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再読

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もう一度読みたい、読み返したいものをまとめています。
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#エッセイ

大人だって冒険に出かけちゃえるもんね

大人だって冒険に出かけちゃえるもんね

もう、やけくそだった。この妙に荒ぶった気持ちをどうにか鎮めたくて、すっかり日の落ちた暗闇の中私はハンドルを握った。

その日は週末で、月末で、その他あらゆることが重なり珍しく残業した。この後用事もないから残業自体には何も思わないけれど、一方でなんとなくやけっぱちになっていた。なのに自分が何をしたいのか、どうやってこの気持ちを発散させたいのか、なぜかわからなかった。

いつもと違う道を通って、コメダ

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「ちょっと思い出しただけ。」きっと、そんな日々を生きていくんだろう。これからも、ずっと。

「ちょっと思い出しただけ。」きっと、そんな日々を生きていくんだろう。これからも、ずっと。

東京タワーが好きだ。

ただほんと、それだけの理由で、映画「ちょっと思い出しただけ」を観た。予告の節々に東京タワーが映るから。

" ちょっと思い出しただけ "

観終わった後に、本当にタイトル通りの感情になる映画だ。

来月、私の元カレと私の親友が、結婚する。

もっと言うと、17から22歳までの6年間の青春を捧げた私の元カレと、小学校1年の時「ともだちになってください」と手紙を渡して以降、20

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ティファニーで朝食を。松のやで定食を。

ティファニーで朝食を。松のやで定食を。

(2021年7月22日追記)
本エッセイに対する経緯説明や反省、まちの方へのインタビュー、それらを受けて学んだことを綴った記事を公開しました。
https://note.com/cchan1110/n/n07a45201dfaa

(2021年4月19日追記) 
4月7日に公開した、この記事について
https://note.com/cchan1110/n/n680cb90fec73

(2021

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ロマンチックでもなんでもない

ロマンチックでもなんでもない

知り合ったのはちょうど二年前。お互いにマッチングアプリで会話している大勢の中の一人だった。当時、彼は長く付き合っていた彼女に振られ、ボロッボロに傷心中だった。つい最近まで結婚したいだとか、あなたじゃないとだめだとか言っていた相手が実は浮気していて、しかも浮気相手は自分も面識のある大学の後輩で、さらにはそっちを好きになってしまったから別れたいと告げられた、なんてことが起きたらそりゃあ誰かと話してない

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真夜中の戯言

真夜中の戯言

「...も、しもし?」

「おお、やっと出た。電話は3コール以内に出る、研修でそう教わったよね?」

「はぁ...。って、誰なんですかあなた?」
「てか、一体何時に電話かけてきてると思ってるんですか。非常識にも程があるでしょ...」

時刻は深夜2:00を回っていた。

「まぁまぁ、細かいことは置いといてさ。なかなかないと思うよ?こういう機会」

「はぁ...。だから誰なんですか」

「俺は、君だ

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ちなんでばかりの人生を送ってきました。

これまで幾度、ちなんできたのだろうか。
接続詞多めでお送りいたします。



言葉には人の軌跡が宿る。使うワードのチョイスも、アクセントも、抑揚も。ぜんぶに人生がにじむ。
細部にまで人生がにじむから、同じ言葉でもちょっとずつ違う。なのに、自分の枠の中にいるとすぐ忘れちゃう。自分の言葉は世界共通だと思い込んでしまう。

でも、自分では気がついてない「癖」に、突然気がつくことがある。誰かから言われた

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好きな小説の話(横道世之介)

好きな小説の話(横道世之介)

ただ読んだ感想をツラツラと書きます。あらすじの紹介とかはしないです。

横道世之介を読んだのは自分が大学生ぐらいの時だったと思います。
この小説はその名の通り、横道世之介という若者を主人公にした青春小説です。
自分自身、この小説の中の主人公(世之介)が、その後の人生において、憧れの存在となりました。

この本にはドラマチックで小説的な展開などは特にありません。
主人公(世之介)の大学時代が淡々とつ

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ほろ酔い帰路でしか言えないから。

ほろ酔い帰路でしか言えないから。

酔った勢いで吐き出してしまいたい本当の言葉は一斉送信できない。

二時間980円、一品300円。大学時代は質よりもコスパで選んでいた居酒屋。ラクロスの練習終わりの疲労とともに、泥まみれになったジャンバーを申し訳程度にほろって、5、6人の同期でふらっと立ち寄るお決まりのお店。

アルコールは薄くたってよかった。バカ騒ぎはしらふだってできたから。ご飯は安い割においしくて、量もそれなりだった。いつもたわ

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闇の中の光

闇の中の光

私にとって、最も理想的にお酒をたしなんでいる様子が描かれている小説は「夜は短し歩けよ乙女」という、森見登美彦さんの作品である。

この小説は有名なので、ご存知の方も多いと思うが、簡単に紹介すると、黒髪の乙女と彼女に恋する大学のサークルの先輩との、偶然に装われた度々の奇遇の出会いを軸に摩訶不思議な物語が展開する、京都を舞台にした冒険活劇である。

黒髪の乙女という主人公は、変態オジサンに会おうとも、

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最終面接で好きな食べ物を聞かれた

最終面接で好きな食べ物を聞かれた

「好きな食べ物は何ですか?」

一瞬、自分の耳を疑った。社会人3年目。ここは会社の会議室。問いかけて来たのは、グループ会社の代表。私は今、転職活動の最終面接を受けている。

アイスブレイクですら使われないような話題だったが、動揺が心の中に留めた。生活レベルを見られてる?それとも本当に純粋に私の好きな食べ物が知りたい?「好きな食べ物」を聞かれたのは、新卒の時に同行した外出で話題に困り果てた上司が苦し

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祖母のマカロニサラダはわたしを救う 【おもひで、もぐもぐ】

祖母のマカロニサラダはわたしを救う 【おもひで、もぐもぐ】

前回の 肉じゃが大研究 の投稿から、5ヶ月近くも経ってしまいました。

例年より、時間があった2020年。「いっぱい書こう!」という目標があったにも関わらず、言うは易く行うは難しで、あっという間の2021年。今年は頭の中でぐるぐるしていることをコツコツ活字に変えていきたいと思います(決意!)。では、さっそく。

みなさん、「思い出の味」ってありますか?

あの頃、いつも食べていたあの味。
大切なだ

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横道世之介と言う男

横道世之介と言う男

「横道世之介」、僕の好きな小説のタイトルである。吉田修一さんの青春小説である。僕は青春小説が好きだ。ちなみに今でも自分は青春を生きていると思っている。バカだ。

横道世之介と言うのは、作品の登場人物であり、主人公であり、大学生。世之介と彼を取り巻く人々の人間模様を、過去の出来事(大学生時代)と、登場人物の現在とを織り交ぜながら描かれている。

世之介はひょうひょうとした青年で、のんきで優しく、お人

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