秋の質量
気付けば9月に入って、早くも10日が経とうとしている。それだのに暑さはしばらく続きそうなのだから嫌になる。「これも残暑でござんしょか」などと最初に宣ったのはどなただろうか。思わず口に出さずにはいられない。
とはいえ、確かに秋の気配が感じられるのもまた事実だ。夕方に吹く風には、今までになかったようなどことない涼しさがある。ふと空を見上げると、上へ上へと飛んでみても、いつか見えない何かに行き当たってしまいそうな、淋しげな空が広がっている。どこまでも上って行けそうだった、底抜けに青い夏の空とは対照的だ。17時を過ぎると黄昏始めるのも、釣瓶落としの秋らしい。
知らぬ間に季節は巡り、歳を取り、そして死んでゆくのだろうかと、要らぬ感傷に浸ってしまう。この季節特有の、質量のない優しい風のせいだろうか。
こんな空疎な文章を書き散らしている間にも、日が暮れてゆく。
夏の面影に思いを馳せながら。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?