HOKUTO 9×9

土木技師。地球の環境を持続できる土木のあり方、農業や食等について学びながら、衣食住をとおした創作活動にも励んでいる。noteでは、『#ここで飲むしあわせ』の審査員特別賞他、受賞。本サイト内のマンガやイラストは、HOKUTO 9×9のきょうだい、AMOによる。週1回程度更新。

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土木技師。地球の環境を持続できる土木のあり方、農業や食等について学びながら、衣食住をとおした創作活動にも励んでいる。noteでは、『#ここで飲むしあわせ』の審査員特別賞他、受賞。本サイト内のマンガやイラストは、HOKUTO 9×9のきょうだい、AMOによる。週1回程度更新。

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闇の中の光

私にとって、最も理想的にお酒をたしなんでいる様子が描かれている小説は「夜は短し歩けよ乙女」という、森見登美彦さんの作品である。 この小説は有名なので、ご存知の方も多いと思うが、簡単に紹介すると、黒髪の乙女と彼女に恋する大学のサークルの先輩との、偶然に装われた度々の奇遇の出会いを軸に摩訶不思議な物語が展開する、京都を舞台にした冒険活劇である。 黒髪の乙女という主人公は、変態オジサンに会おうとも、突然演劇の主役を任されようとも、街中に風邪が蔓延しようとも飄々と楽しげに切り抜け

    • 内臓とこころ

      赤ちゃんは、たった十月十日の間に何億年にも及ぶ水中生物から陸上生物の進化の歴史を再現して生まれくるそうだ。 だから、人は進化の歴史の生命の記憶とそのおもかげが宿っているという。 それを実証したのが、解剖学者である三木成夫先生で、その詳細は『胎児の世界』に書かれている。 三木先生が描く胎児の世界は、単なる学問の世界を超えて、全ての人に共通し、細胞の記憶として残り続け受け継がれているひとつの大宇宙のような広がりを感じる。 私が今回読んだ、三木先生の処女作である『内臓とこころ』

      • あなたがいるから世界は変わる

        私は、公共の構造物をつくる土木の仕事をしている。 土木と言うと、多くの人はすごい、と驚いてくれる。でも、私が他の仕事を本質的に理解できていないのと同じで、土木構造物は社会にあふれているが、認知度は非常に低い職業ではないかと思うことがある。 私が自分の仕事に俄然やる気が出るのは、私たちが造るものを実際に使ってくれる方々と繋がったときだ。 プレッシャーもかかるけど、その人たちの姿を想うと、土木構造物でもっといい社会にしていこうと頑張れる。 モチベーションが落ちるのは、構造物の

        • マチネの終わりに

          『日蝕』で、芥川賞を受賞した平野啓一郎さんは、私が卒業した学校の先輩だった。 といっても、平野さんと学内ですれ違うこと等は決してあり得なかったことだし、その頃の私の学校生活が現在の私に何か影響があったか考えてみても大きな事件もなく、進路とか将来について思い悩むことも全くなかった、そんな過去のことだ。 私がその頃、興味を持っていたことのひとつは、アインシュタインの相対性理論だった。その理論を理解できるような年ごろでも頭脳でもなかったが、特にとりつかれたのが、光の速度を追い越せ

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          愛犬との暮らし

          我が家では、HOKUTOという犬を飼っていた。名前は、私のきょうだいにキノコ好きがいて、そこから、長野県にある有名キノコメーカーさんからいただいた。 狂暴だったけれど、すごく賢くて、食いしん坊で、家族思いだった。 ほくとが、我が家の最初で最後の犬だ。 ずっと犬が欲しくて休日のたびにホームセンター等のペットショップで物色していたのだけど、ぴんとくるものが全くいなかった。 多分、ペットショップ特有の、ただ可愛くて売るために生まれさせられた、という雰囲気が我が家には馴染まなかっ

          トマト君 カレー界を変える

          どんなに美味しい料理であったとしても、それがはじめて食べるものであれば、私の場合は、味の記憶が残るのはほんの一瞬の気がする。 でも、それが食べ慣れたもので、特に美味しかったらずっと記憶に残るように思う。 そうすると、料理名を聞いたら食べてもいないのに口の中に、においと味が広がる、そんな現象が起きる。 もうちょっと深掘りしてみると、例えば、今日の晩御飯は、うどんとお母さんが言ってたのに、ちらし寿司が出てきたりして「うどんの口になってたのに!」と腹を立てるなんてことが多いのは、ど

          目には見えない何かを目指すということ

          農林学校で農業を学んでいた宮沢賢治は、そこで豚の解体を目にして、ベジタリアンになったと聞いたことがある。 といっても、完全なベジタリアンだった訳ではなく、「社会」と「連絡」を「とる」おまじないとして、動物の命をいただくこともあったそうだ。 私は、毎日、冷凍の鳥の唐揚げをオーブンでこんがりと焼いて食べることを日課としているため、ベジタリアンとは程遠いのだけれど、宮沢賢治の『社会と連絡をとる』という言葉が好きだ。 賢治が意味していることとは全く違うが、はたらくことは『社会と連

          未来に託された想いを地図に遺すということ

          小さい頃から、雨の日が一番好きだった。 建物の中から眺める、空から静かに水が落る幻想的な景色は、何時間見ていても飽きない。 水は近くにありすぎて、当たり前すぎて、大切なことすら小さな私は感じていなかった。美しい水があることは奇跡だと深く感じたのは、水を専門とする土木技師になってからだ。 土木技師になったのは『地図に残る仕事』という、メジャーなキャッチフレーズに惹かれたのが理由のひとつだ。実際に、社会人に成り立ての頃は河川の大きな構造物を造ることに関わることが多く、その中の一

          本棚の秘密

          人の本棚がすごく気になる。だから、雑誌とかに作家さんたちの本棚が写っていたら、それをじっくり観察してしまう。 数年前、雑誌で色んな方の本棚を観察してみたら、圧倒的に多かった本が村上春樹さんの『騎士団長殺し』だった。 たしか小川洋子さんが、エッセイで書かれていたことだと思う。 小川洋子さんの本棚には、人に知られてもいい表向きのものと、決して知られたくない裏のものがあるらしい。表向きの本を取ると、その後ろ側に裏の本があるそうだ。 小川洋子さんの旦那さんはどうしてそれを隠さなけれ

          夏休みの蟬

          今年は、近隣の自然の音BGMに仕事をしている。 すると、時間によって、啼く鳥の声や種類が変わったり、季節の移り変わりに気付くようになった。 今日は一番ウグイスが啼いた日、とか、一番アブラゼミが啼いた日、とか、一番ヒグラシが啼いた日とかに敏感になる。 そして、今までどうして気付かなかったのか、さっぱり分からないのだけれど、たくさんの蟬が一気に啼き出すのは、学生の夏休みの始まりの日だという発見もあった。 暑い夏は大嫌いだが、全ての音がかき消されて、蟬の声一色に染まる時期はすご

          追憶のヒロイン

          人に貸して戻って来なかった本のひとつが、『夜は短し歩けよ乙女』だ。 本の話で意気投合したと思えた、会社の先輩に貸したっきり戻ってこなかった。 その先輩は、小説を一切読まない人だと少し経って知ったが、もう後の祭りだった。 私は『夜は短し歩けよ乙女』に、社会人一年生の頃、赴任先の田舎の小さな本屋で出会って、宿舎へ連れて帰った。 初めての一人暮らしに、テレビも車もないちょっと寂しい生活の中、その本は私の生活に癒しを与えてくれた。 本書の主人公『黒髪の乙女』に私は憧れた。 大酒飲

          少年と犬と夜と霧と

          ハチ公、パトラッシュ、ラッシー…。 優しくて飼い主に寄り添ってくれる名犬に憧れて、実家で犬を飼っていたことがある。 しかし、その犬は可愛い黒柴の仮面を付けた、とんでもなくかしこく、狂暴な生き物だった。 飼い主に従うのではなく、飼い主を使う。 ジャンプしたかと思えば、飼い主の二の腕に食いついてぶら下がっている。 食いしん坊で、いつも何かよこせと癇癪起こす。 そんな犬が、私たちと家族になってゆく中で、群れの一員として『待つ』という役割を担うようになった。 私が学校から帰る時間

          逆ソクラテスと逆さま自動車

          現在私は、学校に通っている。 通っているといっても、今年の授業は全部Zoomで、リアルではない。 実際に会うと、クラスメイトや先生たちはみんな違ってみえるんだろうな、と思う。 たまにだけれど、クラスメイトとZoom上でお茶会をしている。 2時間弱、学校のこととか、色んなことを思いつくままに話す。 先月のお茶会では、話題が最近読んで良かった本に及んだ。 人に良かったと紹介できる本を選ぶのは、結構難しい。 毎日たくさんの本が出版されて、きっと逆にたくさんの本が絶版になっている

          バッグの里帰り

          先日の休日は、愛車を半年点検に連れていった。社会人になった頃から、全く体調を崩すことなく、私を毎日会社に連れて行ってくれた、実に優秀作な車だ。 ただ、ここ数年調子が悪くなり、ガソリンのメーターも、満タンにガソリンは入ってるのに、ほとんどemptyを指しているし、トランクも自動で頭上に落下してくるようになった。 私の働き方が変わったのを機に、現段階では車があまり必要なくなってしまっていて、この点検を最後に愛車とお別れしようと、考えながら車に乗り込もうとした瞬間、社会人になって

          神様との出会い

          準備が整わないと、理解できなかったり、ただ通りすぎていくものがある。 でも、その中でも、不思議なことに、また出会ってしまうものがある。 それは、川上弘美さんの『神様2011』だった。 色々とくすぶっていた私の人生を、一気にぱたぱたと変えるきっかけをくださった方のおひとりが、noteで紹介されていたものだ。 その方は、本等で学ばれたことをそのままにせずに、実際に形にして味わって考える方だ。 『神様2011』。 私はこの本に、かつて出会ったことがあった。 数年前まで私は、湖

          なんちゃってナポリタン

          平日は仕事、休日は学校で、なんだかボーッとする時間がないくらいとても忙しいのだけど、なぜか幸せな気がする。 先日の学校の授業は、即興で詩の創作をするというものだった。 私は、文章を紡ぐのに人より倍時間がかかる。ましてや詩は、リズム感や、巧みに言葉を操る能力が必要とされる。 詩を作るなんて、中学生以来だろうか。 何だか、ちょっと気が重かった。 オンラインの授業に向かう前に、腹ごしらえをすべく、なんちゃってナポリタンを作る。 たっぷりのオリーブオイルに、ニンニク、唐辛子、