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<書評>『アラブ的思考様式』、『アラビア遊牧民』
『アラブ的思考様式』 牧野信也著 講談社学術文庫 1979年
『アラビア遊牧民』 本田勝一著 講談社文庫 1972年 初出は1965年の朝日新聞
『アラブ的思考様式』は、『アラビア遊牧民』と同じ講談社文庫でも「学術」と称している専門的なものであり、本田勝一のようなルポルタージュではないが、東京外語大教授の著者が実際にアラブで経験したこと及びアラビア語に関する研究成果をまとめたものである。従って
<書評>『ゲルマン、ケルトの神話』
『ゲルマン、ケルトの神話 Mythologie Germanique, Mythologie Celtique』トンヌラ E. Tonnelat ロートG. Roth ギラン F.Guirand著 清水茂訳 みすず書房1960年第1刷、読んだのは1979年第5刷。原著は1935年パリ。
今日では、ハリウッド映画、日本のアニメ、そしてゲームの世界に、ゲルマン及びケルトの神々・英雄・精霊・魔術師の
<書評>『ミシュレ 魔女』
『ミシュレ 魔女 La Sorciere』ジュール・ミュシュレ Jules Michelet著 篠田浩一郎訳 岩波文庫 1983年 原著は1862年
原題のLa Sorciere(ラ・ソルシエル)は、元々「妖術師」という意味で、これが広く「魔女、巫女」の意味で使われるようになった。また、名詞のsorcellerie(ソルセレリ)というフランス語は「魔法、妖術、離れ業、神技」とあり、動詞のso
<書評>『Animal Farm (動物農場)』
『Animal Farm (動物農場)』George Orwell ジョージ・オウウェル著 1945年初版 読んだものは、1987年のPenguin books(ペンギンブックス) 日本では、翻訳が多数出版されている。
誰もが知っているスターリン批判となった、英国作家オウウェルの『動物農場』。動物たちが、農場主に反乱を起こし、動物による「Beasts of England (イングランドの動物
<書評>『朝の影のなかに わたしたちの時代の精神の病の診断』
『朝の影のなかに わたしたちの時代の精神の病の診断 In de schaduwen van morgen Een diagnose van het geestelijk lijden van onzen tijd』 ヨハン・ホイジンガ Johan Huizinga 堀越孝一訳 1971年 中央公論社 原著は1935年
オランダの歴史学者であるホイジンガは、『ホモ・ルーデンス』により哲学者として
<書評>『フランス・ルネサンスの人々』
『フランス・ルネサンスの人々』 渡辺一夫著 1979年白水社
フランソワ・ラブレーの大著『ガルガンチュアとパンタグリュエル物語』を翻訳した、日本におけるフランス中世文化の大家である渡辺一夫が、ラブレーを翻訳する過程で生み出された業績をまとめた評論集。特にユマニスム(ヒューマニズム)という概念に関する論考が中心となっている。
私は既に、この『ガルガンチュアとパンタグリュエル物語』全5巻(岩波
<書評>『古代ユダヤ教』
『古代ユダヤ教 Das Antike Judentum Gesammelte Aufsatze zur Religionssoziologie 副題は「宗教社会学に関するエッセイを集めたもの」(注:この「エッセイ」は、日本で通常理解されている「雑文」「散文」といったものではなく、「論文」という意味で使用している。)』全二巻 マックス・ウェーバー Max Weber著 内田芳明訳 みすず書房 19
もっとみる<書評>『ガルガンチュア物語』、『パンタグリュエル物語』
『ガルガンチュア物語』、『パンタグリュエル物語』フランソワ・ラブレー著 渡辺一夫訳 岩波文庫全五冊(『第一之書』から『第五之書』まで) 原著は1532年頃発行 文庫は1973年発行
日本のフランス文学及び中世ヨーロッパ文化の大家渡辺一夫による、史上有名な翻訳である。渡辺は、ラブレーのこの作品を翻訳する際に、必要に迫られて中世ヨーロッパ文化を調べることになったが、その結果中世ヨーロッパ文化の大
<書評>『ホモ・ルーデンス 文化のもつ遊びの要素についてのある定義づけの試み』
『ホモ・ルーデンス 文化のもつ遊びの要素についてのある定義づけの試み Homo Ludens : Proeve eener bepaling van het spel-element der cultuur door』 ヨハン・ホイジンガ Johan Huizinga 里美元一郎訳 2018年 講談社学術文庫 1971年 河出書房新社発行のものを底本にしている。原著は1938年ライデン、オランダ。
もっとみる<閑話休題>1987年3月『現代思想 総特集 折口信夫』から
折口信夫という人は、日本の民俗学の草分けである柳田国男の弟子であるが、その後柳田とは異なる方向に民俗学の研究を進めた偉大な学者である。また、釈迢空という筆名で和歌や詩を作った歌人でもあった。折口はまた、民俗学のみならず国文学や神道についても独創的な研究を続け、「まれびと」、「貴種流離譚」などの独自の用語を創造したことでも著名である。戦後は、國學院大学教授として後進の育成に寄与するとともに、日本の
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