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カットオーバー時のトラブル発生要因の検証(1) ~情報システム部門は責務を果たしたか①~

前回まで17回にわたり、「ITの仕事に就かれたい就活生向け中心」に、どのような「働く場」があるのかという観点で、業界・業種・企業、そこでの仕事の在り方などについて、広く包括的に紹介しました。今回から、「働く場」としてIT開発に関わる職場を選択された場合に、避けて通れないであろう「トラブル」という事象について紹介します。

実は、第3回に「何故、システム開発トラブルは無くならないのか」というテーマで、システム開発時における責任者、リーダー、メンバー、外部要員(協力会社)の「行動様式」という観点で、回避するための取り組みについて紹介しました。
そこで、本稿では、特に「カットオーバー(本稼働開始)」時点で露見したトラブル(新業務システムが機能しなかった)プロジェクトということについて、開発時にその発生要因が見過ごされていなかったかという観点で考えてみたいと思います。そして、経営層や現場統括部門との関わり方などを含め、再検証されるべき事項について整理し、紹介したいと考えています。

修復後の「反省会」などでの活用を、想定しています。

それでは、以下のようなプロジェクトを例として、どのような検証ポイントがあるのかを考えてみたいと思います。

【プロジェクト事例】
■対象業務及びシステム
・売場、モバイル販売会計システム(売上管理)、顧客サービス系仕組みの改革(サービス向上、業務効率化)
・現場(拠点)は、全国3000ヶ所以上(一斉稼働を目指す)

■プロジェクトの体制
実業企業  *1 における「情報システム部門」を主体とした開発体制で推進。
①上流工程
・コンサルティング企業A社の下で、業務改革基本構想を策定した。
・その基本構想を基に、経営層・現場統括部門に業務改革事項を説明し、システム化の了解を得る。
・カットオーバーは、一斉とした。

②システム開発
開発にあたり社内推進体制の脆弱性を懸念し、外部に開発マネージメントを委託した(PMO(Project Management Officer)を情報システム部門配下で)。また、既存システムとの連携や構築システムの特性を考慮し、それぞれに担当会社を選定した。
・既存の稼動システムとの連携・・・既存ホスト構築・運用B社
・タブレット型業務システム(改革対象システム)・・・開発担当C社
・売上管理システム(所謂POS(レジ)システム)・・・担当D社
・PMO・・・担当E社
・自社の情報システム部門でも、一部開発を受け持つ。

③現場教育、業務運用面
・現場統括部門を設定し、全面的に推進を委ねる。
・情報システム部門は、システム面での協力・支援体制で臨む。

上記のようなプロジェクト環境において、「情報システム部門」「現場統括部門」「コンサル(上流工程)・PMO」「開発ベンダー(複数社)」、そして「経営層」の5つの関係者の観点から検証事項について紹介したいと思います。

第1回は、「情報システム部門」での検証観点について、特に各部門との関わり方を中心に紹介します。

*1 実業企業:
「第10回 より良いキャリアを築く「働く場」の選択(2)~どのような『場』で仕事をしたいか①~」を参照下さい。


【情報システム部門の検証ポイント】

一般的に情報システム部門は、開発・導入における中核をなす部門となるだけに、その役割・職務職責を明確化しておくことが非常に重要になります。と同時に、主体的に関係者・関連部門とその役割・職務職責の認識の共有
化を図り、プロジェクト実施において実践していくことも重要な役割の1つであり、検証の観点となります。
以下にその検証の観点を紹介します。

1.推進母体の明確化

■上流工程(構想立案)の業務改革構想提言を受け、その実現に向けた取り組み意識はどうだったか
・実現を図る際の推進主体を明確化したか(情報システム部門としたか、現場統括(改革推進)部門としたか)
・「システム開発」ということで、情報システム部門としていなかったか
・現場統括部門(活用する部門)が「受け身」になっていなかったか(情シスが推進、定着してくれるハズと認識していなかったか)
・立案したコンサルが、継続して指導してくれるハズと考えていなかったか

■現場部門を巻き込む取り組みを、どの程度行ってきたか
・現場は日々の業務で忙しいから、少しでも「肩代わりしなければ」という思いは無かったか
・運用テストは、現場中心に本来の目的に沿った形で行われたか(時間的制約のしわ寄せはなかったか)
・現場部門とのコミュニケーションを、現場統括部門に委ねすぎていなかったか(「やってくれているるハズ」と思っていなかったか)
・システム稼働の最終責任元が、情報システム部門にあると全関係部員で共有され、認識されていたか

2.現場統括部門との関係

■基本構想に基づくシステム計画、RFP(Request For Proposal) 策定・評価時の関与度は
・情報部門が主体で行ってしまわなかったか
・現場統括部門を、どの程度巻き込んだか
・現場統括部門とどの程度語り合い、今回の開発に込められた「思い」を共有しえたか
・双方「理解している、したハズ」という思い込みはなかったか、特に情報システム部門にその傾向は無かったか

3.情報システム部門の姿勢

■開発工程において、各開発ベンダーとの取り決め(契約、サービス事項等)は適切だったか
・「ここまで、これくらいやってくれるハズ」という思い込みは無かったか
・各ベンダーの動き方・作業範囲において、想定通りでなかったことは洗い出したか
・情報システム部門として取り組んできたことに対し、不足の観点、疑問点など、まとめられたか

■情報システム部門内のグループ体制・統制・役割(立場、作業範囲)・進め方等は、適切だったか
・各担当グループ間に、「ここまで、これくらいやってくれるハズ」という思い込みは無かったか
・他のグループの活動内容・実績に対し、相互で「モノ申す環境」は、醸成されていたか
・「モノ申す役割」として、PMOに要望を依頼したか、機能していたか、させたか


以上、情報システム部門について「各部門との関わり方」を中心に検討・検証ポイントを紹介しました。

次回は、情報システム部門が「プロジェクト推進と開発・支援体制」ということでの検証観点について、紹介します。


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