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エッセイ

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自身の記事の中から、エッセイをまとめています。
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#強迫性障害

映画『正欲』

映画『正欲』

12月の頭に映画『正欲』を観てきました。
その時のことと、考えたことを以下に。

登場人物、延いては世のすべての人を掬い上げよう、その深い深い根を掘り下げ、掘り下げたその先はどこかに繋がる(一致)とか、出口(救い)があるだろうという思いで観ていた。それはさながら地面の至る所を掘り下げる様に。だけどどこにも繋がらなければ辿り着く所も無く、ただただ足下が不安定になっていって、体がぐらつき、私は酔って物

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ある雨の日の散文

ある雨の日の散文

雨だ。出かけるのが億劫で、ベッドに横たわっている。雨の中を歩く楽しみを知りたい。
同じ様に、人生を歩む楽しみも知りたい。
人生なんて、みんな必死のパッチなのだろうか。気を抜いたら、良くも悪くも自分をこの世界の中心みたいに考えてしまう私は、私ばかりが必死のパッチで生きているとつい思ってしまう。悪い癖である。

と言っても、外側が必死なのではなく、内側が必死なのだ。思春期の頃から今に至るまで、心はいつ

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春眠としくじり

春眠としくじり

しまった。機会を逃してしまった。
私は飛び起きた。

昨晩は珍しく、
夜中一度も目覚めずに
今朝まで眠り続けることができた。

またずいぶん寝汗をかいていたけれど、
眠れたことの方が嬉しかった。

起きて朝食を済ませてからも、
まだ眠い。
結局うたた寝をし、そのまま正午まで。

しまった。
目を開けたか開けていないか、
意識があったかそうでないか、
という夢と現実の隙間で気がついた。

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遅い衣替え

遅い衣替え

私は幼少期から病気を患い、人生の序盤で「普通」じゃなくなった。でもそうしたら「特別扱い」されるようになり、もちろん嫌なこともあったけれど、みんなと少し違う場所にいる感覚は、少しだけ幼い私を得意にさせた。けれどそんなに世の中は甘くない。すぐに「特殊扱い」もされるようになり、悪気の無い言葉も温度の無い言葉も冷たい言葉も、私に投げかけられては心に棘を残していった。どうやらその棘は溶けるのに相当な時間を要

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予感

予感

暇だ。とは言えこの世の中、「暇」なんて今やあるのだろうか。本を読む、テレビを観るなどに加え、今はSNSやサブスクなど多様な情報やエンターテイメントがあるのだから。
なんて、今や当たり前の話をしているけれど、でもそれってリッチな話だよなぁと思う。これらはすべて、お金で手に入るものなのだから。「貧乏暇なし」とは言うけれど、ある意味で「裕福暇なし」である。うーん。違うか。この言葉にするにはそもそも、「暇

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投影

投影

私は惚れっぽい。
とは言え、四六時中恋をしているという訳ではないし、誰でも良いという訳でもない。
ただ、「この人が好きだ」と思うのにあまり時間を要しないみたいだ。
「人に好感を持ちやすい」というのが正確な表現だろうか。良く言えば、「人の良いところを見つけるのが得意」なのかも知れない。もちろん、好感を持つのと同じ速度で、嫌悪する場合もあるけれど。

そんな私は先日また心を奪われた。待ち合わせの場所

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冬の空気

冬の空気

「一難去ってまた一難」
「一喜一憂」

そんな言葉があるくらいなのだから、
やっと苦労を乗り越えたのに、また…
なんてことはたぶん、この世界で私だけではないのだろう。
落ち込んだり喜んだり…って何回繰り返してんだ?
なんてことも、私だけじゃないのだろう。
この世界の不条理は、おそらく私にだけ起こっているのでもないのだろう。

そう思うと、幾分かほっとする。

だけれど、「辛さ」「苦しさ」「し

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喜劇

喜劇

私がここまで生きてこられたのは、
後ろ向きのなかで
絶望の合間合間で
希望を持ち続けてきたから。

前を向いて、とよく言われるけれど
どんなに後ろ向きでも、今生きていることが
私にとっての最大の「前向き」なのだ。

だから、
頑張ってきた って
思ってもいいですか

頑張ってきたのに って
愚痴ってもいいですか


もう期待したくない
希望も持ちたくない
それに躓いて転ぶのなら

ただ

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どうでもいい話

どうでもいい話

「500mlの沸騰したお湯に茶葉を入れてしばらく煮出す」

とりあえずお湯を沸かして
茶葉を入れてみるも、そこで悩む。

しばらく、とは?

ここに躓く人とそうでない人は
日本人において何対何くらいの割合なのだろう。

私は躓く。
いや、「しばらく」てどのくらいやねん。
と一旦ツッコむ。

でも超えられないハードルではない。
なんとか自分で折り合いをつけて、
納得のいく答えを求めて実行す

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夢

リッチな潜水船に乗っている夢を見た。その目的こそ忘れたが、そこに至るまでのストーリーがあって、壮大なアドベンチャーだった。

なのにいざ出航すると、他にも知らない人が乗って来て、人に気を遣い、自分のハンデを気にする小さな部屋の話になった。
私は落ち着きなく、親指の逆剥けをいじっていた。

そこで目が覚め、
ぼやっとしたまま親指を触ると
逆剥けなんて無かった。

只の昼寝だった。
すべては頭の

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猫舌

猫舌

 



⁡猫舌は食べ方が下手なだけ
らしい。

⁡でも皆と同じものを食べた時
私は舌を火傷している。

⁡皆はしていないのだろうか。

⁡私は生き方が下手なのかも知れない。

⁡皆と同じ道を歩んでも
私は傷ついたりする。

⁡皆は平気なのだろうか。

⁡皆が正解で私が不正解でも
私が正解で皆が不正解でもない。

⁡私は傷ついている
それだけなのだ。

⁡だから、
「下手」とは言わないでほしいな

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雨傘

雨傘



⁡今日は昼からずっと雨だった。
だから私は安心していた。
少し浮かれてもいたかも知れない。

⁡晴れた日に外出しないと抱く
あの罪悪感はなんだ。いや、
罪悪感と言うより、「損をしている」感。

⁡そんな不本意な「感」を綺麗さっぱり流してくれる。
雨はどこか、消極的な感情を許してくれる気がする。



⁡いつか、テクノロジーの発展で
傘を持たずして、濡れずに外を歩ける日が
来るのだろうか。

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お風呂

お風呂

⁡あー、お風呂に入らなくては。

⁡気が向かない理由で
言葉拾いをする。

⁡リビング(と同じ階にお風呂がある)
に降り立つことは
冷たい湖につま先を浸けるようだ。

⁡息ができない
生を感じられない世界に
向かうのと同じことだ。

⁡ベッドのあるこの部屋には
私の生がある

⁡言葉を拾う許しがある

⁡生活に足を浸けることが
怖いなんて
人間と言ってよいのでしょうか?

⁡社会の上に生活があるっ

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流動的

流動的




今週の前半、
何にもする気が湧かず
私はどうしてしまったのかと思っていた。

出かけてもただただしんどく、
お得意の愛想を振りまくことすら
しんどかった。

好きな音楽を聴くことさえ、
気が乗らないこともあった。

このご時世、
精神も限界が来たのだろうか。
それとも、とうとう
感情も気力も出し切って、
私の心は生クリームの絞り袋みたく
ゴミ箱へ捨てられるその状態にまで
なってしまっ

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