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触れることと、温度と、優しさについて 「触覚する衣服」展

もう終わってしまったのだけど、とてもよい展示だったので。

24/7/7-14  ※神戸ファッション美術館での展示は終了しています。

「触覚する衣服 内在する自己を再発見する ファッション&アート研究」

神戸ファッション美術館で開催されたこの展示は、女子美術大学ファッション表現領域が主催する「触覚によるアプローチを通じて行ったファッション&アート研究活動」の成果を一般に公開したものです。

衣服を題材にしたインスタレーション作品と、視覚以外の全ての身体感覚を活用して世界を感じているメンバーたちの作品、そして研究者の寄稿からなる展示で、実際に作品に触れながら、「触れること」や「衣服」について思いをめぐらすことができる展示でした。

袖のついたオーガンジー素材のカーテンの間をくぐり抜けて。子どもたちが楽しそうにキャッキャとくぐっていましたが、大人だってこういうの、ワクワクします。ちいさいころ、カーテンとか巻きついて遊ぶの好きだったなあ。布にくるまれたいと思うのは人間の本能なのかしら。

ふわふわオーガンジー。触るとすべすべしていて気持ちがよいのです。

天蓋のなかには、視覚などにハンディキャップを持つメンバーさんや美術作家、そして学生さんたちが、自身の体験や感動をもとにして表現した「言葉」たちと、粘土のレリーフ作品が展示されています。

作品もそうですが、ことばたちもとても素敵でした。

心の動きをことばにすることと、手で触れて形にすること。じぶんではどうにもならないモヤモヤしたものを、こねこねして体のそとに取り出す。だいじだ。


「一緒に歩けるような、みんなで歩きながら支えながらそれでもいてもいいよというような」

板垣敦子《ジレンマ》

素敵な作品でした。


こちらはマントのような、衣服作品。

なかに入ってみました。

入ったとたん、温度が変わるのがわかります。外気の流れがふっと変わったように思いました。目を閉じると、より一層、今まで意識していなかった空気の流れや温度の変化を感じるのです。

ひんやりすべすべの布に守られて、ほんのり温かい。守られていて、気持ちがいいのです。包まれているほうが、息がしやすかった。

「包まれているほうが息がしやすい」これも衣服の役割なのかもしれません。

「息がしやすい」ってことは「生きやすい」ってこと。

その服を着ていたほうが、生きやすいってこと、たしかにあるよなあと、わたしは思います。

服に守られるってこと、あると思うんです。身体的にもそうだけど、精神的にも。心の鎧的な。

服のなかからみた景色

そう考えると、

「みんなと一緒に歩けるような」「それでもいていいよと思えるような」

そのために服をつくるわたしにできることが、まだめちゃくちゃあるじゃないかと、意味なく鼻息を荒くしていたのでした。

こうしちゃいられない。

いい展示を見ると、「わたしもこうしちゃいられない」という思いに駆られます。

とてもよい展示でした。


そして、この研究の今後にも、注目したいなと思いました。


※神戸ファッション美術館での展示は終了しています。

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