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なぜか焼肉系のYouTubeチャンネルにどハマりしている件

岡田斗司夫さんが予測する2028年の世界像

岡田斗司夫さんの『ユーチューバーが消滅する未来 2028年の世界を見抜く』を読んだ。

表題になっているYouTubeの趨勢、もっといえばコンテンツプラットフォームの行方に割かれているのはせいぜい1〜2章ほどで、全体としてはAIを中心としたテクノロジーの進化によって社会はどう変わるのか、といったライトな未来予測本になっている。

2018年に発行されていることを考えると、切り口や予測の精度に驚かされる部分も多い。全体に通底する世界像としても、昨今毎日耳にするようになった「メタバース」の様相を素描しているようにも読める。

もともと、岡田さんといえば本人が『ぼくたちの洗脳社会』のアップデート版として執筆したという『評価経済社会』(2011年刊行)で、現在のインフルエンサー経済圏を高い解像度で描き出していた未来予測のプロ筋ともいえる。

未来を予測する上で、しばしば参照されるテクノロジーの未来地図にガートナーのハイプ・サイクルがあるが、岡田氏が未来を構想する上で立脚点に据えるのはテクノロジーではなく、社会の価値観の変容だ。

たとえば、第二章「自分を『盛る』時代」なんかを読めば、ラーメン二郎を食べるためではなく、撮るため、もっと言えば“語る”ために訪れる人が大半になっているのではないか、との指摘にさえ大きな社会動態の変化が垣間見えたりする。

Netflixと同じく、YouTubeも中央集権化が進む?

で、表題になっている「ユーチューバーが消滅する」という主張の大枠をざっくりと説明する。まず、自動翻訳機能の飛躍的な進展が見込まれる。最近の「DeepL翻訳」の圧倒的な高精度を考えれば、この点に関しては誰も否定できないだろう。

リアルタイムの配信に関しても、同時翻訳技術は並行で進化していくはずである。すでに、コンテンツ産業はここ数年で、NetflixやAmazonのプライム・ビデオなどのグローバルプラットフォームにコンテンツが集約されつつある。

ぼくはケニアに暮らしているので、肌感覚で、コンテンツがグローバルで均質化しているのを感じることが多い。ポーカーをやっていると、テーブル上で雑談をすることがよくある。そのときに話題になるのが「『イカゲーム』観たか?」とか「『Tinder詐欺師: 恋愛は大金を生む』まじやばくなかった?」といった、国や文化を超えて、同じコンテンツを当たり前のように享受するようになった今日のメディア環境である。もはや、テレビを観なくなっているのは日本はもちろん、ケニアでもインドでも同様なのであろう。

この現状を考えると、文化性やローカルな文脈にファンやオーディエンスの獲得が依存しそうなYouTubeのようなUGM寄りのプラットフォームであっても、大きな潮目で考えれば、同様の流れに収斂していくと考えても不思議ではない。

もちろん、とことんまでローカル×ハイコンテクストに振り切ったニッチなチャンネルにコアなファンが残り続けるのは現象としては残るだろう。一方、きまぐれクックさんなんかは以前から非日本人の視聴者が相当数チャンネルを支えているそう。彼がやっていることは、視覚的なインパクトが強いし、言語や文化にコンテンツそのものの面白さが担保されているわけではないからだ。

逆に、言語や文化、ひと言でいえばハイコンテクスト性によって面白さを担保していたチャンネルは、上述した翻訳をはじめとした技術の進化によってグローバルレベルでの競争にさらされることになる。

ただ、「マスコンテンツはグローバルで集約されていく」この流れは間違いなさそうだ。このラインに国として全力で食い込もうとしている韓流コンテンツは強い。実際に、そのプレゼンスはグローバルで年々増しているように思う。

オススメの焼肉系YouTubeチャンネル

いったん、そうしたマクロな趨勢や予測は脇に置いて、最近自分がどんなチャンネルを観てるのか、ちょっと振り返ってみる。

1〜2ヶ月ほど前は、毎日、貪るように『街録ch』を観ていた。人の人生にこそ、自分のまだ知らぬ世界が詰まっている。個人的な『街録ch』の魅力については先月「猛れ 猛れ 猛れ」にまとめた通りだ。

『街録ch』は毎回、ひとりの人生にフォーカスする。「人」の人生には、当然のことながら「人・本・旅」が詰まっている。人はそれぞれ一度きりの人生しか体験することはできない。だから、他者の人生を覗き込める機会は貴重である。

もちろん小説を読むことによって、登場人物たちの心象風景に共感したり、批判を覚えることで、物語を通じて「自分を知る」こともあるだろう。

それでも「事実は小説よりも奇なり」というように、名も知られぬ一般の人たちの人生にも必ずさまざまなバリエーションの起承転結があるものだ。人生が始まると同時に決められていた理不尽な初期設定、転落や挫折、絶望からの希望、人が再起動し、ブレークスルー瞬間にみる景色はいつだって美しい。

最近はどうか。いまはポーカーもちょっとお休みして、とにかく貪るように一日中読書をしている。その合間に触れるYouTubeに求めるのは、刺激や学びよりも、なにも考えずに頭を休める時間だ。つまり、目で追うだけで楽しめるくらいの、論理も知識もほとんど要らないコンテンツ。

その意味で、芸人さんのコンテンツは重宝することが多くて、さらば青春の光のチャンネルにもだいぶお世話になったけれど、ほぼすべてのコンテンツを見尽くしてしまった。

頭をまったく使わなくていい、という意味でかまいたちチャンネルが延々やっている「◯◯ランキング」形式のコンテンツはダラダラといつまでも観てしまえる。

で、このかまいたちのランキングも見尽くした後に、ぼくがたどり着いたのが「焼肉」だった。

とくによく観ているのが「肉バカ 小池克臣の和牛大学」「肉のプロフェッショナル」「お肉のおじちゃん」あたり。

「小池克臣の和牛大学」はほぼ毎日和牛を食べまくっている小池さんが、日本全国の有名焼肉屋、ステーキ屋を訪れて、焼肉うんちくを語り尽くすだけのチャンネル。何十本も動画を観ていると、小池さんのうんちく知識が繰り返しインストールされて、次に何を言うのかがほぼ間違いなく予測できるようになってくる。タンの構造の説明とか、表面は8割焼で、裏は2割焼とか。芸能人や肉関係の著名人とのつながりも深いようで、「蕃 YORONIKU」店主のVanneさんが出てくる回なんかは、ぼくも集中して観てしまう。

「肉のプロフェッショナル」は焼肉Hodori用賀店の橋本さんが肉の捌き方や、肉の焼き方を、実際の焼肉屋の厨房を使ってレクチャーしてくれるチャンネル。焼肉屋目線でのうんちくのクオリティも高くて、トークも上手い。最後の試食シーンに出てくるアルバイトの子たちの素直なリアクションも観ていて心地よい。

あ、「ホルモンしま田」の「熟成肉検証シリーズ」ももれなくチェックする。塩、醤油、わさび、オリーブオイル、バター、ハチミツ…あらゆる調味料に塊肉を漬け込み、熟成肉としての完成度を確かめる企画。「どうなっちゃうの?」と真正面から好奇心をそそられる企画は、きまぐれクックさんと同様、海外からのオーディエンスを引きつけそうな方向性。

おもしろいYouTubeチャンネルがあったら教えてください。

ケニアで無職、ギリギリの生活をしているので、頂いたサポートで本を買わせていただきます。もっとnote書きます。