ラーメン替え玉半額の学割は、オトナの社会人大学院生にも通用するのか?
社会人大学生になって、やってみたかったことがあります。
それは「学割」
そう、学生割引です。
学生証を提示したら、割引料金でサービスが受けられるアレ。
最初は「この歳で大学生だなんて」という気持ちもありましたが、いまはもう気にせずじゃんじゃん使っております。
一番よく使っている学割は「美術館」などの入館割引です。美術館の受付でわたしを見て当たり前のように「一般入館券」を出そうとされている窓口の方に、スッと学生証を出しつつ「学割でお願いします」というと、たいていの方は気まずそうに「あ」と口にされ、学生証を一瞥した後でそそくさと「大高生入館券」に差し代えてくださるのです。
この一連のやりとりを恥ずかしいと思うこともありましたが、いまはもうぜーんぜん恥ずかしくないです。ガンガン学生証を使っております。
でも、果たして美術館や博物館以外の「学割」って、オトナの社会人大学生にも使えるのでしょうか?
例えば定食屋さんの「学生大盛り!」
とか、美容院の「学生カット」とか。
いちど試してみたいものだなと、わたしはつねづね思っていました。
でもさすがに学生カットは図々しいかな、ご飯やさんの大盛りはきっと食べ切れないだろうしなあ。それに断られると、そうとう恥ずかしいし…と、いままで躊躇していたのですが、研究旅行先の尾道で、またとない千載一遇のチャンスがやってきたのです。
尾道への旅の経緯はこちらに↓
尾道ラーメン
その日、わたしはお腹ペコペコでした。
というのも、研究調査のために神戸から日帰り在来線で尾道に来ていて、なんだかんだでお昼ご飯を食べそこねていたからです。
そのときの時間が16時半くらい。ランチタイムとディナータイムのはざまで、わたしはすっかり「ランチ難民」に陥ってしまっていたのです。
食べもの屋さんはどこも軒並み「営業時間外」
参ったなあ、と商店街をウロウロしているわたしに、とある一軒のラーメン屋さんが目にとまりました。
あいてる?
あいてるよね。
あいてた〜!
ホッとして店内の様子をのぞくと、ひとりの女性客がカウンターに座っています。
ああ、先客がいた。しかも女性ひとり。よかった。
先客が女性ひとりだったため、なんとなく心やすい気持ちでわたしも臆せず店内に入ることができました。
ドキドキしながら食券を買い(はじめて入るお店で食券を買うのって、なんだか勇気がいりません? その食券を店員さんに渡しに行ったほうがいいのか、座っていてもいいものか、勝手がわからなくて)テーブルにつきました。
愛想のいい店員のお兄さんがお水といっしょにオーダーを取りに来てくれました。よかった、合ってた。
さて、どれにしようかな。
やっぱり「尾道ラーメン」かな。
尾道ラーメン(しょうゆ)、麺のかたさは「かため」にしました。
学生さんはラーメン替玉半額ですって!?
しばらくすると、お待ちかねの尾道ラーメンがやってきました。
来た来た〜! うわあ、美味しそう。
いただきまーす。
フーフー、つるつるっ。
は〜、なにこれ、めっちゃおいしい。
前に一度、別のお店で尾道ラーメンを食べたときは、背脂がけっこうこってりめだな、と思ったのだけど、今日はそんなにしつこく感じないのです。
麺がかためだからか、するっといけて、しょうゆ味の滋味深いスープがぺこぺこだったお腹を温めてくれます。
ああ、おいしい。
ラーメンっていつも、食べても食べてもなかなか減らない気がするのだけど、今日はそうとうお腹が空いてたからか、するりとたいらげてしまいました。
満足してふと顔をあげ、テーブル横のメニューを見て、ある一文に気がつきました。
学生さんは替玉1玉無料。(大学・専門学校生は半額)
学割替玉サービスの案内です。
そういえば、店頭にも。
中高生は替玉無料、大学・専門学生は替玉1玉半額とあります。
学生証でOK…。
憧れの、学割ではないですか。
え、これって、オトナの大学生でもいけるのかな。
わたしがしばし逡巡していると、先客の女性が「替玉」をオーダーしているではありませんか。「替玉ください、バリカタで」
おお!
するとしばらくしてお兄さんがおわんに替玉を入れ、女性のもとに。女性は硬貨をお兄さんに手渡しています。
なるほど。現金手渡しでいいのか。
これでやり方はわかりました。
どうしよう。わたしもやってみようか。それでもためらうわたし。
しかし、冷静に判断してみると、いまのこの状況が「学割替玉」に挑戦するまたとないチャンスであるいうことに気がつきます。
いまの状況を冷静に脳内でリストアップしてみました。
博物館以外での「学割」に一度挑戦してみたかった
昼食を抜いていてお腹がぺこぺこだった
一杯食べてもまだお腹に余裕がある
その日めちゃくちゃ歩いていた(2万歩以上)
このお店のラーメンの背脂がしつこすぎない
先客が女性ひとりだけである
しかもその女性が替玉をしていた(女性でもアリ、と思わせてくれた)
しかもその女性が替玉のオーダー方法を実践して見せてくれ、やり方がわかった
お店のお兄さんが優しそう
たとえ断られたとしても「旅の恥はかき捨て」と言うではないか
ゆうても広島県はわたしのホーム(故郷)であり、広島弁ネイティブだ
わたしが学生(大学院生)でいられるのはおそらくあと2年
ものすごく条件が整っているではないですか。千載一遇のチャンスとはまさにこのこと。この先、あと2年でここまでの条件が揃うことってあるでしょうか、いや、きっとないでしょう。
先客の女性が替玉を食べ終え、「ごちそうさまでした」と立ち上がって、お店の外に出て行きました。これで店内にはわたしひとりになりました。
店内にはわたしひとり
ここで、最後の条件が加わりました。
お店のお兄さんが「ありがとうございました!」と言いながら女性の食器を片付けに来たそのとき、わたしはとうとう、あの一言を口にできたのです。
「あのう、替玉お願いします、学割で」
あまりにも唐突すぎたかと、あわててじぶんでフォローします。「あ、すいません、この替玉の学割って、社会人大学院生でもいけますか?」
お店のお兄さんは、笑顔で、
「いけますよ!」
と、答えてくれました。
そして、なにごともなかったように、「麺のかたさどうしましょ?」と聞いてくれたのです。
「あ、かためでお願いします」
ほんとは先客のお姉さんみたいに「バリカタ」って言いたかったけど、さすがにそれはね〜、通っぽすぎて恥ずかしいから、「かため」がせいいっぱいよ。(変なとこで恥じらうわたし)
お兄さんは学生証を見て「すごいですね、女子大生なんですね!」と言ってくれました。このユーモアのあるひとことに、どれだけ救われたことか。
場合によっては、大学生に「女子」をつけることに、抵抗を感じる人もいるでしょう。アナウンサーに「女子」をつけたり、職業に「女子」をつけることにはわたしも違和感を感じていますが、このときはそういった違和感をまったく感じませんでした。
それは、お兄さんの言葉に、純粋なリスペクトを感じたからです。わたしがもう若くないから、あえて「女子」をつけて茶化したとか、そういう感じもなくて、いくつになっても学ぶことへの素直な感心の気持ちだけが伝わってきたので、ちっともいやな気持ちがしなかったのです。
それどころか、お兄さんが「笑い」に変えてくれたことで、ふっと気持ちがゆるみ、ちょっと救われたような気がしたのでした。
こういうのってたぶん、言葉じりじゃなくて、気持ちの違いなんでしょうね。「ユーモア」が「笑い」として成立するのって、そこにリスペクトがあるかないかなんじゃないかな、そんなことを思ったりしました。
遅れてきた満腹
そうしてやってきた替玉。
どーん。
わ〜い! と思ったものの、替玉を見た瞬間、急に満腹中枢が満たされました。そう、満腹感が遅れてやってきたのです。
うわヤバい。
替玉ふた口目くらいからそこそこお腹いっぱいになってしまいましたが、麺そのものがおいしかったので無事完食することができました。
でも、最後の方は正直ちょっとキツかったかな。量的にね。
無理もない。わたしはまぎれもない「学生」なんだけど、体はやっぱりオトナだからね。でも、満足です。おいしかった。
挑戦してみてよかった。
それに尾道で、よかった。
うむ、後悔はない。
まとめ
というわけで、結論としては、「ラーメン学割替玉半額は、大人の社会人大学生でもいける」でした!
ただ後日、べつのラーメン屋さんで「学割は20歳以下の学生に限定」という貼り紙を見かけたので、どこのお店でもいけるわけではないことを追記しておきます。試してみるときには事前確認を忘れずに!
今回の学びまとめ
「いちどやってみたいこと」はやってみる
千載一遇のチャンスを逃さない
常にチャンスの状況を分析する
とにかくやってみよう!
でも注意して! 満腹は遅れてやってくるよ
ああ、楽しかった!
そして、ごちそうさまでした!
追伸:さすがにその日はお腹いっぱいで晩ご飯は食べられませんでしたが、そのおかげで翌日はかえって体重が減っていたのでした。めでたしめでたし。
▼お店情報
極とんラーメン 尾道店 https://gokuton.net/
▼関連note
この記事が参加している募集
だれにたのまれたわけでもないのに、日本各地の布をめぐる研究の旅をしています。 いただいたサポートは、旅先のごはんやおやつ代にしてエッセイに書きます!