フォローしませんか?
シェア
無題
2023年1月4日 00:21
この正月、祖母に会った。4年前に祖父が亡くなってから、沢山会おうと決めていたけれど、3年近く会えていなかった。縮んだ背。薄くなった髪。増えてきた物忘れ。ほとんど見えなくなった片目。歳を取ったのだなとは思うけれど、それだけだった。ぼくの物心がついた時には、とっくに70を超えていたから。埃の溜まった部屋。手入れされていない水回り。作って鍋に入れたままの煮物。モノを詰めるだけ
2021年2月3日 21:43
中学の担任に言われた言葉がある。「人間は歳を取る程に、人生におけるそれまで生きてきた日々の割合が小さくなる。だから、それだけ1年が短くなる」当時は「そんなバカな」と思ったが、それから10年近く経った今、彼の正しさしみじみと痛感している。地球が太陽の周りを1周する時間が短くなったわけではないので、1年の長さは(厳密にどうであれ、少なくとも体感できる程には)変わっていない。しかし1年の長さの
2020年12月6日 07:45
「人を殺すことは悪い」ことだと、恐らく多くの人が思っているだろう。ぼく自身もそうだ(先にこれを書いておかないと後々に言いがかりをつけられそうだから、ここではっきり述べておく)。先日(と言っても数ヶ月前だが)、『ミステリと言う勿れ』(田村由美, 2016-, 小学館)をネット広告から飛んだ有料漫画サイトで試し読みした。この類の広告で出てくる漫画では珍しく、単行本を買いたいと思った(そして本屋に行
2020年9月9日 17:46
気付けば9月に入って、早くも10日が経とうとしている。それだのに暑さはしばらく続きそうなのだから嫌になる。「これも残暑でござんしょか」などと最初に宣ったのはどなただろうか。思わず口に出さずにはいられない。 とはいえ、確かに秋の気配が感じられるのもまた事実だ。夕方に吹く風には、今までになかったようなどことない涼しさがある。ふと空を見上げると、上へ上へと飛んでみても、いつか見えない何かに行き当たっ
2020年5月8日 00:12
行き場のない焦燥感が真綿のように首を絞める何かをしなくてはと執拗にぼくを鞭打つでもわからない何をすればいいのだろう画面の中の通行人は言った何かすることで自分を成長させよう今が絶好の機会だでもわからないなぜ何かする必要があるのだろう今日の風が囁いた幸せになりたいのでしょうチャンスは掴まなきゃでもわからない何かすることが幸福なのだろうか呪詛の鎖に身を縛られ
2020年5月5日 01:04
空っぽな世界に生きる空っぽなぼく空っぽな人生は空っぽな気持ちで風に吹かれてカラカラと心が揺れる夜夜があたりを満たしぼくは眠れなくなる空っぽの世界にあるのは眼の前も見えない真っ暗な闇朝が来るのを待つけれど朝日は結局なにも照らさない空っぽな世界では空っぽの心が揺れるだけ
2020年3月29日 18:49
一昔前の、とある時代劇。旅のご隠居一行が立ち寄った街で、困っている人がいた。話を聞くと、誰かに悪さをされていると言う。許せない!と見ている僕たちは思う。悪事の証拠を掴み、悪者に突き付ける。はじめから正直に認めることはまずない。チャンバラを挟んで印籠を見せ付け、悪を成敗する。僕たちは、悪が退治されてスッキリする。誰が悪いのかがわかって、更に彼(女)を責めることができるから。悪者
2020年3月25日 13:24
今日、大学というものを卒業した。卒業式のない卒業。なんだか少し変な感じ。大学で過ごした5年間はあっという間だった気もするし、それなりに長かった気もする。誰かと反目したこともあるし、誰かと笑ったこともある。今は昔で、通り過ぎた人たちも多いけれど。1年間休学して、留学もした。人付き合いは好かないが、それでも向こうで多くの人と出会った。それから2年が経って、彼らも名もなき存在に成れ果て
2020年3月21日 00:07
芸術とは何なのかということを、最近よく考えている。別に僕自身が芸術に携わるわけでもないのに。事の発端は、ジョン・ル・カレの1974年の小説を基にした『裏切りのサーカス』(原題:Tinker Tailor Soldier Spy)という映画である。内容については、「冷戦下の英国諜報部に潜入したモグラ(東側のスパイ)を探す話」と述べるだけに留めておく。初めてこの映画を観た時、これが自分の欲して
2020年3月18日 23:53
春出会いの季節新しい風が僕たちに彩りをくれる春別れの季節吹き抜ける風が僕たちを千々に散らす春期待と不安温かい風が僕の心を掻き乱す春生命の息吹あと幾度だろうこの桜を見れるのは春素知らぬ顔で気付けばそこにいる中にはちっぽけな僕
2020年2月27日 16:32
明日は〇〇をしよう。そう思って眠りにつくことは多いし、きっと大勢の人たちも同じ。けれど、どうして僕たちは、「明日」が来ると思い込んでいるのだろう。誰も、明日自分が生きてるかさえわからないのに。でも、明日が来ないかもしれない、と考えながら布団に入るのは、怖い。「死」という得体の知れない何かが、夜の帷に乗じて、僕の思考に潜る。それは、眠りという安寧に甘んじることを許さない。だか
2020年2月19日 15:59
通過電車に飛び込む女性の動画を、昨日見た。彼女の自殺を称賛するつもりも、だしにするつもりも、ましてや真っ赤な他人の分際で偉そうに冥福を祈る気もない。ただ一つ、僕の脳裏をよぎった問がある。世界が暗転するその刹那に、彼女は何を思ったのだろう。これで全てが終わると、安堵のようなものを感じたのか。それとももっと生きたかったと思ったのだろうか。答えは誰にもわからない。けれどある意味では、死
2020年1月18日 13:00
ぼくたちの世界は奪われている商業主義によって流れ行く世界を窓から切り取ろうとする時誰もぼくを見ない街を根なし草のように彷徨いたい時いつもそれは主張するこっちを見て!ほら!そんなものはうっちゃって!そして気付くといつも明滅する虚構に目を預けている否、きっとある人たちにはこのがらんどうが世界そのものなのだろうぼくにはわからないけれど今日もぼくは実態のない存在の
2019年11月10日 16:39
立冬を過ぎた空を見上げながら駅へと歩いていたら、駅を見下ろせる場所に続く階段と、駅へと下る坂があった。時間だけはたっぷりあったから、ぼくは駅を見下ろすことだってできた。足早に行く都会の有象無象を眺めることができたのだ。それでも、ぼくは駅へと下った。有象無象に埋没することを選んだ。下ってから、ぼくはそのことに気が付いた。その時に、これがぼくの人生なのだと思った。特別な何かになるわけでもな