真 夏 の 甘 味 屋 さ ん
友人とふたり、買い物帰り。
ひと休みに、ちょっと甘いものが欲しいネ、と
甘味屋さんへ寄ることに。
古風な佇まいの戸をカラカラと引くと、
「いらっしゃい」
おかみさんの、明るい笑顔に迎えられました。
*
木製のカウンターとその奥に構える桐箪笥が
黒茶に光って渋く、
竹細工、扇子、和傘、茶釜といった装飾も加わって
小粋な雰囲気のお店です。
ふわふわと漂うオルゴールの音が
耳に心地よく届いてきます。
店内には他に
ご年配の女性のお客さんがふたり。
私たちは一番人気という白玉あんみつを
注文しました。
「美味しい!白玉もっちもち」
「内装もすごくお洒落で、素敵、、
こんなお店が近くにあるなんて」
「ありがとうございます。
外から見ると小さくて目立たないけれど
常連さんに支えられているお店で。」
おかみさんと
そんなやり取りをしていると
「落ち着くところでしょう?
私たちもついつい寄りたくなっちゃうのよね」
先にいらしたご婦人のひとりが、にっこり。
「こちらのおふたりもご友人同士で
よく一緒にいらしてくださるんです。」
どうやら、ご婦人たちは
お店の常連さんでいらっしゃるようです。
*
「私たち、美味しいところを探しては
よくこうしてふたりで
ランチやカフェを楽しんでるの。
お互い、歳を重ねて
時間にゆとりができてからは特にね。
ここへ来る前もパスタランチしてきたのよ。」
「もやもやすることがあったときも
こうやって一緒に美味しいものを食べて、
話のネタにして二人で笑い飛ばしちゃえば
案外ラクになれるのよね。」
気さくなおふたりとのおしゃべりは楽しく、
仕事のこと、趣味のこと、将来のこと。
お話を聞いたり、ちょっとした相談をしたりと
会話が弾みました。
「大人になると、
友達ってますます貴重な存在よ。
だから、おふたりも是非ぜひ
ずっと仲良しで、ね。
それじゃあ、お先に。」
やわらかな笑顔を残して
ご婦人たちはお店を後にされました。
*
「とっても素敵なお店だったね。」
「うん。なんていうか、すごくいい時間だった。」
すこし涼しくなった、夕焼けの帰り路を
ふたり並んで歩きます。
「連れて行ってくれてありがとう。
あ、あと、これからもどうぞ、よろしく。」
「一緒に行けてよかった!
こちらこそ、よろしくお願いします。
じゃあ、また。」
妙にかしこまった挨拶を交わしていることに
お互いハニカミながら
大きく手を振って別れました。
“ 私たちのこれから ”
変わってしまうこともあるだろうけれど
何かあったとき寄り添える関係でいれたら
嬉しいな。
爽やかな夏の一日が暮れてゆきました。
これからもあたたかい記事をお届けします🕊🤍🌿