マガジンのカバー画像

SF、読書のよろこびマガジン

92
大人になってからSFの楽しみを知った人の記録。本が好き、ゲーム興味ないかたはここで。
運営しているクリエイター

記事一覧

【読書】太田光をぎゅ〜っと原稿用紙1200枚に圧縮したら。 笑って人類!

【読書】太田光をぎゅ〜っと原稿用紙1200枚に圧縮したら。 笑って人類!

爆笑問題の太田光書き下ろしSF長編娯楽小説「笑って人類!」を読んだ!
完全なネタバレはしませんがある程度内容にふれて語りたい!

お笑い芸人がお笑い以外のジャンルで、ふだん表に出さない過去や暗黒面をぶつけてくるパターンがある。

ビートたけしが北野武になるんだら、太田光が超絶ダークな内容できてもおかしくないと身構えて買ったのに、出てきたのは愛するSF、ギャグ、ミステリー、オタク文化への愛もある、娯

もっとみる
「みんなが私を知れば私の孤独は埋まると思ってました」

「みんなが私を知れば私の孤独は埋まると思ってました」

女性芸人たちの対談集「女芸人の壁」を読みました。

20年ほど前、お笑いをやりたいのは圧倒的に男性多数。
女性はアナウンサー志望だったりネタをほとんど作ってなくても「たまたま」有名番組に出れるようなことがあった。
プロの技術を極めなくてもうっかり全国に飛び出せた時代。それによって大変な思いをしたり、一生モノの貴重な思い出になったり。
「テレビが最強だった時代」の証言として、性別関係なくおもしろかっ

もっとみる
【読書記録】韓国、北朝鮮を本でしか知らない。「血と骨」

【読書記録】韓国、北朝鮮を本でしか知らない。「血と骨」

最近、本を読むのに多少「がんばり」がいるようになっていたのだけど、これは濁流に押し流されるように、気が付いたら残りページが全部なくなっていた。あああ終わってしまう!読む前には右の方にいたしおりがここまで移動している!さびしい!

どんな話かというと、暴力を振るう最悪なかまぼこ職人の人生。
十日に一日の休みで限界まで働かされ、給料は日本人の半分以下。労働基準法も衛生管理も人間らしい暮らしもない。

もっとみる
芸人が絶対に避けるべきことは「横柄」。

芸人が絶対に避けるべきことは「横柄」。

SMA芸人本「弱者の戦略」を読みました。

カバーの文句。
なぜSMAは後発でありながらM1、KOC、R1グランプリで優勝できたのか?

答えは、ネタを作り、みんなでダメ出しをし合い、大事な場面でいつも通り披露したから。

自分で作って、人にみせる。
それだけ。
それを繰り返すしかない。
ソニーのお笑い部門に勢いがあるといっても成功するのは1%以下。大多数がバイト生活。
疲れた状態で、寝るか、新ネ

もっとみる
「三体ゼロ」を読み終わる。謎の気球が飛ぶ。

「三体ゼロ」を読み終わる。謎の気球が飛ぶ。

中国のSF小説「三体」シリーズ、これで全部読み終わった。
「三体」三部作以前に書かれた前日譚になる話で、テーマは謎の自然現象「球電」。

実際に目撃証言のあるもので、電気を帯びたシャボン玉のようなものがす~っと浮遊して消えるのだとか。
少年のころに出会った球電にとりつかれた男が、自然や電気を勉強していたら、情熱は出会いを呼び、武器にとりつかれた女性やら旧ソ連の技術者らと出会い、球電を武器に転用しよ

もっとみる
【読書日記】のっぺらぼうのYouTuber的精神。ラフカディオ・ハーン「怪談・奇談」終わり。

【読書日記】のっぺらぼうのYouTuber的精神。ラフカディオ・ハーン「怪談・奇談」終わり。

雪で凍える車内で、たまたまラフカディオ・ハーンの怪談・奇談が手元にあるので続きから読み始めた。寒いなかで雪女の伝承などを読むことで、これはもう4DX体験やん、得したやん、と思うことで寒さを迎え撃ってやろうとしたのだ。

フロントガラスを覆った☃。ワイパーでさっと両脇にどけると、ちょうど開いた本の形に外が見える。

ラフカディオハーンが日本中で集めた怪談・奇談のかずかず。死んだ人が形を変えて戻ってき

もっとみる
【読書感想】コロナに傷つけられない程度の人生のぼくと高校球児「あの夏の正解」

【読書感想】コロナに傷つけられない程度の人生のぼくと高校球児「あの夏の正解」

コロナで甲子園が中止になった年に、
死にものぐるいで練習してきた愛媛・済美高校と石川・星稜高校の野球部に取材したルポ。

作者の早見和真さんも元球児で、プロを目指していたが有名選手を見てから自信を失い、ずっとだった。そのせいか、甲子園こそ清々しい青春の舞台!とはとらえてなくて、一歩引いて、野球好きなんだけど甲子園のちょっと異常なかんじもわかっている。

補欠だった経験を小説にして作家になったけれど

もっとみる
【読書】1年364日働く化粧品店のおじいさんが元スパイだった話【天路の旅人】

【読書】1年364日働く化粧品店のおじいさんが元スパイだった話【天路の旅人】

沢木耕太郎「天路の旅人」。感想を勢いにまかせて書くぞ!
内容に触れますが、最初にどんな話か説明しても影響は少ないタイプの本です。

大きなくくりでいえば辺境を旅するノンフィクション。インド旅行ものとか、面白い作品が多いジャンルです。

作家の沢木耕太郎氏が、岩手で化粧品店を営む西川さんという人に話を聞く。
体格のいいおじいさんで、元旦にしか休まない。毎日カップヌードルとコンビニのおにぎりを食べて、

もっとみる
永田カビさんを「わかる」人が沿道で旗を振り、ゴールテープを切る姿を見届けるけど、誰も代わってあげられない【マンガ感想】

永田カビさんを「わかる」人が沿道で旗を振り、ゴールテープを切る姿を見届けるけど、誰も代わってあげられない【マンガ感想】

永田カビの新作「膵臓がこわれたら少し生きやすくなりました。」を読みました。

ずっと人間の業のようなものに責められている人が、自分を絞り切って絞り切って吐き出した火の玉のようなゲロのようなコミックエッセイの終わりを見届けました。

冒頭は病院脱出シーンで始まる。
海外ドラマかゲームの導入のよう。
点滴をトイレに隠して、ナースセンターを通り抜け、逃げてしまう。

過去作でも心身ともに痛めて入院してい

もっとみる
ミン・スーが犯した幾千もの罪、沢木耕太郎を買う【読書日記】

ミン・スーが犯した幾千もの罪、沢木耕太郎を買う【読書日記】

まずタイトルと、逆光の男がドドーンと立ってる表紙でもう面白い。
中国系作家トム・リンのデビュー作となるヴァイオレンス・ウエスタン小説だ。

東山彰良の解説ではアメコミ映画を思い出したとあるけど、僕はジョジョの奇妙な冒険を連想した。
西部劇の世界観で超能力者が旅する話がジョジョかと言われると微妙だけど、作者が全く日本アニメを知らないことはないでしょう。

筋書きは、中国人の殺し屋が、見世物小屋の一座

もっとみる
翻訳ミステリーが好きなことにきづいてしまった!

翻訳ミステリーが好きなことにきづいてしまった!

芸術性のある素晴らしい物語よりも、冒頭で事件なり犯行予告なりに引っ張ってもらう方が好きなことに気づいてしまった。
翻訳ミステリーが好きなことに気づいてしまった。
半月に一冊のペースで読む。読むか飽きると、帰りしな本屋に立ち寄ってその場だけの限られた在庫と、少ない紹介文から一冊を選ぶ。
値段はちょっと高め、2000円から3000円ぐらい。その時はちょっとした祭りである。
日本作家の繊細な文章とは違う

もっとみる
【読書】奥田英朗「リバー」の終わり方で「えっ」と思う?「らしい!」と思う?

【読書】奥田英朗「リバー」の終わり方で「えっ」と思う?「らしい!」と思う?

https://amzn.to/3EStomS

奥田英朗は話を考えずに小説を書き出す。

浅田次郎みたいに完全に設計図を整えて書き出す人もいれば、少年漫画みたいにとりあえずキャラを動かして、自分で書いてるのに「こいつが犯人になっていくとは」と、川が流れ着くように結末へたどりつく作家もいる。

ぼくは奥田作品を八割は読んでますが、たしかに急に終わるような印象のものがあった。
エッセイによると、けっ

もっとみる
地図禁止!北極縛りプレイ「狩りと漂泊」 #読書記録

地図禁止!北極縛りプレイ「狩りと漂泊」 #読書記録

映画やマンガのネタバレには注意しないといけない時代ですが、結末までネタバレしてから準備しないと命にかかわることもあります。それが登山。

角幡唯介「狩りと漂白」探検家でライターの作者が計画したのは、未知の場所にたどりつくための旅ではなく、自分が知らない土地に地図無しで踏み込む旅。

道中の予定が立てられない、自分の位置を見失う旅は、軽いハイキングでも命にかかわる。
あえてその土地を初めて訪れた原始

もっとみる
ここだけ世界旅行解禁! 高野秀行「語学の天才まで1億光年」 #読書感想文

ここだけ世界旅行解禁! 高野秀行「語学の天才まで1億光年」 #読書感想文

情報のない秘境を取材するために世界各国のレア言語を学び、そして次の国にいくたびに前に習ったことは忘れてしまうノンフィクション作家、高野秀行。

ゆっくり長く読みたいのに、残りページ数が最近のかき氷みたいに、すうっと溶けてなくなってしまう。それぐらい手が止まらないエッセイだった!

テーマは語学。ここに出てくる外国語学習は、仕事のために嫌々覚えさせられたり、将来の安泰のためにしかたなく習うような世知

もっとみる