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SF、読書のよろこびマガジン

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大人になってからSFの楽しみを知った人の記録。本が好き、ゲーム興味ないかたはここで。
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【本好き日記】ヤーレンズ出井の禁煙、海外小説ツアーを経まして、四国のあやしい古本屋へ

【本好き日記】ヤーレンズ出井の禁煙、海外小説ツアーを経まして、四国のあやしい古本屋へ

年に一度の本棚整理の準備をしています。
8月は僕だけじゃないだろうけど異常なだるさ。
温度差と無気力が原因なのはわかってるのに、何これ軽めの熱中症?症状の出ないコロナ?と疑うぐらいだった。

読み切れなかった本も、難しいけどなんか好きな本も、自分ごときが感想書けない本もいっぱい出てくる。

台風の時に家にこもって、秘密基地みたいにして分厚い文芸誌を読むのよくね? って思ってできるだけお菓子を買い込

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【読書記録】パンとタバコをひたすら切り詰める25年

【読書記録】パンとタバコをひたすら切り詰める25年

「イワン・デニーソヴィチの一日」を読んた。表紙が好きという理由だけで選んだけど、予備知識なく期待もせず読めて幸運だった。

収容所の男がひたすら労働して、パンを節約している。
一口ごとに小さく味わって、隠して後でお粥の器をぬぐって食べる用に服に隠してとっておく。

仲間にタバコを分けて欲しくてずっと隣でタイミングをうかがってたり、極寒の中でまともな防寒対策もなく延々とレンガをつんだり、わずかな暖房

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【読書記録】「笑う萬月」レコードからCD、万年筆からワープロにうつる時代の記憶

【読書記録】「笑う萬月」レコードからCD、万年筆からワープロにうつる時代の記憶

花村萬月「笑う萬月」を読みました。この人のエッセイはいくらでも読めるし、読むたびに痛い。
本人は文学について学んでいない。学校もほぼ行ってない。
なのに、バイクだ音楽だと青春を謳歌して、自分の才能とカンの鋭さでエグいぐらいもてて、暴力衝動や薬物中毒も全部作品に昇華させて作家として成功した。

花村作品は、才能というものの残酷さを思い知らされるから痛い。
直接そんなこと書いてないのに、
「お前、人生

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北海道の刺身

北海道の刺身

河﨑秋子はちゃんと北海道では誰もが知る超有名作家になってるんですか?短編集「土に贖う」のうちの一遍でもいいから、学校でちゃんと読ませてるんですか?
 
トロの刺身を食べただけでマグロ全体が生きていたことを想像できるように、数ページの短編ひとつで北海道の大地と寒さが頭に注入される。
この本は北海道の刺身。北海道の切り身。北海道のえんがわ。

地方小説としてすごくかっこいい。このテキストは四国で書いて

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【読書日記】「三四郎・それから・門」

【読書日記】「三四郎・それから・門」

「それから」を読んだ。学校で「坊ちゃん」を勧められても読まなかった記憶があるのに、大人になって、自分で読みたいから自分で稼いだ金で文庫本を買って、1日2行しか進まない日もあるけど、少しづつ、自分で読みたいから読むことができた。

読書感想文でもない、作者の考えを読み取るでもない、ただ100年前の人の言葉使いとか、文章が好きだから読んだだけ。

この時代とは人生の長さも、きいてる音楽の速さも違うのに

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ブックオフで買った、デカいあしたのジョー

ブックオフで買った、デカいあしたのジョー

110円で、運動部の弁当箱ぐらいデカい「あしたのジョー」を買った。
「まんがを読んでる!!」って感じがする。

冬場にあったかい蕎麦をすすりながら太宰治の文庫本読んでたときは
「小説を読んでる!!」って感じがしてた。内容うんぬんの前にシチュエーションに満足していた。

「あしたのジョー」は、力石って人が減量中にリンゴ食べるところと、死んだときは実際にお葬式があったこと、さいごに真っ白に燃え尽きたの

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文藝2024秋を買った。安堂ホセから読む

文藝秋号掲載の安堂ホセ「DTOPIA」は鮮度が命なんで早めに読んだ方がいいぞ。
小説は全部昔に書かれたもので、中には50年とか100年前とかに書かれたものもある。だから昔の話を聞くつもりで読んだら、DTOPIAには映画「関心領域」の話が出てくる。早くね?
週刊連載マンガのペースだ。キン肉マンが読者のハガキで超人のアイデアを募集して採用されたら即本編に登場して不人気だったら即退場、ぐらいのスピード感

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【読書】団鬼六「大穴」

【読書】団鬼六「大穴」

昭和30年代、大阪。
勝負事に強くてリア充の恭太郎と、彼の言うままに金をもらって授業の代返をする耕平。
対照的な大学生コンビの、湿度高めのねっとりした昭和大阪キャンパスライフ。

話は大学生ふたりが小豆相場に大金を出す場面から始まる。
僕はあずき相場とたぬき蕎麦の違いもわからないけど、
「台風が来ると穀物がとれなくなって相場が上がるから、買い占めておけば儲かる」みたいなこと。
今だと、新NISAで

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山本晋也カントクが何のカントクだったのかを知る。

山本晋也カントクが何のカントクだったのかを知る。

子供のころ、テレビで知的なポジションにいるけど何の人なのか分からない大人が大勢いた。

最近になって、YouTubeで山田五郎さんがこんな面白い人なのか!と知ったけど、みうらじゅんさんやソラミミストの安斎さん、ビートたけしの番組に出ていた芸術家のクマさんとか、一生何者か知らないまま終わってた可能性もある。

「トゥナイト2」という深夜番組で風俗レポーターとかをやっていた山本晋也カントクも謎だった。

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すばる7月号を学校の図書室に置こう

すばる7月号を学校の図書室に置こう

すばる7月号を読んだ。
李琴峰さんのアイオワ滞在記が良すぎて共有したいので、ここだけでもカッターで切り取って小冊子にして全国の高校の図書館に吊るそう。

アイオワ大学で、反LGBTQの活動家が講演をすることに、大学生たちが一斉に抗議する。
コールで、アートで。それぞれのスタイルで反差別を態度で示し、近所の車はクラクションを鳴らし、武装警察まで巻き込む騒ぎ。
その一部始終をその場にいるような迫力で記

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「台北プライベートアイ」紙で台湾を歩こう

「台北プライベートアイ」紙で台湾を歩こう

連続殺人犯のターゲットにされた主人公が、厄落としの豚足入り素麺を1日に2回食わされるアジアン・ハードボイルド。
「ソウ」を観て震え上がるとか、かあちゃんは気も強いが麻雀も強いみたいな、ミステリーと全然関係ないことにページを割いてて最高だった。
ページ折り癖も付箋もあるし風呂でも読んだ。1週間ぐらい心は十年以上前の台湾に住んでた。

主人公は口を開けば不平不満が止まらない反面、演劇に関わって読書家の

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【読書】「木挽町のあだ討ち」怒涛の伏線殺法!

【読書】「木挽町のあだ討ち」怒涛の伏線殺法!

女物の衣装をまとった武士、菊之助が父のかたきと称して大柄な博徒、作兵衛を斬った。

かたき討ちの現場にいた5人の目撃者が、それぞれの出自と菊之助について語る。

爽快な時代小説かと思ったらこんな挑戦的な作品か!

全編がインタビューみたいな読者への語り掛け形式で、話が前に進まず、回想で過去が明らかになっていくから、軽快ではない。

ゆったりゆったりスロースタートで、3人目でアクセルがかかってきて、

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【読書日記】映画より先に「2001年宇宙の旅」を読むぜいたく

【読書日記】映画より先に「2001年宇宙の旅」を読むぜいたく

5月は体調崩した方の報告が多かった。俺もお前もアイツも俺もみんな、ノド枯らしたり入院したりしていた。
みんな大丈夫か!生きているのか!じゃあ良かった!

SF小説を読める元気がもどったので、ついにこれを読む。

映画は猿の集団の前にモノリスが出現する場面しか知らない。ネタバレなしで読めるぜいたくを噛みしめる。

猿人たちの前に突然現れたモノリス。
猿たちはまず、植物のように生えてきたものかと考える

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【読書記録】北の大地の怒りを感じた「肉弾」

【読書記録】北の大地の怒りを感じた「肉弾」

河﨑秋子「肉弾」を読みました。
この小説に贈られた言葉「熊文学の新たなる傑作」が気になりすぎて。なんせ「熊嵐」が好きですから。クマのプーさんも。

狩猟と小説は相性がいい。
自然の描写から、どこに敵が潜んでいるかわからないホラー的な怖さ、最期には自然との共存といったテーマ性も感じる。どこをとっても読みごたえがある。
熊の習性として、獲物を一度で殺して終わりじゃなくて、しばらくとっておくところもいい

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