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足もとの秋、ひらり。


見上げると
並木のイチョウが
秋の風にすっかり染め出されて
枝先で、まぶしいほどの色づきを見せています。

黄色い葉と葉の隙間から零れる
午後の日差しが
ほんとうに綺麗で
私はつい、上ばかりを眺めながら
ひとり、川沿いの並木道を歩いていました。


休憩にと座った古いベンチで
足もとに目を落としたときです。
あら、と思いました。

ライムイエロー、鶯色、みかん色、
ボルドーにココア色。
それから、扇形、卵形、ハート形、
ペンギンの足跡に似た形まで。

それぞれ、
どの木からやってきたものでしょう。
じぃっと見てみると
幾種類もの木ノ葉がそこに
色と形を重ねて、
にぎやかな秋をひろげています。




そこへ時おり、
円を描くような小さな風が
ぴゅうっと起こります。

落ち葉たちは、突然の風にさらわれて
カラ、コロ、と乾いた音を立てながら
舞っては落ち
舞っては落ち
その度に、アスファルトの上へ
綺麗な模様を描いています。


落ち葉の、かわいいコンチェルト。
くるくる丸く回って、自由に変化する絵柄。

それはまるで
美しい、木ノ葉の万華鏡を
覗かせてもらっているようでした。




しだいに日が落ち始め、
風が冷たさを増してきました。
そろそろ、帰らなくてはなりません。

私は、辺りを見まわして
いちばん綺麗に赤く染まった
カエデの葉を一枚、拾いました。
まだ、赤んぼうの手のひらほどの大きさの葉を
折ってしまわないように
ハンカチへやさしく挟みました。


家に着いたら
ミルクをたっぷり温めて
おやつにビスケットを食べよう。
それから
友人へ、このカエデを添えて
季節のお手紙を書こう。

いいことがあった日は
好きなことを繋げて、もっといい日に。


考えるだけで、胸の中に
楽しさが
ふっくらと発酵してゆくのを感じながら
私は来た道を戻りました。



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