取るに足らないぼくと空、そして…

立冬を過ぎた空を見上げながら駅へと歩いていたら、駅を見下ろせる場所に続く階段と、駅へと下る坂があった。

時間だけはたっぷりあったから、ぼくは駅を見下ろすことだってできた。足早に行く都会の有象無象を眺めることができたのだ。

それでも、ぼくは駅へと下った。有象無象に埋没することを選んだ。下ってから、ぼくはそのことに気が付いた。

その時に、これがぼくの人生なのだと思った。特別な何かになるわけでもなく、灰色の世界を生きていく。別にこの世で際立ちたいわけではないけれど、過去のある時点で違う選択をしていたらどんな人生になっていたのだろう…なんて考えてしまう。

今の人生に後悔を抱いてはいない。多分。それでも隣の芝生は青いし、ifの世界に恋い焦がれてしまうのは、自分が未熟だからか。

ちっぽけな人間の、阿片のように気怠い追憶の午後。初冬の空には狭すぎたみたいだ。

カフェの人いきれをBGMに。

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