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精神科医/ライター。 ポップカルチャーは裏切らないをモットーに Real Soun…

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精神科医/ライター。 ポップカルチャーは裏切らないをモットーに Real Soundでも執筆中→https://realsound.jp/person/about/812327 依頼などありましたら本noteの仕事依頼タブに連絡先あります

マガジン

  • ポップカルチャーは裏切らない

    ”好きなものを好きだと言う"を基本姿勢に、ライブレポート、ディスクレビュー、感想文、コラムなどを書いている、本noteのメインマガジン。

  • メンタルヘルスとポップカルチャー

    一端の若手精神科医が日々の診療で感じていること、そこから連想したポップカルチャーの話をまじえながら書き残していく文章のシリーズです。

  • 映画の感想

  • ドラマの感想

  • ライブレポート

記事一覧

病名のつかない苦しさ/『ナミビアの砂漠』【映画感想】

山中瑶子監督による映画『ナミビアの砂漠』が素晴らしかった。2人の男性を翻弄する魅力的で危うい女性の話、などと簡単に説明することは憚れる。この作品はまだ映画として…

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1日前
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医療でドラマを描くということ/宮藤官九郎「新宿野戦病院」

宮藤官九郎、今年3本目の連続ドラマ「新宿野戦病院」。新宿・歌舞伎町に立つ聖まごころ病院を舞台に、美容整形外科医の高峰亨(仲野太賀)、アメリカ帰りの元軍医ヨウコ・ニ…

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7日前
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さようならSunset Live

30年以上の歴史を持ち、福岡の地に根付いてきた糸島が誇るフェスSunset Live。しかし今年でファイナルということで、初日のみだけどお別れを言うべく参加してきた。サーフ…

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11日前
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2024年8月を振り返る

かなり暑かった日々。胃腸をやられて終わった瞬間もありましたが、なんとか持ち直しました。 今月書いたnoteみんなほどアンナチュラルもMIUもめちゃ好きってわけではない…

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2週間前
6

2024年8月に更新したPodcast『ポップカルチャーは裏切らない』

今月は2本。アジカン月間でした。 第119回はnoteでは何度も仄めかしている、春先から手をつけ始めた「アジカン精神分析的レビュー集」というアルバム評論ZINEの制作報告で…

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2週間前
4

働くことと愛すること/『ラストマイル』【映画感想】

脚本・野木亜紀子、プロデュース・新井順子、監督・塚原あゆ子による映画作品。この座組で制作されたドラマ『アンナチュラル』『MIU404』と同じ世界で繰り広げられる“シェ…

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3週間前
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だとしたらどう生きるか/松尾スズキ『ふくすけ2024ー歌舞伎町黙示録ー』

松尾スズキが1991年に書いた演劇作品の4度目の再演。台本ごと書き直しての上演は初演以来初めてのこと。東京、京都、福岡と回るツアーの福岡公演初日・キャナルシティ劇場…

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3週間前
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労働し空想する/米津玄師『LOST CORNER』【ディスクレビュー】

米津玄師が4年ぶりにリリースした6thアルバム『LOST CORNER』が凄まじかった。その多くがタイアップ付きであり大きく世に知れた既発曲12曲とせめぎ合うような新曲8曲によっ…

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4週間前
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《え》エターナル・サンシャイン【50音で語る】

エターナル・サンシャイン 音楽から映画を知ること 数年前までスターウォーズとハリー・ポッター以外の洋画を一切観ない人生でした。洋画は字幕か吹替で観るしかなく、そ…

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1か月前
13

この1年でよく読まれた記事ベスト10【note6周年】

2018年から書き始めて6年が経ちました。900記事くらい書いてるようです。毎年恒例の年間アクセス数ランキング。この1年で書いた記事で上位10本を載せてみようと思います。 …

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1か月前
13

デカいカエルと異界への導き/『化け猫あんずちゃん』『めくらやなぎと眠る女』

デカいカエルが出てくる映画を2本、立て続けに観た。1本は「化け猫あんずちゃん」。いましろたかしの漫画を原作とし、山下敦弘と久野遥子が共同で監督を務めた。寺の和尚に…

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1か月前
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2024年の遥か彼方/ASIAN KUNG-FU GENERATION『Single Collection』

ASIAN KUNG-FU GENERATIONがメジャーデビュー20周年を1年遅れで祝うシングルコレクションをリリースした。最新シングル「宿縁」から1stシングル「未来の破片」まで、現在か…

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1か月前
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2024年7月を振り返る

7月はちょっとサボり気味でしたが、たまにはこれくらいの月があってもいいことにします。 今月書いたnoteユニゾンのベスト盤の感想。ずっと掴み損ねていたユニゾンの在り…

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1か月前
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2024年7月に更新したPodcast『ポップカルチャーは裏切らない』

今月は2回、計4本を更新。スペースの音声を流し込む形に完全に切り替わりました。 第118回はTwitter/noteで交流のあるカルチャー愛好家・ハタショー(@hatasyo5)さんとと…

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1か月前
5

すべてはロマンのために/UNISON SQUARE GARDEN『SUB MACHINE, BEST MACHINE』

UNISON SQUARE GARDENが結成20周年を記念してキャリア史上初のベストアルバム『SUB MACHINE, BEST MACHINE』をリリースした。10周年はアルバム曲からのセレクト、15周年はB…

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1か月前
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《う》Wikipedia【50音で語る】

Wikipedia 情報だけを流し込んでいた日々 Wikipediaをとにかく見続けていた時期があります。中学1、2年頃。週末になるたびに1日2、3時間はずっとWikipediaを見ている時期…

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1か月前
7

病名のつかない苦しさ/『ナミビアの砂漠』【映画感想】

山中瑶子監督による映画『ナミビアの砂漠』が素晴らしかった。2人の男性を翻弄する魅力的で危うい女性の話、などと簡単に説明することは憚れる。この作品はまだ映画として表現されたことのない感覚を、主演である河合優実の爆発的な身体性を通して掴み取ろうとするような作品と言えるからだ。圧倒的な作家性と、圧倒的な役者の力が交差した衝動的で奇跡的な1本だ。 本作の素晴らしさは様々な作品で掻き回し役として消費されてきた、“メンヘラ”と呼称されるような人物を眼差し、分かりはできずとも共に在ろうと

医療でドラマを描くということ/宮藤官九郎「新宿野戦病院」

宮藤官九郎、今年3本目の連続ドラマ「新宿野戦病院」。新宿・歌舞伎町に立つ聖まごころ病院を舞台に、美容整形外科医の高峰亨(仲野太賀)、アメリカ帰りの元軍医ヨウコ・ニシ・フリーマン(小池栄子)ら医者たちと、スタッフ、そして患者たちの関わり合いを描く作品である。もちろんコメディだ。 私はエンタメ作品において、医療モノというジャンルを苦手としている。ドラマの展開として“患者が助かる”か“患者が助からない”しか見どころがないという偏見が強かったからだ。大好きな宮藤官九郎だが今回は医療

さようならSunset Live

30年以上の歴史を持ち、福岡の地に根付いてきた糸島が誇るフェスSunset Live。しかし今年でファイナルということで、初日のみだけどお別れを言うべく参加してきた。サーフカルチャーにもヒッピーカルチャーにも縁遠い私だけど、良い音楽の前でそんな防衛本能は関係なくなってしまうわけで。 私は2018年に初参加しすっかり虜になり、2019年は2日通し(Day1,Day2)で参加。コロナ禍を経て、久々の参加となったのだけどその魅力は全く変わらず、さらにファイナルということもあってか

2024年8月を振り返る

かなり暑かった日々。胃腸をやられて終わった瞬間もありましたが、なんとか持ち直しました。 今月書いたnoteみんなほどアンナチュラルもMIUもめちゃ好きってわけではないのでスルーしかけてたのですがとんでもない傑作でひっくり返りました。フロイトの言葉を胸に。 デカいカエルがどっちの映画にも出てるー!という一点突破で書いたnote。なんか昔書いてた感じの文章を思い出す強引さがあって個人的には大好き。 20曲全部に触れながら書けるとは自分でも思っていなかった。何としてでも解釈し

2024年8月に更新したPodcast『ポップカルチャーは裏切らない』

今月は2本。アジカン月間でした。 第119回はnoteでは何度も仄めかしている、春先から手をつけ始めた「アジカン精神分析的レビュー集」というアルバム評論ZINEの制作報告です。 第120回は2日間に渡って配信で観たアジカンのアニバーサリーライブ「ファン感謝祭」についての感想語りまくりスペースです。前半は初日終わってすぐ、後半は2日目の翌日に録音したものです。 前半にはゲストとして前半は高三七区さん、後半は2日目の翌日におゆピヨザウルスグレイテストさんにゲストで来て頂きま

働くことと愛すること/『ラストマイル』【映画感想】

脚本・野木亜紀子、プロデュース・新井順子、監督・塚原あゆ子による映画作品。この座組で制作されたドラマ『アンナチュラル』『MIU404』と同じ世界で繰り広げられる“シェアード・ユニバース・ムービー”と銘打たれた作品である。 結論から言えば、アベンジャーズのようなアッセンブル感はなくその点についてはやや肩透かしではあったのだが、敢えて分業化して事件を紐解くというお祭り感を抑えた工程が物語への集中度を高めていたように思う。むしろシェアード・ユニバースというキャッチーな惹きを用いて

だとしたらどう生きるか/松尾スズキ『ふくすけ2024ー歌舞伎町黙示録ー』

松尾スズキが1991年に書いた演劇作品の4度目の再演。台本ごと書き直しての上演は初演以来初めてのこと。東京、京都、福岡と回るツアーの福岡公演初日・キャナルシティ劇場で観劇した。 十数年前にその存在を知って以来、ずっと観る機会を望んでいた作品の念願の鑑賞。そしてそれは想像を遥かに超える演劇体験だった。その衝撃をどうにか言語化したく思い、文章を書いてみる。 欲望のための存在様々な要素が複合的に絡み合う本作だが、根幹を成すのは人間が抱える底なしの欲望である。それが何のためにある

労働し空想する/米津玄師『LOST CORNER』【ディスクレビュー】

米津玄師が4年ぶりにリリースした6thアルバム『LOST CORNER』が凄まじかった。その多くがタイアップ付きであり大きく世に知れた既発曲12曲とせめぎ合うような新曲8曲によって構成された全20曲の大ボリューム作だ。聴くまでは新鮮味という観点では軽く考えていたのだが、結論から言えば72分間、圧倒されっぱなしだった。 既発曲を美しく繋ぎつつ、新曲たちも負けじとギラギラ輝く。“サブスク時代のアルバム云々”という議論を無に帰してしまうのが本作の威力だ。外部からオーダーされた曲は

《え》エターナル・サンシャイン【50音で語る】

エターナル・サンシャイン 音楽から映画を知ること 数年前までスターウォーズとハリー・ポッター以外の洋画を一切観ない人生でした。洋画は字幕か吹替で観るしかなく、そこで発せられる言語をそのまま理解できないのが嫌、というのを洋画を拒む理由にしてきましたが実際のところは”洋画こそ最高でしょ“みたいなネットやら周囲やらの圧に反抗してた部分が大きかったんだと思います。 人の趣味嗜好ってそんな容易には変わらないし変えてたまるかと思ってる節があるので、人からオススメされてもそんなに響き

この1年でよく読まれた記事ベスト10【note6周年】

2018年から書き始めて6年が経ちました。900記事くらい書いてるようです。毎年恒例の年間アクセス数ランキング。この1年で書いた記事で上位10本を載せてみようと思います。 10位 アジカン精神分析的レビュー『マジックディスク』/語り直しと混ざり合い(2023.8.18) 去年、勤しんでいたアジカン精神分析レビューの1本。だんだん書き方が掴めてきた頃。現在、これらの記事を基にレビューZINEを制作中です。 9位 M-1グランプリ2023 1回戦に出てみた感想(2023.9

デカいカエルと異界への導き/『化け猫あんずちゃん』『めくらやなぎと眠る女』

デカいカエルが出てくる映画を2本、立て続けに観た。1本は「化け猫あんずちゃん」。いましろたかしの漫画を原作とし、山下敦弘と久野遥子が共同で監督を務めた。寺の和尚に拾われ大切に育てられるうちに化け猫になっていた37歳のあんずちゃん(森山未來)が、寺の孫娘で親子関係に難のあるかりん(五藤希愛)と過ごした夏を描く作品。 もう1本は「めくらやなぎと眠る女」。音楽家でアニメ作家のピエール・フォルデス監督による、村上春樹の短編6作を組み合わせた仏映画。東日本大震災後に妻が家出をした小村

2024年の遥か彼方/ASIAN KUNG-FU GENERATION『Single Collection』

ASIAN KUNG-FU GENERATIONがメジャーデビュー20周年を1年遅れで祝うシングルコレクションをリリースした。最新シングル「宿縁」から1stシングル「未来の破片」まで、現在から過去へと遡るような形で全33曲が収録されている。 本作のDisc1の1曲目を飾るのはメジャーデビューミニアルバム『崩壊アンプリファー』の1曲目であり、代表曲の1つ「遥か彼方」の再録テイクである。現時点で最新の音源であり、楽曲として最古の楽曲。シングルコレクションのコンセプトにもそぐう抜

2024年7月を振り返る

7月はちょっとサボり気味でしたが、たまにはこれくらいの月があってもいいことにします。 今月書いたnoteユニゾンのベスト盤の感想。ずっと掴み損ねていたユニゾンの在り方についてしっかり言語化できたと思います。 上半期ベストドラマの感想。観たら読んでください。てか観てくださいマジで。すごいですよ。 恒例の年間ベスト記事。しっかり書きました。 久々の遅日記。 ヘンな話を書きました。 今月の寄稿記事山口一郎の記事は精神科医/ライターのバランスを考えまくって書きました。

2024年7月に更新したPodcast『ポップカルチャーは裏切らない』

今月は2回、計4本を更新。スペースの音声を流し込む形に完全に切り替わりました。 第118回はTwitter/noteで交流のあるカルチャー愛好家・ハタショー(@hatasyo5)さんとともに、2024年の4~6月までのポップカルチャー作品の中で良かったものを3つずつ、そして今あえて観ている過去作について語りました。 主なトークトピックスは以下の通り。。(ハタショーさん→🚩、月の人→🌙) 五代目 も〜っと!なめられ太郎 松屋「チミチュリソースハンバーグ定食」 🚩NHKド

すべてはロマンのために/UNISON SQUARE GARDEN『SUB MACHINE, BEST MACHINE』

UNISON SQUARE GARDENが結成20周年を記念してキャリア史上初のベストアルバム『SUB MACHINE, BEST MACHINE』をリリースした。10周年はアルバム曲からのセレクト、15周年はB面集と様々な形でアニバーサリーを祝ってきた彼らだが20周年にして遂に正面突破のシングルコレクションである。 しかしそれはDisc2、Disc3の内容。Disc1は未発表曲たち(サブスク配信なし)に新曲「アナザーワールドエンド」を加えたレアトラック集だ。この1枚を加え

《う》Wikipedia【50音で語る】

Wikipedia 情報だけを流し込んでいた日々 Wikipediaをとにかく見続けていた時期があります。中学1、2年頃。週末になるたびに1日2、3時間はずっとWikipediaを見ている時期がありました。ページからページへ数珠繋ぎのようにジャンプしていき、最終的にここからここまで来たのかぁと感慨に耽る遊びをしていました。友達いなさすぎ。情報だけが友達だったと言えるでしょう。 この習慣によって昔のバンドのシングルのリリース順や売り上げランキング、昔のドラマの時間帯ごとの