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近未来タイムトラベル

愚痴に聞こえたらごめんよ。
でもね、最近よく遭遇する場面なんだよな。

銀行に行った。あれ、銀行の窓口が減った。窓口に人がいない。そう、銀行の窓口業務はインターネットバンキングの普及のおかげで激減。多くの手続きはネットで簡単にしかも安くできる。
それはわかっているんだけど……、この銀行はめったに使わないし家から近いのでま、いいかって感じだった。

入っていくと受付けがあって案内の女性が立っていた。ぴしっとお化粧をして「ご用件」を承ってくれた。私は振り込みがしかった。多額の振り込みで領収書が欲しかったが、「あちらのATMでもお振り込みが可能です。領収書は出ませんが……」とATMを使ってほしそうな気配ぷんぷんだった。

うーん。と思ったが、ま、いいかと思いATMを操作するとキャッシュカードにエラーが出続ける。あれえ?
オタオタしているとまた女性が来て「このカードは古いので磁気に異常がありますね」と言う。
「やっぱり、窓口で振り込ませてください」と、なぜかお願い口調になっている私。早く終えて次の要件に向いたいのだ。
「キャッシュカードを新しくされますか?」
「できればそうしたい。不便だし」
「本日、新しいキャッシュカードをお出しすることは可能ですが、お時間がかかります」
「どれくらいかかるんですか?」
「それはお答えできません」
「そんなに時間がかかるんですか?」
「お待ちいただく時間をお伝えすることは難しいです。明日以降に予約をしていただければお待たせせずに手続きが可能です」
 なんでキャッシュカードごときで予約までしなければならないのか訳がわからなかった。以前なら窓口ですぐ手続きができたのだが。
「とにかく、振り込みを済ませたいです」
「こちらの台でこの用紙にご記入をお願いします。本日は銀行印をお持ちですか?」
 私は台で記入を始めたが、記入見本もないのでどこに何を記入すればいいのか悩み、さらにオタオタするうちにだんだん腹が立ってきた。
「ここには、何を記入すればいいんですか?」
「振り込み人さまのお名前ですね。それと、ここに本日の日付をご記入ください。そしてこの番号札をもってあちらでお待ちください」
 待っている間にもう一度聞いた。
「あのお、キャッシュカードを発行してもらうのにそんなに時間がかかるんですか?」
「ですから、時間はお約束できないんです。本日もお客様のあとに2名の予約が入っておりまして、その予約のお客様がどれくらい時間を要するかわかりませんし……」
「だけど、まさか2時間も3時間もかかるわけじゃないですよね」
「申し訳ありません、お答えできません」
 人間と話している気がしなくなってきた。こういう事は最近よくある。銀行で、ホテルで……。
「予約をすれば、待たずにカードを出してもらえるんですね?その所要時間は30分くらいですか?」
「まあ、そうですね、だいたいそんな感じです」
「それをお聞きしたかったんですよ。じゃないと予定が組めないじゃないですか」
「それはまことに申し訳ございませんでした。こちらの不手際でご不快な思いをさせてしまったらお詫び申し上げます」
 ……と、ぜんぜん心のこもっていないお詫びをいただいた頃には、心がしゅーんとなって、どうしてこんなにマニュアル通りの言いかたしかできないんだろう。どうして同じ人間として会話ができないんだろう……と悲しくなってきた。ここの銀行のマニュアルにはきっとこう書いてあるんだ。所要時間を訊ねる客には答えてないこと。もし時間を経過しても順番が来ないと怒り出す客がいる。対応が面倒だ。面倒は極力避けるべし。イレギュラーな客の対応をする人的余裕がないということか……。
 そのうち、サービス業もAIに仕事を取られてしまうかもな。

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