SF、読書のよろこびマガジン

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【芥川賞候補】「臭い人」をテーマにすると、いろんな感情が湧き出る! 高瀬隼子「水たまりで息をする」

街中やお店の中で、異臭のする人からそっと離れた経験はありませんか。私はある。
困ってる人は助けたいと思っているのに、臭い人からは考えるまえに離れてしまった。

「水たまりで息をする」は、会社生活の疲れか、夫が突然風呂に入らなくなる話だ。
昨日まで平気だった水道水が臭い、飲めない、さわれない、と突然言い出してだんだん臭くなる体で会社勤めをするようになるが、周囲の人も異常に気付かないわけはなく、生活が

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空回りする苔栽培とSFライフ

苔を買った。ゆくゆくは苔テラリウムとかいうものを形にしたい。部屋の隅にそっとガラスの容器に緑を閉じ込めてミニチュア世界の創造主になって眺めるんだ…。

そんなことを言っていたような気もしますが、その後の苔の具合は悪く、枯れたわけではないけど茶色くなってしまった。
苔なんか栽培するだけなら楽勝だろう、だって駐車場のわきの溝で誰にも世話されずにずっと健康なんだから。枯らそうと思っても枯れないぐらいじゃ

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【読書記録】イギリス人は学校でこんな面白い小説を読むのか、ずるいぞ「蠅の王」

路上飲みで騒いでいるグループの報道を見て「あ、蠅の王にいた子だ!」と思ってしまった。

無人島に遭難した子供たちが、彼らなりにリーダーを決めて、毎日のろしを上げて、船が通ったときに気づいてもらうようと約束ごとを決めていたのに、途中から仲間割れをおこしてしまう。

約束事を守るグループ、いつかわからない救助を待つより今を楽しみたいグループに分かれる。秩序VSカオスに分かれるのだ。
カオス側の子供たち

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【読書記録】読んだことのない有名作を読む 松本清張「点と線」

「点と線がつながった」言い回しは知ってても読んだことない人多いでしょう!読みました! 刑事ものの2時間ドラマにもうといので「時刻表ミステリー」の段階で新鮮。
列車内を舞台にした映画や、乗り物を止めるのが目的の話は山ほどあるけど、時刻表のミステリーって日本独自に発展したジャンル…ですよね?
だって、時間通りに交通機関がキッチリ動く国じゃないと成立しない。蛭子さんの路線バスの旅も時刻表をめぐるドラマだ

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【読書記録】ワクチンによる腕の腫れは、花である。吉村昭「雪の花」

ワクチンによる治療を福井県に普及させた医師の伝記です。
冒頭から、天然痘の死者を乗せた大八車が町を走り回る。その感染力はすさまじく、一人かかれば家族とその周囲は全身にボコボコと赤黒いあざをつくって死んでいく。

全身に醜いできものができるのが特徴だ。
命が助かっても、醜く変貌した顔で生きるのに耐えられず自殺した女もいる。
これが毎年のように流行する。

治療法は、牛糞を粉末にして飲むといった迷信や

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ディーパ・アーナパーラ「ブート・バザールの少年探偵」

インドのスラムで起きた、子供の失踪事件。

スラムが題材の作品は「スラムドッグミリオネア」、小説だと「三つ編み」を読んだけど、それらが航空写真としたらこっちはハンディカメラで潜入したよう。
子供の視点まで姿勢をさげて、風景を細かく切り取る。

インド出身で貧困層の取材をしていたジャーナリストでもある作者が描く、スラムの少女が見つめる手のひらの描写はこんなだ。

「指のまわりにぐるっとできたマメやタ

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【読書メモ】柳美里「JR上野駅公園口」

天皇と同じ日に生まれた一人のホームレス。
まえの東京オリンピックを肉体労働で支えた彼は、2020年の東京オリンピック誘致のために「特別清掃」で公園から移動を命じられる。

実際に聞いた話とフィクションが混じった本だ。
本物の血と汗を流した人間が、作者にささえられて壇上に立っているようだ。

主人公の人生は「あそこでああしていれば!」
「若いころ努力していれば!」と悔やむような分岐点もなく、いつの間

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「後ろ手はやめろ、飯を食うときどうするんだ」吉村昭「破獄」ネタバレ有

昭和11年の青森刑務所を皮切りに、秋田刑務所、網走刑務所、札幌刑務所、4回脱獄した佐久間清太郎の生涯を、それぞれの看守らの視点でたどる。

実際の証言を元にした小説です。

まずむかしの刑務所の様子だけで面白い。その中でこっそり練る策略。ミステリー的な脱出の面白さと、佐久間という得体の知れない男。
ひとつ刑務所を突破してはなぜか捕まってくる。

日本の状況が変わって、いちばんつらい戦時下では敗戦ム

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【読書記録】「デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場」自撮り登山で指9本を失った男と、爆笑問題太田の共通点

「自撮り登山家」栗城史多さんは、学校祭の演劇になるとはりきって、脚本も主演もなにもかもやりたがる生徒だった。

1年のときは原始人の話。
2年ではラーメン屋の話。
3年のときは「踊る大捜査線」のパロディをやった。

3年間通して受け持った担任の先生は、これに気づいて大変驚いた。
話が全部続きものになっていたのだ。
3年目に出てきた悪者が1,2年のときの出来事を仕組んでいた。

爆笑問題の太田光が、

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【読書記録】屋台もない。うどんもない。「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」に出てくる豆腐が気になる!

生きた動物を飼うことがステータスになっている1990年代の未来。
人間のふりをした高性能アンドロイドを排除して賞金でペットを飼おう、あわよくば馬のような大型の生き物を飼いたいと願うバウンティハンター、リック。

彼が持っている機械は、ウソ発見器の進化版のようなもので、相手の顔に器具をつけて、いくつかの質問をして本物の人間かどうかを識別できる。
しかし、新型アンドロイドはその機械で判別できるかどうか

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