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言葉を編んでいく感覚

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以前まで『言葉を手にしていく感覚』というブログを書いていました。 http://ryohsblogtakk.blogspot.jp/ それを引き継ぐ形で、今後はこちらに私的な文… もっと読む
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#エッセイ

努力の宛先

努力の宛先

アフリカでポーカー生活もいよいよ3年目に入ってもうかれこれ3年近く、ケニア・ナイロビをベースに、ダラダラとポーカーで生活費を稼ぎながら、読書をして暮らしている。

ポーカーは趣味として最適な道具であるものの、その活動を生活に基軸に据えると、無視しがたい精神的な矛盾を来たすのもまた事実である。

ポーカーは、テーブル上のプレイヤー間で行われる金のゼロサムゲーム的な奪い合いである。それ以上でも以下でも

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【予告】有料マガジン『世界を相対化する技術』を始めます

【予告】有料マガジン『世界を相対化する技術』を始めます

今日から日記を書き始めます。毎日書きます。

初回の配信は来週の今日【4月11日】を予定しております。

月に4回(それぞれ一週間分の日記を溜めたもの)を公開する月刊マガジン『世界を相対化する技術』です。

マガジン名は昨年末に公開した6.5万字からなる長大なnoteのタイトルを踏襲しようと思います。

このnoteでは、ぼくの生誕から、ケニアに至る現在までを、私小説のようにアメリカやアイスランド

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“速読”よりも大切なこと

“速読”よりも大切なこと

読書は「こなすもの」ではなく「味わうもの」なぜだか、インスタ経由で「読書」に関する質問を寄せられることが多い。

まず、多いのが「なんでそんなに速くたくさんの本を読めるんですか?」というもの。

まあ、まずぼくがケニアでネオニート的な暮らしをしているので、読書に充てられる絶対量が多いのは間違いなくあるだろう。

一方で、強く思うのは「そもそも、本を速く読む必要なんてあるんだっけ」ということだ。

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なぜか焼肉系のYouTubeチャンネルにどハマりしている件

なぜか焼肉系のYouTubeチャンネルにどハマりしている件

岡田斗司夫さんが予測する2028年の世界像岡田斗司夫さんの『ユーチューバーが消滅する未来 2028年の世界を見抜く』を読んだ。

表題になっているYouTubeの趨勢、もっといえばコンテンツプラットフォームの行方に割かれているのはせいぜい1〜2章ほどで、全体としてはAIを中心としたテクノロジーの進化によって社会はどう変わるのか、といったライトな未来予測本になっている。

2018年に発行されている

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ちょっとした趣味としての総合格闘技:「ONE X」を終えて

ちょっとした趣味としての総合格闘技:「ONE X」を終えて

同居している河野さんの影響で、総合格闘技に興味を持つようになった。
最近のRIZINもPPVを購入しては、ライブで観戦するようになっている。

で、今回ONEの10周年記念興業「ONE X」があり、日本人選手も多数参戦とのことで、PPVを購入して、ほぼすべての試合を観た。

RIZINを筆頭に最近の総合格闘技は、YouTubeをはじめとしたSNSを活用したマーケティングが当たり前になりつつある。地

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ぼくらは言葉を食べて生きている

ぼくらは言葉を食べて生きている

思考の原型は、だれかの言葉によってできているボリボリと食べ砕き、ゴクゴクと飲み込んでいく。喉ごしよくスルスルと胃におさめられる言葉も、奥歯に引っかかるような言葉も、体に取り込んでいく。その滋味が、栄養が、血液に溶けて、全身に広がっていくのを感じる。

その繰り返しを経て、言葉が濾過されて、思考に至るイメージの断片が残ったり消えたりして、自分だけの言語=思考世界が形成されていく。

上記のnoteに

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自分のことを神だと信じ続ける人生はどう転ぶか

自分のことを神だと信じ続ける人生はどう転ぶか

カニエ・ウェストを21年間追い続けたドキュメンタリーを観た。

裏方のプロデューサーから自身が表舞台にラッパーとして立ち、アメリカを、世界を席巻していくリアルな成り上がりの物語がそこにはある。

けれど、このドキュメンタリーで結果的に主題となるのは、母との絆であり、ドキュメンタリーを撮影している親友との不安定で脆くてでも強固な友情であり、神との対話であり、影響力の怪物に飲み込まれそうになりながらも

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生活のモビリティを上げる

生活のモビリティを上げる

「職に就くのではなく、活動を束ねていく」という生きる上での大前提となるアイデアについて、以前「精神がゆるやかに死にゆくとき」というnoteで触れたことがある。

いまいまは、週7稼働で毎日ポーカーをしているけれど、思い切って金・土の二日(テーブルが盛り上がり、期待値が普段よりも高い)だけプレーする生活に切り替えることを検討している。最低限の生活費をキャッシュゲームで稼ぎつつ、残りの時間をすべて、創

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“期待値を高く見積りすぎない”という人生のコツ

“期待値を高く見積りすぎない”という人生のコツ

自分で会社をやっていたときの教訓をふと思い出す。

他者は変えられないけど、自分は常に変えられる。

だから、過度に他者が変わることを期待するのではなく、まずは自分が良い方向に変わる努力をする。その姿をみて、その他者が変わってくれれば、とささやかに祈る。それくらいしか、できることはない。

人生を賢く生きるコツとして、何事においても期待値を高く見積りすぎないことがあると思う。

韓国でベストセラー

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そもそも“メンタル”って鍛えられないよね、って話

そもそも“メンタル”って鍛えられないよね、って話

筋肉のアナロジーで心を語ることはできない『メンタルダウンで地獄を見た元エリート幹部自衛官が語る この世を生き抜く最強の技術』という本に、こんな記述があった。

ここで述べられている三つのポイントを眺めてみると、メンタルの強さを補強する状態の確保、物事の見方に整理されていることに気づく。

トレーニングによって筋肉は強化・肥大化させることが可能なのに対し、心をトレーニングすることは難しい。まして、こ

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世界はそもそもフィルターバブル仮説

世界はそもそもフィルターバブル仮説

広い海に浮かぶ無数の泡。ぼくらの頭のなかの宇宙『水中の哲学者たち』という本を読んでいたら、自分があたためていたアイデアに着火し、発想が広がったのでメモをとっておきたい。

著者はおそらくぼくと同い年くらいの哲学者の方。小学生から高校生までの若い人々と「哲学対話」という活動をされている。子供たちは純真かつ真っ直ぐに、正解のない問いに、どこまでも本質的な視点を投げかけていく。

哲学対話を通じて、浮か

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「死」について真正面から考えてみたいときに読む五冊の本

「死」について真正面から考えてみたいときに読む五冊の本

「死」について思いをめぐらせることは、決して悪いことではない。

この世界において、「絶対」と言い切れることはほとんどない。唯一あるとするなら、人は誰しも最後は死ぬ、そのことだけは絶対だろう。

「今日より若い日はない」との至言に集約されるように、ぼくらは産まれ落ちた瞬間から確実に一歩づつ、死に向かっている。そのことを誰も否定できない。砂時計が落ち切る前に、ぼくらは生になんらかの意味を見出し、一度

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いい原稿にはコンテクストが詰め込まれている

いい原稿にはコンテクストが詰め込まれている

かなり久しぶりに、たぶん二年ぶりくらいに、仕事で取材原稿を書いた。

基本的にライター業は半引退しているけれど、依頼をくれた方が恩師なので、断れるわけもないし、恩師の依頼はなにがあっても引き受けたい。むしろ、いつも気にかけてくれて、ありがたいくらいだ。

そして、ひさしぶりに取材を行い、自分で文字起こしを行い、構成を作って、原稿を書く、一連のライティングをこなしてみた。こりゃ、まあ大変だ。よくもま

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“すべて”を語り合える友人がいない

“すべて”を語り合える友人がいない

はやいもので、もう三月になってしまった。

ケニアは一年を通して、暖かく涼しく、過ごしやすい。裏を返せば気候によって季節を肌に感じることがないから、時間の経過を身体的に感じることも少ない。まして、ぼくのように基本的に毎日ポーカーと読書をするだけのルーティンの日常のなかにいると、なおさら時間は時間を感じさせないまま過ぎていく。

今朝は起きてから、ひさしぶりに請け負った取材の原稿の執筆に取り組んでい

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