見出し画像

思い出の玉子かけごはん


ひんやりする朝。
ちょっと、あたたかくなれるものを食べたい、
そんな朝です。

キッチンに立って思い付いたのは
子供のころ、日曜日に
父がよく作ってくれた
朝ごはんでした。

作りやすいふたり分の分量を、
ここに書いてみます。



炊きたてのごはんに
鰹のふりかけをさっくり混ぜ込んで
お椀に二膳、よそっておきます。

つづいて
玉子を2コといて
牛乳を大さじ2ほどと、塩を少々。
タネを作ります。

火にかけたフライパンにバターを溶かして
良い香りがしたところに
先ほどのタネを流します。

ヘラで細かくかき混ぜながら
トロトロと火を入れて、
餡のような具合に仕上げたら
先ほど用意した鰹ごはんに
これを、たっぷりと滑らせて出来上がりです。

ほわほわと湯気が踊る、黄色いごはん。
我が家の玉子かけごはんです。

ほっかり炊けた白米。
バターの香りとふわとろの玉子餡。
それから鰹節の甘じょっぱさ。


久しぶりに食べる味は
気取らず大らかなお父さんの人柄を
そのままレシピにしたような
素朴で、やさしい味をしていました。



「なんで、今の仕事についたの?」

中学生のころ、父に
聞いたことがありました。

「家は植木屋をやっていたけれど、
兄弟も多くて
どうしても生活が苦しいときがあってね、
これではいけないと思ったんだよ。
自分は自分でちゃんとお金を稼ごう、
家族をもったとき、不自由がないように
働こうと思ったんだ。
資格があった方が安心だと思って
勉強して薬剤師になって、、
正直、仕事は大変だと思うことばかりだよ。
まあ、こう言うと
夢がないように聞こえるかもしれないね。
けれど、
そういう生き方だってあるんだよ。
こうして家族と平凡に過ごすのが
お父さんの夢だったんだ。」


ごはんを頬張りながら、
父の言葉がふと
蘇ってきました。



湯気のあたたさが
じんわりと
私の胸に沁みました。


あの時、見せてくれた父の手帳には
幼い頃の私と兄の写真が大切に
挟んでありました。



この記事が参加している募集

#つくってみた

19,510件

#今日のおうちごはん

18,759件

これからもあたたかい記事をお届けします🕊🤍🌿