kee

詩をかいています。 大阪大学卒業後、福祉法制を学びに金沢大学大学院へ進学。卒業間近に統…

kee

詩をかいています。 大阪大学卒業後、福祉法制を学びに金沢大学大学院へ進学。卒業間近に統合失調症を発症。病気のため、10年ほど職を転々とする。小4のとき自由帳にかいたのが初めての詩作。現在は福祉専門職として働き、夫とふたりで暮らしています。

最近の記事

  • 固定された記事

【詩】蓮

蓮花のように清くきれいに咲くよりは 泥をのみこみすくすく育って 蓮根みたいに 最後は誰かにおいしく食べられたいや

    • 【詩】アメンボ

      ”あなたのすべてを知りすぎちゃったわ” って大好きだったコにフラれた君 アメンボは空も飛ぶと知ってから 私はアメンボがなんとなく好きだけど

      • 【詩】線香花火

        複雑な生い立ちを話されて すぐに恋した私はちょろかった 今思えばそれが彼の常套手段 私の片恋はひとりで燃え盛って 最後は線香花火みたいに 静かにぽたっと地面に落ちた

        • 【詩】6月の雨

          こぶとりのおじさんが 傘をさしてバス停にたっている イケメンのすらっとした王子様ではないけれど バスを降りた私に 傘をさしだしてくれる そして”今日また幻聴が聞こえたよ” って元気ない声で私に打ち明ける ”ねえkeeちゃんは幻聴だと思う?” ”うん” ”そうかな 本当に誰かが言ってたんじゃないかな” ”だとしたら言った奴を私がぶん殴ってやるわよ” ”そんなことしたらkeeちゃんが警察に捕まっちゃうじゃない” ”捕まらないわよ、普段いい子にしてるもの” 降り出した6月の雨で 自

        • 固定された記事

        【詩】蓮

          【詩】初夏

          取り返しのつかない失敗を 何度繰り返したら いいんだろう 死ぬよりもつらい悲しみを 与えてしまったり 死んだほうがマシな 絶望を感じさせてしまったり そのうち私は知らないうちに 本当に誰かを殺してしまう そんな気がしてならなくて… そうして眠れぬ夜が明けたとき 生きることは 本当に尊いと知った

          【詩】初夏

          【詩】町中華

          行きつけの中華料理屋さんへ行ったけど 満席で入れなかったから とぼとぼ手をつないでうちへ帰る 口のなかはもう ラーメンとチャーハンだったのにな

          【詩】町中華

          【詩】食堂

          午前2時を過ぎたミナミの深夜の食堂 立ったまま居眠りしてたら 厨房からおじちゃんがでてきて よく叱られた 昼間は慣れない営業で くたくただった 叱られないよう おじちゃんのいるほうの 片目だけを開けて居眠りしたら ”そんな器用なことせんでええ!” ってやっぱり叱られた 私は借金を返せたときに きっぱり食堂も辞めたけど 食堂はコロナにも負けず 今もまだ続いている インバウンドが復活して 食堂は大繁盛しているとか おじちゃん お体大切にね

          【詩】食堂

          【詩】図書館

          ODをして助かったあと 君が一番最初にしたことは 借りていた本を図書館に 返しに行くことだった 昔からそんなときにも君が君でいたから 私は少し泣きそうになった

          【詩】図書館

          【詩】訃報欄

          お婆ちゃんはさ 新聞の訃報欄を読むのを日課にしてた ほ~うほ~う はぁ~はぁ~って 一人ひとりの人生に感嘆しながら 指でなぞって読んでいた お婆ちゃんはすぐ隣に死があっても こわくなかったのね 私もいつか人の死を お婆ちゃんみたいに受け入れられるかな 今日は雨がいっぱい降って 新聞は少し湿ってるけど やめばきっと青葉がひろがるね お婆ちゃんに会いたくなった

          【詩】訃報欄

          【詩】愛

          足りないばかりの恋は つらかった ”これ以上応えられない” 泣きながら私を振った彼のこと 心から恨んでいた ずりずりにひきずって 自分を全否定したかと思えば 彼をじりじりと執念深く憎んでいた 君が君でいることそれだけで こんなにも心が満たされること ”愛”というものやらを知るまでは

          【詩】愛

          【箸休め】目つきの悪いマンボウ

          目つきの悪いマンボウ: "マンボウの中身はがらんどうです。 甘くておいしいたいやきは 鯛でなくてはならない。 きっとマンボウであってはならないのです。” 娘: ”あらマンボウの身に餡をつめたら たいやきよりも餡がたあんとつまりましょう。” 目つきの悪いマンボウ: ”ぎょ。”

          【箸休め】目つきの悪いマンボウ

          【詩】待ち合わせ

          美術館で待ち合わせの時間を過ぎても 一向に姿を見せない君 LINEも昨日から既読がつかない でも未読スルーは君にはよくあることだし 美術館のモネの行列は長く伸びて 美術館をぐるぐるまわっている なにかあったのかな… 遅刻するタイプではないんだけれど 子どものころは携帯なんかなくて 待ち合わせはいつもこんなふうだったっけ 電話をかけたってでないし でも福島からはるばるやってきて 約束をすっぽかすことはないだろう 美術館の高い天井が途方もなく高く見えて ずいぶん心細くなる 1時間

          【詩】待ち合わせ

          【詩】サンドイッチ

          短いスカートの女のコを 目で追ってしまうことが 目下の悩みだと打ち明ける君と 公園でランチする昼下がり サンドイッチがおいしかった

          【詩】サンドイッチ

          【詩】軽薄

          君からの熱い口づけは さっき食べたセロリのピクルスの味 ”2番目でいいから” 君に言わせる私の軽薄が目に余る夜 ”100番目だよ” と残酷に笑って君の手をほどくけど 君からの熱い口づけは ただただ甘くなって こんなはずじゃなかった こんなはずじゃ

          【詩】軽薄

          【詩】曙

          ダウン症のお兄ちゃんはね お相撲さんの曙が大好きだった みんな若貴びいきで 世紀の悪役を引き受けていたけれど 外国からひとりやってきて 苦労をたくさんして みんなと違う見た目で 土俵をおりると優しい笑顔の 曙をずっと応援していた 曙の強さは  曙の優しさは お兄ちゃんの憧れだった ”春はあけぼの” 本当に美しく彼は逝った

          【詩】曙

          【詩】花冷え

          花冷えの日 上着を忘れたまま 酔っぱらって遅くなった私を 駅まで迎えに来て つないだ手を 自分のブルゾンの ポッケに入れる君 スキップでもしようかな 春なんだしさ

          【詩】花冷え