タケチヒロミ(Roulottes)
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マリー・アントワネッ友|【連載】ドレスの仕立て屋の繕う日々
大人になったら、いつかお城から招待状が届いて、舞踏会にお招きされるに違いない。子どものころは真剣にそう思っていた。
わたしが育ったのは、西洋の城はおろか日本の城すらもない山のなかの田舎町だ。まわりには見渡す限り田んぼとりんご畑。踊りの会といえば集落の盆踊りくらい。それなのに、わたしはけっこう本気でそう思っていたのだ。
リカちゃん人形にドレスを着せながら、お姫さまのドレスの絵を描きながら、
【連載】ドレスの仕立て屋の繕う日々|羽を織る
コロナのとき、アトリエを出て自宅でしばらく仕事をしていたことがあった。二階の奥の扉をタンと閉め、部屋に籠ってドレスをつくった。わたしは仕事に集中すると、まわりのことがわからなくなる。なんなら子どもが居るということでさえ、ふと忘れてしまうようなときがある。
そんなわたしを見て、娘は言った。
「ドレスをつくっているときのお母さんって、昔話の『鶴の恩返し』の鶴みたい。戸を閉めて、羽根を抜いてドレ
泣きながら書いたエッセイが|note創作大賞2024 中間選考結果
note創作大賞2024 エッセイ部門の中間選考を通過したと連絡がきました。執筆中に感極まって、泣きながら書いていたんで(こわいよ)、うれしいです。
タイトルは、
「パンが食べられないのなら、ドレスを作ればいいじゃない!」娘の小さいころのことと、ドレスのことを書きました。
今まで、息子のことは記事にすることがあったけど、娘のことはあまり書いてきませんでした。食物アレルギーのことで、誤解や特別
【連載】ドレスの仕立て屋の繕う日々|魔法はないけど、ある。
一瞬でドレスをつくる魔法なんて、ない。
シンデレラの魔法使いは、ビビディ・バビディ・ブーと呪文を唱えて、ボロボロのドレスをあっという間にみごとな青いドレスに変えてみせた。でもそれはきっと、時間を止めていただけなのだ。
わたしの持論はこうだ。まず、魔法使いは時間を止め、「まあずいぶん派手にやられたわね」とつぶやきながらドレスをアトリエに持ち帰る。
「この生地は残念ながらもう使いものになら
兵庫うみまち坂越にて #夏の1コマ
兵庫県赤穂市坂越
とってもいいまちでした。
海が近くて、いい感じの町もある。まさに「うみまち」。
赤穂市坂越の旅行記をまとめました。→ 「好き」と暮らす豊かさについて|兵庫うみまち坂越
写真もたっぷり掲載しています。よかったらどうぞ。
「好き」と暮らす豊かさについて|兵庫うみまち坂越
旅って、じぶんのなかの「好き」との出会いでもある。わたしはどんなものが好きで、どんなものに心が動き、どんなひとと出会うのか。「好き」が導いてくれる旅は、いつもわたしのこころを強くする。
今回はそんな「好き」の強さに出会えた兵庫県赤穂市坂越の旅のおはなし。
北前船に魅せられて寄港地をめぐる旅今回旅をしたのは、兵庫県赤穂市の坂越という海辺のまち。ここは「北前船」の寄港地・船主集落のひとつとして日本
パンが食べられないのなら、ドレスを作ればいいじゃない! #創作大賞2024
ドレスデザイナーになるにはどうしたらいいですか? どこで学べばいいのですか? そんな質問を最近受けるようになった。
だけどわたしはいわゆる「フツー」の道を歩んでここまできていない。それどころか、中学生のときの家庭科の成績もひどかった。ここだけの話なのだけど、10段階評価でなんと2だった。そんなわたしが、いったいどうしてウェディングドレスを作れるようになったのか。
そこには、娘の存在が大き
「空海」をめぐる3つの旅|前編(京都・東寺で推し仏さまにであった話)
いきなりですが、あなたの推し仏はだれですか?
さて、わたくしは遅ればせながらこの春、とうとう仏像デビューを果たしました。推し仏像さまも見つかって(あとでいいますね)なかなか楽しいです。
きっかけは、大学院のレポートでした。最初は、うーん、仏教美術はいままで興味なかったなあ、でも必須授業だしやらないと、くらいに思っていたのですが、調べていくうちにまず、「弘法大師空海」にハマってしまいまして。
和歌山にて、人生最速10分で買った服で有吉佐和子文学賞の表彰式に出た話。
「あ! 明日の表彰式で着る服、家に置いてきた!」
レンタカーの車のなかでそう気づいたのは、和歌山市での表彰式を翌日に控えた夕方5時くらいのこと。場所は和歌山市から1時間半ほど離れた高野山の山のなかだ。
「ジャケットがシワになったらイヤだから最後に荷物に入れようと思って、入れるの忘れてきちゃった」
「ええ、嘘やろ、あかんやん」
車を運転しながら夫は答える。
そう、翌日は「有吉佐和子文学賞」