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ち あ き
2023年8月8日 07:50
朝涼。夏、涼しさの残る朝のひととき。空は、青と黄を混ぜ合わせたようなゆるやかな色彩で風はひっそりとしています。そんな夏の朝に私がフト、作りたくなるサラダがあります。材料は白ワインビネガー、お塩と胡椒、オリーブ油、そして好みのハーブと太陽のように真っ赤なスイカ。これは、スイカが主役の夏サラダなのです。まず、スイカは、サイコロほど大きさに切って見える部分の種を
2023年7月29日 09:32
サラリーマン役の俳優さんがひとり、食堂でトンカツ定食を食べるシーンが映し出されました。*差し出された定食を前に、背すじをすっと伸ばして「いただきます」と胸の前で手を合わせる男性。分厚く揚がったトンカツの真ん中のひと切れにソースとからしを落とし、箸でそっと持ち上げて、はふり、とひと口。よく噛んで、しみじみと肉の旨みを噛みしめてその美味しさに頬をふっと緩めて。次は塩で
2023年7月9日 20:47
家に帰ってからの楽しみがあると、つい、帰宅の足取りが弾んでしまいます。今夜はあいにく、雨模様の七夕だというのにちっとも気にかかりません。その訳はほかでもなく楽しみな夜ごはん。先週末に読んだ本、北欧の暮らしについて書かれたその本に興味をそそられて“今夜はおうちで、北欧ビストロを” とひとり、たくらんでいるのです。*キッチンに立ち冷蔵庫から取り出したのはじゃがい
2023年5月13日 13:43
あなたの、朝ごはんの定番は何ですか。私はもっぱらご飯にお味噌汁、カンタンなおかずといった和ふうの朝食です。あついお味噌汁を啜りふっくら炊けた白米を頬張ると、身体の芯がホカホカとして少しずつ目が覚めてゆきます。それでも品数が少ない朝ごはんですから、満足感を足すために工夫しているのが、お味噌汁です。季節の野菜を使うことはもちろん、本で読んだ新しいレシピを試したり、思い
2023年2月9日 11:52
かるい気分転換にとほんのり暮れていく町を気まかせに散歩していた時のことです。大きな通りを折れ、路地を少し入ったところに、ぽつんとみかん色に灯っている窓が目に入りました。ふつうのお家のようですがよくよく見ると看板が立っています。黒い板に白いチョークで書かれているのは「本日のぱん」という文字と英文字のメニュー。あら、こんなところに、隠れ家のようなパン屋さんです。木製の
2023年1月4日 07:01
少しだけ背筋をシャンとさせてキチンと手を合わせて、みんなで「いただきます」と声を揃える、お正月の朝。黒い漆塗りのお椀の蓋をそっと開けると、穏やかな湯気がふわふわとあがります。お出汁にお餅が溶けだした、ほんのり甘い匂い。やわらかい匂い。いつもの、お正月の匂いです。澄んだおつゆの中でトリや白菜、しいたけと一緒に丸もちはふくよかに煮えています。その上に、ぽっちり浮かぶ橙色のお
2022年12月14日 08:51
「寒いと身体が疲れるでしょう。そんなときはね、お出汁がいいんよ」「お出汁、ですか?」教えてくれたのは義理の母でした。「甘い飲み物より身体にやさしいし、お茶を飲むより満足感があるけんね。最近はスーパーにも出汁パックがよく売ってるから私はそれを使ってちゃちゃっと作っちゃう。色んな種類があるから、自分の口に合うものを見つけるといいね」なんとない天気のから私の冷え症の話に
2022年11月16日 16:27
見上げると並木のイチョウが秋の風にすっかり染め出されて枝先で、まぶしいほどの色づきを見せています。黄色い葉と葉の隙間から零れる午後の日差しがほんとうに綺麗で私はつい、上ばかりを眺めながらひとり、川沿いの並木道を歩いていました。休憩にと座った古いベンチで足もとに目を落としたときです。あら、と思いました。ライムイエロー、鶯色、みかん色、ボルドーにココア色。それから、扇
2022年10月19日 17:08
ひんやりする朝。ちょっと、あたたかくなれるものを食べたい、そんな朝です。キッチンに立って思い付いたのは子供のころ、日曜日に父がよく作ってくれた朝ごはんでした。作りやすいふたり分の分量を、ここに書いてみます。炊きたてのごはんに鰹のふりかけをさっくり混ぜ込んでお椀に二膳、よそっておきます。つづいて玉子を2コといて牛乳を大さじ2ほどと、塩を少々。タネを作ります。
2022年9月28日 10:43
今夜は、ほんとうに綺麗な月が空に浮かんでいます。ベランダに椅子を二脚とサイドテーブル、小さなランプを用意したらアーモンドチョコレートと赤ワインを持ってきました。「乾杯。」軽くグラスを合わせて夫婦ふたり、月明かりの下のささやかな夜会のはじまりです。*私はさっそく、包装を解いて箱を開き、敷き詰められた楕円体のチョコレートをひと粒、取り出しました。ツルンと滑らか
2022年8月24日 07:49
デザートの、無花果とヨーグルトを食べ終えて時刻はまだ午後六時。窓の外はほんのり明るく、そのまま一日を終えてしまうのはちょっと勿体無いような、金曜日の夕方です。本棚の脇の一冊の写真集が目に留まりました。ドイツの美しい港町が表紙のその本は主人のものです。そうだ、海を見にゆくのも楽しそう。新しく越してきたこの街は30分も車に乗れば港へ着きます。かんたんに身支度を整えて
2022年7月19日 09:06
友人とふたり、買い物帰り。ひと休みに、ちょっと甘いものが欲しいネ、と甘味屋さんへ寄ることに。古風な佇まいの戸をカラカラと引くと、「いらっしゃい」おかみさんの、明るい笑顔に迎えられました。*木製のカウンターとその奥に構える桐箪笥が黒茶に光って渋く、竹細工、扇子、和傘、茶釜といった装飾も加わって小粋な雰囲気のお店です。ふわふわと漂うオルゴールの音が耳に心地よく届いてきます
2022年7月9日 21:22
町の台所として親しまれる、古い商店街のすみっコでおばあちゃんたちが営んでいるお惣菜屋さん。赤いチェックのテーブル掛けが広がる机には小松菜と油揚げのお浸し、塩鯖、胡瓜とわかめの酢の物、ひじきの煮物、唐揚げ、いりこの甘辛煮など昔ながらの素朴なお惣菜がパックされ山になって並んでいます。***大学一年の春。入学式を終えた日の帰り道にそのお惣菜屋さんを見つけました。店頭
2022年6月21日 15:12
雨粒が隣の家のトタンに落ちてぱたぱたと、せわしなく音を立てています。こんな雨の日はこまごまとした片付けが捗ります。古いアルバムの整理をしていると、初めてシフォンケーキを焼いた日の、ニカッと笑う私と母の写真が出てきました。*図書館で借りたお菓子作りの本に載っていた不思議な形のスポンジケーキ。純白のホイップクリームがフチにぽってり乗っかっています。なにやら可愛く、美味し