介。 以下、トークトピックス。 ハタショーさん→🚩 月の人→🌙 【前編】 街裏ぴんく ランジャタイのがんばれ!地上波 王様戦隊キングオージャー 🚩『ユニコーンオーバーロード』(ゲーム) こまばアゴラ劇場 🌙Base Ball Bear『天使だったじゃないか』(音楽) フジフ

また甘えられる世界へ〜『異人たち』と『異人たちとの夏』

山田太一の小説『異人たちとの夏』を原作とし、アンドリュー・ヘイ監督がアンドリュー・スコットを主演に迎えて映画化した『異人たち』。孤独に生きる脚本家の男がふと幼少期の住んでいた家を訪れると、そこには30年前に亡くなった両親がその時のまま生活しており、かつてのような親子としての交流を行う、というあらすじだ。 このあらすじは大林宣彦監督、風間杜夫主演による1988年の日本映画版にも共通している。今回の英国版で異なるのは主人公がゲイであること、彼とタワーマンションの中で交流を持つ人

《あ》ASIAN KUNG-FU GENERATION 【50音で語る】

せめて週に1度はなんらかのnoteを更新したい、しかしライフステージも変わり毎週新作の何かを摂取できるわけじゃない。ということでその代わりになる、長くできそうな企画をと思ってまるで古のインターネットかのようなテーマでnoteを書いていこうと思います。 【50音で語る】ということで"あ"から"ん"まで、その頭文字から始まる自分の好きなものやことについて書いていきます。基本的には自分の根源や血肉に近いような、高校生ぐらいまでに摂取したものについてスラスラ語っていこうと思います。

アニメ『ボボボーボ・ボーボボ』をちゃんと考えてみる②(25話-51話)

前回1-24話にあたる感想を書いた。アニメ『ボボボーボ・ボーボボ』の初期の作風、そして一貫して存在する笑いの概要についてはひと通り網羅できたつもりである。今回の記事はアニメの中盤戦にあたる25-51話についてを書こうと思う。 ところで、驚くようなニュースが飛び込んできた。ボーボボの舞台化が決定したのである。このやはり今年はボーボボと向き合うべき年だと確信したので、意気揚々とこの記事も書き進めたいと思う。異形のY2Kとしてのボーボボ考である。 シチュエーション大喜利の台頭2

皮膚との対話/『寄生獣ーザ・グレイー』【ドラマ感想】

岩明均原作による漫画『寄生獣』を韓国で実写化されたNetflix『寄生獣ーザ・グレイー』。人の脳を奪って寄生する地球外生命体と人類の戦いという漫画の基本要素は引き継ぎつつも、寄生生物が韓国に飛来したという設定で繰り広げられる実質の完全新作。青年漫画らしい薄暗くもエモーショナルな作品性を見事に汲み取り、さらにスピーディな展開や血生臭さを付与し、激しく良い"動き"で魅せる良質で見ごたえあるドラマ版だ。 原作では主人公・泉新一とその右手に寄生したミギーの相棒的な関係性が全面に出さ

Netflix「三体」シーズン1が残してくれた関心について【ドラマの感想】

Netflixで3/21より配信開始となったドラマ「三体」が異次元の面白さであった。元々原作小説の時点で興味はあったが、ドラマ化が決まり、ならばそちらをと思い先延ばしにしておいたのが功を奏してか、全ての展開に驚嘆しっぱなしである。 宇宙スケールのSF作品であり、得体の知れない概念をドカンと突きつけてくる一方、オックスフォードの同級生5人が知力を結集して好戦的な爺さんの下で大義を果たすお仕事ドラマらしい熱量もある。この贅沢な盛り合わせは実に魅惑的だ。 ここでは本作に散りばめ

分裂し続けるもの/クリストファー・ノーラン『オッペンハイマー』【映画感想】

クリストファー・ノーランの12作目の長編映画『オッペンハイマー』を観た。原子爆弾の開発の中心人物であるオッペンハイマー博士を描いた本作。映画2~3本分とも言えるほどの膨大な情報量に圧倒されながら、まさにこれが劇場で観る映画体験であると強烈な実感を覚えた。 時代の異なる3つの物語を並走させる、ノーランらしい時間のコントロール演出で伝記モノである以上の語り口を提示する本作。この映画について、オッペンハイマー自身の“分裂”、そしてもたらされた最悪の結末を幼少期より教え込まれてきた

歌い踊り揺れる/宮藤官九郎『不適切にもほどがある!』【ドラマの感想】

宮藤官九郎脚本によるTBS金曜22時ドラマ最新作『不適切にもほどがある!』が完結した。”好きなものを好きと言う“が基本姿勢でありながらもここ数年は総合点を重視した嗜好になっていたが、本作に関しては部分点が突き抜けすぎて自分にとってかなり好きなドラマになってしまった。 確かに雑な描写は多々あるし、正直サカエ(吉田羊)は最後までどう捉えれば良いか難しかった。しかしそれだけで見限ることは私には出来ない。今の私に必要な"揺さぶり"をくれる作品に思えたからだ。ゆえにこの記事では個人的

2024年3月を振り返る

育休の隙間を縫ってあれこれ書きました。 今月書いた記事ベボベのレビューはかなり力が入った。人生と音楽って重なるもんですね。 読書、続いてます。森見登美彦は作風の地続き感がアーティストぽくて感想が書きやすい。 街裏ぴんくさん、おめでとうございます。お笑いをどう語るか、はまだまだ模索中。 自分のルーツと向き合うことも今年はしっかりやっていこうと思います。ボーボボ論考は全3回を予定。 ずっと書きそびれていたジブリパークの記録を、オスカー記念に。 遅日記は月イチペースかな

2024年3月のポッドキャスト『海月の人々(((通信)))』

久々の更新となる夫婦ポッドキャスト「海月の人々(((通信)))」第30回は新メンバー・ベビの人の加入記念にお互いの人生に影響を与えた100のコンテンツを語りました。 前編は月の人。 後編はなまずのおばけ。 それぞれの100コンテンツは以下の通り。 月の人 《音楽》 ORANGE RANGE BUMP OF CHICKEN ASIAN KUNG-FU GENERATION Base Ball Bear フジファブリック チャットモンチー くるり the pillows

断念から始まる世界/森見登美彦「シャーロック・ホームズの凱旋」【本の感想】

1月に刊行された森見登美彦4年ぶりの新刊「シャーロック・ホームズの凱旋」。本作はヴィクトリア朝京都なる世界を舞台に、名探偵シャーロック・ホームズや助手のワトソン君をはじめ、シャーロックシリーズでお馴染みのキャラクターが登場する二次創作シャーロック作品でもある。 京都の建築や地名がひしめき、登場人物のパーソナリティも少しずつ異なる“京都リミックス”が施された本作。おまけにシャーロックがスランプで謎を解きたがらずウダウダ生活しているというのが主軸で、京都×オフビートコメディとい

アニメ『ボボボーボ・ボーボボ』をちゃんと考えてみる①(1~24話)

30歳を迎え、子供が生まれ、取るべき資格試験を一応全て終え、人生が一区切りついたように思うこの折。こういう時こそ、自分のルーツに向き合おうと思い今年からNetflixで配信開始となった『ボボボーボ・ボーボボ』を観直してみたのだが、あまりにも私のポップカルチャー体験の原点すぎて感動すらしてしまった。超越、突飛、不条理。好きな表象表現の全てがあったのだ。 『ボボボーボ・ボーボボ』は澤井啓夫・作で2001年~2007年まで「週刊少年ジャンプ」で連載されていた漫画で、アニメ版は20

そのリズムに転がされ【遅日記】

3-4時間おきにミルクを作り、我が子に飲んでもらうというルーティーンが日常に加わって幾ヶ月か経つ。3月から育児休暇を取ってからはさらにそのリズムと併走して生きている。ミルクを与え、眠りこけることもあれば、泣いてオムツを変えることもある。吐き戻したり、しゃっくりで落ち着かなかったり。様々なパターンがある。 我が子が穏やかなタイミングを見てあれこれと用事を済ませたり、穏やかじゃない時も断腸の思いで用事を済ませたりする。生活のタイムトライアルをしてるみたいで、非常にゲーム性が高い