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いいなあ!とか、おもしろい!!と思った記事を集めてます。書いてくださったnoterさんに感謝。
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#詩

ヒマワリが車から降りてきた

ヒマワリが車から降りてきた

茶色い目をしたヒマワリが
車から降りてきた
マリーゴールドも
後ろからついてきた

わたしちょっと休みたいの
日当たりのいい部屋にしてね
マリーちゃんは
庭で休んでらっしゃい

ヒマワリをサンルームに案内してあげた
細い首の上で頭がゆらゆら揺れていた
大谷翔平のボブルヘッド人形みたいだった
オレンジジュースを出してあげたら
ストローで器用に飲んだ

私の種はまだ食べないで
そう言ってまばたきしたら

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お帰り

お帰り

お帰り 小さな牝鹿
わたしは寒い森
迷いの小径をたくさんに抱えて
おまえの目路の果てにさすらう幻の森

お帰り 小さな牝鹿
おまえの夢が描く牡鹿の角は
わたしの森の裸木たち
年ごとに増えていく悲しみの塚

わたしが輝いて見えたのは
冬の太陽のいたずら
おまえの浅い眠りの束の間に
春のさきぶれのしかけた罠

お帰り 小さな牝鹿
この道はおまえのしなやかな足には
とても耐えられない石ころばかりの道

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星と金属

星と金属

冬の季節風がかき集めた
記憶の中から
端がまくれ上がった手記を
一冊見つけた

葉を落とした欅が
毛細血管のような枝を
空の曲面に張り巡らせていた
優しい言葉をかけてくれる人が
優しい人ではない

あなたにはもう何も言うことはない
そう言われた
取り返しがつかないことを数えあげてみる
忘れてしまった悲しみと
忘れられない悲しみの間を
君は風のように
吹きぬけてゆけるか

あしたの時刻が懸けられてい

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【詩】輝く日

【詩】輝く日

日々を丁寧に生きている
誇れるのはそんなこと

スタートラインに並んでいるのに
すでにスポットライトが
当たっている人がいて

スポットライトが当たるのは
誰が見ても当然で
羨ましいとも思わない

好きでやっていたこと
やれると思っていたこと
気が付けば
頭ひとつ出るわけでもなく
その他大勢の中

努力して
我慢して
絶え間なく
それでも
スポットライトは
当たらない

輝いている人を見て
足元に

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【詩】少し前まで

【詩】少し前まで

少し前まで二人で歩いた道
今は一人で歩いている

少し前まで二人で座ったベンチ
今は一人で座っている

少し前まで二人で囲んだ食卓
今は一人で食べている

少し前まで二人で添い寝した部屋
今は一人で横たわっている

少し前まで二人で笑っていたのに
今は一人で涙を流している

風譜

風譜

蝉の亡骸が舗道に転がっていた
クマゼミだった
ここには
アブラゼミはいない
クマゼミばかりだ
私たちの頃は
茶色いアブラゼミばかりが網にかかって
嫌になったものだ
黒い体に橙色の鎧をまとい
透明な羽根が光るクマゼミは
たまに捕まえることができたりすると
自慢したくなったほどだ

路上の電話ボックスは
沈黙を密封するガラス箱から
太陽の光と熱を
ひたむきに浴び続ける
実験装置になり果て
昨日と今日が

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AI画家 vs 俳人 『真夏の夜の夢』

AI画家 vs 俳人 『真夏の夜の夢』

個性的な画家たちがAIに憑依して描いた作品と俳句との絡みです。絵画と俳句はズレをともないながらも、相互に影響を及ぼしています。俳句には別記事で発表したものを含みます。

熱帯夜息のできない昇降機

夏白夜眠らぬ街は踊るだけ

妹の背中に火蛾の暴れをり

巴里祭やミックジャガーの紅い舌

黒南風を喰らい尽くして獣たち

村滅び象形文字となりし蜘蛛

短夜のライトノベルの因果律
昼寝覚ここはあのよと諭

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[詩]青いシンドローム

[詩]青いシンドローム

メロンソーダみたいな空が僕らを照らしている
蝉時雨が奏でる季節に
ヘッドフォンでノイズを隠して涼んでいる
景気付けにアイスを買おうかな

どこまでも伸びる澄んだ空を見つめ
自転車を漕ぎだしたんだ
灼熱のアスファルトの上

僕らの時間は蒼く碧い空
それはまるで夏みかんの甘酸っぱさ
瞬きする間に頬を伝う汗が
弾けるような衝動を生きている
呪いのような青夏のシンドローム

陽炎を追っている君の顔を見つめ

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いろいろありまして

いろいろありまして

諸事情ありまして
夕焼は夕焼けに失敗するのです
諸事情ありまして
詩に届く前にみんな帰ってしまうのです
諸事情ありまして
私は最後に残ってしまうのです

毎日洗い物をやりまして
いくら袖まくりしても袖が濡れてしまうのです
しょうもない喧嘩ばかりやりまして
私が君だったこともあったのです
仮定法過去をテレビ英会話で習いまして
空と雲をながめては一喜一憂しているのです

買い物をしたあとの
セルフレジ

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二日酔いの僕は空を見上げた

二日酔いの僕は空を見上げた

気づけば昼過ぎ 陽射しは斜め
錆びつく僕を 容赦なく刺す

昨夜の酒は 効き過ぎた
頭痛に眩暈、嘔気が揺れる

去り行く友の 背中を見つめ
粋な言葉も 言えない僕は

タバコ燻らし 笑顔の君を
ただ、眩しいとだけ そう思った

名声、傑作? そんなモノ
誰が決めるか 知ってるかい?

寂しげ憂い 漂う横顔
見惚れて僕は 言葉、失う

女子もカネも 狂気の沙汰さ
酒が進めば 腑に落ちた

求める芸術

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青い馬

青い馬

息子が生まれてからこんなことを思うようになった。
僕が絵を描くのって、もちろん絵を描く事が好きだから、楽しいからなんだけど、それだけじゃないだなって。

父ちゃんが生きていたという証みたいなものを残したいからかな・・・
絵(原画)って写真とおなじように、その場の空気や息づかい、温度などをその一枚に閉じ込めている。

大袈裟かもしれないが、その絵に触れることで命を感じるような。
絵に限らず、誰もが

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【詩】世界

【詩】世界

海外旅行に行ったこともない
飛行機にさえ乗ったこともない君は
毎日 同じ街の 同じ道を通って
たいてい私より先にうちに帰って
”おかえり”って
同じソファの 同じ位置で
私を迎える
君は人を愛することを知っていて
そうして君は
この広い世界を知り尽くしている

キタダヒロヒコ詩歌集 124 海辺にて

キタダヒロヒコ詩歌集 124 海辺にて

 海辺にて     キタダヒロヒコ

なにか散文的な用のため
海辺へ来たときにも

一群のさざなみとともに
沖から走つてくる衝動を

見る日がある。
自由の証として

潮風に朽ちかけた柱に攀ぢのぼり
たるんだ電線を手繰りよせるときにも

味の失せたガムを噛みながら
測量器を覗きこむときにも

死ぬまで出逢はぬひとの数に
思ひを馳せたりする

質量とか重力とか
それから時間とか

地上での自由を

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傘

みぞれ降る朝
3人は今日も石蹴り

たぬき
かわうそ
雨降り小僧

それぞれ傘をさしている