田口ランディ

作家・エッセイスト/「一般社団法人クリエイティヴ・ライティング・センター」代表理事・「…

田口ランディ

作家・エッセイスト/「一般社団法人クリエイティヴ・ライティング・センター」代表理事・「YAMI大東洋医学ゼミ」、「野菜とココロを育てるプランター自然栽培講座」、「ドラマdeオープンダイアローグ」代表・「noteマガジン「ヌー!」を発行中。(月額500円)

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    「ムカっ」「グサっ」「モヤっ」ときたことを書いています。たまに「ドキっ」「イタっ」「ホロっ」ときたことも書いています。読んでハッピーになることは、あまり書いていないと思う。お得な情報というのもないと思う。時々、短い小説も書きます。

  • 恋するリコーダー・本村睦幸さんからリコーダーを教えてもらう

    • 13本

    楽譜が読めない音楽音痴でド素人の私・田口ランディが、プロのリコーダー奏者である本村睦幸さんからリコーダーを習い、バロック音楽を演奏するという野望達成までを連載します。本村さんも「田口ランディさんと始めるリコーダー」という記事を教える側の視点から書いています。合せて読めば、きっとあなたもリコーダーでバロック音楽が吹けるようになる……かも。

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    水俣 天地への祈り

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    ひかりのメリーゴーラウンド (よりみちパン!セ)

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    田口ランディ

記事一覧

治 神

手が汚れている。 何度も洗っているのに、今日の手は汚れている……そう感じた。物理的に清潔なのに、なぜ汚れているように思えるのか。不可解だ。 きれいだと感じる日もあ…

田口ランディ
4週間前
78

マイム マイム マイム マイム

高校の文化祭のラストと言えば、フォークダンス。 ……と、書くと自分でも「げっ!」と思う。 照れる。そんな時代もあったのだ。夕陽の校庭で手をつなぐ男女。スピーカーか…

田口ランディ
1か月前
71

わたしは世界に向けたドア

消えた。確かにここに置いたのに。緞帳の裏に置いたはずのカセットデッキがなかった。兄に内緒で持ちだしたものだった。文化祭が終わった埃っぽい講堂を探して歩いた。どこ…

田口ランディ
1か月前
65

「沈黙の艦隊」とレオ・シラード(後編)

3日前、ネットフリックスで「アインシュタインと原爆」というドキュメンタリー映画を観た。 晩年のアインシュタインが日本人記者に原爆製造に関する責任を質問される。彼…

田口ランディ
2か月前
53

「沈黙の艦隊」とシラードの未来予測

不思議なんだけど、嘘を書くと人は本当だと思い、事実を書くと「これは嘘でしょう」と言われる。小説を書いてきて思う。「作家はありそうなことしか思いつかない。ありえな…

田口ランディ
2か月前
73

ベランダの農学校

〈ベランダの農学校〉をつくりたかった。 私が自然栽培と出会ったのは、能登だった。羽咋の元スーパー公務員・高野誠鮮さんとは20年来の友人で、彼が木村秋則さんの提唱す…

田口ランディ
2か月前
73

人生を創造する文章術

「文章を書くことで心が安定するのはなぜか?」 〈一般の人に文章を書かせること〉についてこの8年近く試行錯誤してきた。文章講座を開催した当初は、受講者の文章が上達…

田口ランディ
2か月前
119

社会的マイノリティの意見

1月20日の土曜日だ。イベントがあって東京に出た帰りだった。 夜の熱海駅の構内にその男はいた。いつもは他の指名手配犯と一緒に並んでいるはずの男は、一人で壁に貼られ…

田口ランディ
3か月前
48

冥王星と能登

2006年8月。チェコのプラハで行われた国際天文学連合の総会で、冥王星を惑星とする定義に対して、多くの天文学者から反対の意見が出た。会議は難航したが、ついに惑星…

田口ランディ
3か月前
168

正気の人生

「やっと、正気に戻った。長いこと気が狂っていた」 ……実感だった。振り返ってみるとそれしか浮かばなかった。横浜中華街は人で溢れていて、忘年会の面々は気のおけない…

田口ランディ
4か月前
177

あなたに郵便物が届いています

明け方、うとうとしていたらある事がひらめいた。それで、忘れないうちにこのことを書かなければと、急ぎ、デスクに向った。 とても大事なことで、これを伝えなければ。強…

田口ランディ
5か月前
180

夜空の扉

犬に起こされた。犬が敷物をならしている。 時々やるのだ。前脚でひっかいてガサガサうるさい。 起こされたのじゃない、起きていたのだ。疲れていたのに眠れなかった。プロ…

田口ランディ
7か月前
95

葛藤は疲れるんです

 霊界というものが存在し、亡くなった人がそこから地上を見ることができたとしたら、ジャニー喜多川さんは何を思っているのかな。わからないけれど「お騒がせしてすみませ…

田口ランディ
7か月前
108

いまだ雨には傘をさすしかない人間

この4月から十代の子たちと一緒に授業を受けている。授業をしているんじゃないよ、授業を受けているの。学生として鍼灸学校に入学したからね。 で、4月から夏休みまでの…

田口ランディ
8か月前
89

近未来タイムトラベル

愚痴に聞こえたらごめんよ。 でもね、最近よく遭遇する場面なんだよな。 銀行に行った。あれ、銀行の窓口が減った。窓口に人がいない。そう、銀行の窓口業務はインターネ…

田口ランディ
8か月前
62

遅いとか早いじゃなく、そういう時。

期末テストの成績発表。絶対絶命と思っていた科目が無事に通過。夏の補習もない。9月半ばまで学校に行く必要はなくなった。すごくうれしい。 前期最後の今日、学校で「就職…

田口ランディ
8か月前
98
治 神

治 神

手が汚れている。
何度も洗っているのに、今日の手は汚れている……そう感じた。物理的に清潔なのに、なぜ汚れているように思えるのか。不可解だ。
きれいだと感じる日もある。血色のせい? 湿気や乾燥の度合いだろうか。すっきりとして曇りがなく、清々しい手。
「よし!」と思える手の日もある。

昨日、今日と自分の手が気に入らない。なんだかすっきりしない。よく洗ったし、クリームをすりこんですべすべにもしてみたの

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マイム マイム マイム マイム

マイム マイム マイム マイム

高校の文化祭のラストと言えば、フォークダンス。
……と、書くと自分でも「げっ!」と思う。
照れる。そんな時代もあったのだ。夕陽の校庭で手をつなぐ男女。スピーカーから流れる音楽は、マイム マイム。
この曲がどこの曲かも知らなかった。ちょっとエキゾチックなアラビア風のメロディー、軽快なテンポ。今どきの高校生は絶対に踊らないだろうけれど、60年代〜70年代の高校文化祭では定番だったんだよ。
マイム マイ

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わたしは世界に向けたドア

わたしは世界に向けたドア

消えた。確かにここに置いたのに。緞帳の裏に置いたはずのカセットデッキがなかった。兄に内緒で持ちだしたものだった。文化祭が終わった埃っぽい講堂を探して歩いた。どこにもなかった。置き忘れたとは思えない。忽然と消えた。先生に相談した。美術部の顧問の山下先生は「ちゃんと探したか?」と言っただけ。関わりたくないみたいだった。

ちゃんと探したさ。兄になんて言おう。当時としては高価な機械だった。ちょっとだけ、

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「沈黙の艦隊」とレオ・シラード(後編)

「沈黙の艦隊」とレオ・シラード(後編)

3日前、ネットフリックスで「アインシュタインと原爆」というドキュメンタリー映画を観た。

晩年のアインシュタインが日本人記者に原爆製造に関する責任を質問される。彼は否定するが……唯一の間違いとして「ルーズベルト大統領に宛てた手紙に署名した」ことを語る。
そのシーンに挿入されたモノクロ写真、アインシュタインの隣に写っていたのがレオ・シラードだ。

でも、この映画の中にレオ・シラードの名前は一度も出て

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「沈黙の艦隊」とシラードの未来予測

「沈黙の艦隊」とシラードの未来予測

不思議なんだけど、嘘を書くと人は本当だと思い、事実を書くと「これは嘘でしょう」と言われる。小説を書いてきて思う。「作家はありそうなことしか思いつかない。ありえないことが起きるのは現実の中だけだ」と。そうなんだよ、私が思いつくようなことは誰でも思いつく。その程度のイマジネーションしか持ち合わせていないんだ。現実こそ荒唐無稽だ。

ドラマ「沈黙の艦隊」を観た。シーズン1で8話まで観た。観終わって頭に浮

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ベランダの農学校

ベランダの農学校

〈ベランダの農学校〉をつくりたかった。
私が自然栽培と出会ったのは、能登だった。羽咋の元スーパー公務員・高野誠鮮さんとは20年来の友人で、彼が木村秋則さんの提唱する「自然栽培」を本格的に広める手伝いをすると言う。
さすが高野さんのやることは違う。当時、私たちの認識では「農協は自然栽培の敵!」だったのに、高野さんは羽咋のJAと協力して自然栽培塾を始めたのだ。物事を逆手に取って成功させていく。高野さん

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人生を創造する文章術

人生を創造する文章術

「文章を書くことで心が安定するのはなぜか?」

〈一般の人に文章を書かせること〉についてこの8年近く試行錯誤してきた。文章講座を開催した当初は、受講者の文章が上達すればいいな、と思って楽しく書いてもらう工夫に苦心した。

うまい文章とはどういう文章か?
「個性的で自分らしい文章」「テーマが明確でリズム感がある」「視覚化ができていて情況がありありと浮かぶ」「五感で書いている」「感動が伝わってくる」…

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社会的マイノリティの意見

社会的マイノリティの意見

1月20日の土曜日だ。イベントがあって東京に出た帰りだった。

夜の熱海駅の構内にその男はいた。いつもは他の指名手配犯と一緒に並んでいるはずの男は、一人で壁に貼られていた。あ、今日は桐島聡は一人なんだな、と思った。珍しいな。

指名手配犯の顔写真を見る癖がある。つい見てしまう。行方不明の人もそうだ。警察署に掲示してあり、じっくり見てしまう。なんでかな。そういえば、初期の私の小説は「突然人が消える」

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冥王星と能登

冥王星と能登

2006年8月。チェコのプラハで行われた国際天文学連合の総会で、冥王星を惑星とする定義に対して、多くの天文学者から反対の意見が出た。会議は難航したが、ついに惑星の新たな定義が採択された。

この年、人類は冥王星を失った。

私が子どもの頃、惑星は、水、金、地、火、木、土、天、海、冥と覚えた。いま、太陽系の惑星に冥王星は含まれていない。太陽系外宇宙を旅して戻って来る軌道の長いこの星が、太陽系から消え

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正気の人生

正気の人生

「やっと、正気に戻った。長いこと気が狂っていた」

……実感だった。振り返ってみるとそれしか浮かばなかった。横浜中華街は人で溢れていて、忘年会の面々は気のおけない友人たちだった。いきなりの正気発言に、みんな「どういうこと?」って、驚いていた。

「うまく説明できるかどうかわからないけど、今年はっきり自覚したんだ。私は長いこと正気じゃなかった。頭がおかしかった」
「いまは正気なんだね?」
「いまはす

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あなたに郵便物が届いています

あなたに郵便物が届いています

明け方、うとうとしていたらある事がひらめいた。それで、忘れないうちにこのことを書かなければと、急ぎ、デスクに向った。
とても大事なことで、これを伝えなければ。強く伝えたいことが降りてきたのは久しぶりのことだった。

少しだけ、ゆうべのことに触れておく。
ゆうべは娘の体調が悪く、肩凝りがひどくて頭が痛いと言う。それで寝る前にしばらく娘の身体をマッサージした。家族の体調を整えるために通い始めた鍼灸学校

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夜空の扉

夜空の扉

犬に起こされた。犬が敷物をならしている。
時々やるのだ。前脚でひっかいてガサガサうるさい。
起こされたのじゃない、起きていたのだ。疲れていたのに眠れなかった。プロバイダーに接続できなくなって復旧作業でパソコンにしがみついていたせいだ。
トイレに立ったら、犬も着いてきて、庭に出ようと誘う。
夜の庭に出るのが好きなのだ。外でのびのびシッコをしたいんだ。

台風が空を大掃除したらしく、めちゃくちゃきれい

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葛藤は疲れるんです

葛藤は疲れるんです

 霊界というものが存在し、亡くなった人がそこから地上を見ることができたとしたら、ジャニー喜多川さんは何を思っているのかな。わからないけれど「お騒がせしてすみません」と思っていても「悪かった」とは思っていないんじゃないか。

 性犯罪の加害者って、ほとんどが罪悪感を持てない。……というか、罪悪感が持てないから犯罪に発展してしまうんだと思う。どうして?と聞かれても、なぜなのかは専門家でもはっきりしない

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いまだ雨には傘をさすしかない人間

いまだ雨には傘をさすしかない人間

この4月から十代の子たちと一緒に授業を受けている。授業をしているんじゃないよ、授業を受けているの。学生として鍼灸学校に入学したからね。

で、4月から夏休みまでの前期と呼ばれる授業で、講師の先生方の多くが「大谷翔平」の話題を取り上げたんだ。彼の名前をテレビで聞かない日はないくらいで、大谷翔平さんは今や世界の野球少年の憧れ……なんだろう。だから、先生方は大谷さんのことを例に取れば、生徒は興味を持つと

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近未来タイムトラベル

近未来タイムトラベル

愚痴に聞こえたらごめんよ。
でもね、最近よく遭遇する場面なんだよな。

銀行に行った。あれ、銀行の窓口が減った。窓口に人がいない。そう、銀行の窓口業務はインターネットバンキングの普及のおかげで激減。多くの手続きはネットで簡単にしかも安くできる。
それはわかっているんだけど……、この銀行はめったに使わないし家から近いのでま、いいかって感じだった。

入っていくと受付けがあって案内の女性が立っていた。

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遅いとか早いじゃなく、そういう時。

遅いとか早いじゃなく、そういう時。

期末テストの成績発表。絶対絶命と思っていた科目が無事に通過。夏の補習もない。9月半ばまで学校に行く必要はなくなった。すごくうれしい。
前期最後の今日、学校で「就職説明会」があり、鍼灸マッサージ関係のいろんな企業の担当者のみなさんとの自由面談が開催された。とはいえ、無事に卒業した時、すでに66歳になっている私を雇いたい会社なんかあるわけもなく(笑)、マスクで年は誤魔化して面談を受けるのは申し訳ない感

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