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よりよいキャリアを築く「働く場」の選択(14)~企業はどのような人材が欲しい?~

これまで紹介してきたように、今やデジタル技術の利活用なくしてビジネスも企業経営も立ち行かない時代になっていると言えましょう。今、「デジタルビジネス」、「デジタル経営」を軸とする「デジタル経済」の拡大に向け、経済界のみならず国を挙げた取り組みが強化されています。

中でも「デジタル人材」の育成が急務とされ、今後「2年間で11万人増」に向けた国における「機会、場作り」のための公的支援が発表されたことはご承知のことと思います。(国の予測では、2026年度までに230万人のデジタル人材が不足することが予測されています)こうした人材増に向けた取り組みは、日本国内だけではなくグローバルに行われることは言うまでありません。外国の人々との「協調や競争」に対応することが必須になるでしょう。
このような環境下で、企業各社も「DX(Digital Transformation)」による経営変革、ビジネス変革、業務変革、働き方変革などへの取り組みを実現しえる「デジタル人材」の獲得を強化しています。


※ CeFIL :Center For Innovation Leaders 
日本経済団体連合会の高度情報通信人材育成部会で発足。現在、その実行機能を引き継ぎ、2009年6月22日にNPO(特定非営利活動法人)として設立された。現在、政府、経団連、大学、企業と連携し、日本の成長戦略を推進するために求められる人材育成支援活動に取り組んでいる。

1.経営層の変化

一昔前、経営層にとって、「コンピュータは金食い虫」と揶揄され、常に「削減コスト対象」とされてきたことを思うと、経営者の方々が「DXは必須」と語られていることに対し、感無量という感じが禁じ得ません。

今や、IT費用は「コスト発想から投資発想」への転換が図られたと言えるのではないでしょうか。就活の面接時などに確認されてみるのも良いかと思います。(経営層の意識確認)

以下に、現在の経営層が「IT技術」に求める(期待している)主要な観点を示します。

【経営層の意識変化】

■経営に「IT活用」は欠かせない
何度も記述していますが、今や「IT活用なくして経営・ビジネスを成り立たせることは不可能になっている」という考え方が定着したと言えます。

■技術革新を経営・事業効率化に活かしたい
これは取りも直さず「DXの実践」に期待していることに他なりません。低いと言われ続けてきた日本の生産性向上への取り組みに必須であり、4位(来年は5位予測)に落ちたGDPの拡大に向けても不可欠となっています。

■異文化との融合をスムーズに実現したい  
デジタル経済は、基本的に国境という垣根を超えており、如何にビジネスにおいて国内と海外をシームレスに実践し得るかがキーになっています。もちろん、それぞれの国のカルチャーを意識した取り組みが不可欠であることは言うまでもありません。そういう意味でも、デジタルは世界共通語(技術)であり、その活用拡大が期待されています。

■情報活用と統制の整合性を確保したい   
初期のスーパーコンピュータ並みの性能があるとされる「現在のスマホ」の活用や、リモートワークの進展により、ますますパーソナルな情報活用化が進み、分散コンピューティングが広がっていくでしょう。そこでは「目が届かない広がりを見せる」ことも危惧されています。その昔、パソコン・部門サーバーの普及に伴い、コンピュータの分散化(ホストコンピュータ主義の縮小)が進んだ際に「分散統合システムの確立」が必要になるということを提案しました。今こそ、「情報の統合(情報統制と一気通貫化)」とセキュアな「情報活用の分散化(現場)」という環境整備が期待されています。

2.期待されるスキル

経営層の意識変化に対応しえる「デジタル人材」について、期待されている「人材スキル」を以下に示します。

【期待されている人材】
これまでの成功モデルを、維持継続したがる傾向からの脱却を実現しえる
人材の獲得(プロデューサー的人材  *1

*1 プロデューサー的人材:
   「あらゆる面、事象」において「調整・統制」能力を持つ人。
   「人・モノ・金・情報」をマネジメントしえる人材。

【期待される3つの新たなインテグレーション領域での人材】

■ システムインテグレーション領域(システム構築)

・システム・プロデューサー(SyP)
これまではPMO「プログラムまたはプロジェクト・マネジメント・オフィサー」として、システム構築面(複数のプロジェクトまたは、個別プロジェクトを円滑に推進する役割)でのマネジメントスキル要請が高かった。
・今後は、上記に加え、ビジョンプランニング(構想企画、計画立案)からシステム構築、保守、運用までを一気通貫で「プロデュース」しえる人材。
・所謂、「コンサルスキルとSEスキル」を併せ持った人材。

■ サービスインテグレーション領域(サービス創造)
・サービス・プロデューサー(SvP)
クラウド型でのシステム活用が普及する中、システム構築力からシステム適用力へのシフトが加速。
・新たなサービスを創出(アイデア)し得る力。既存サービスの改善はもとより、新たなサービスの企画から具体化(サービス・イン)までを一気通貫で「プロデュース」しえる人材。
・さらに、マーケティング(市場分析)ノウハウも必須。
 (ex. SaaS  *2などへの新たなサービス提供 など)

■ ビジネスインテグレーション領域(ビジネス創造)
・ビジネス・プロデューサー(BP)
・新たなビジネス(事業)を創出する力。これまでの既存ビジネスに無い、新たなビジネス領域を生み出す力。
・自力だけでなく、パートナー企業の実力を評価しえる能力(あらゆるリソース評価)、交渉力、法制度理解等々を持ち合わせ、ビジネス立ち上げまでを一貫して「プロデュース」しえる人材。
・「商社マン」のノウハウに近い人材と言えるかもしれません。

*2 SaaS : Software as a Service

3.新たな人材像(CeFIL)

CeFILが育成しようとしている(期待している)人材像(ノウハウバランス)について、図1に示します。その絵柄から「π型人材」、「π型チーム」という言い方がされています。

図1:π型人材またはπ型チーム

これまでは、「T型人材」という言い方がされていました。共通の人間力(横バー:人間力と探求心)に加え、IT技術力(縦バー:ICT)ということで、「ITに特化したノウハウがあれば十分」とされてきました。(利活用は、現場が考えること)

しかし、今後さらに経営、ビジネス環境の変革スピードを加速させることが求められる中で、「IT利活用」の重要性がさらに高まっています。一分一秒でも早く実践するためにも、IT技術者自身が経営へのコミット力(利活用分野創造力) *3 を高めることが重要となっています。

よってT字型人材に「利活用力」(縦バー)をもう1本加えて、「π型人材」として提唱されました。ただ、一人で全てに長けた人材が居るのか、すぐ育つのかということも言えますので、合わせて「π型チーム」での対応ということを考えておくことも重要なことと考えています。

是非、上記のような人材となることを「目標」として取り組んでくださればと思います。(今後「リスキング」を考えられている方々も、一つの指標としてみて下さい。)

*3 コミット力:
第一回(2024年1月9日 No.1)の投稿記事「IT部門の新たな役割」を参照ください。

次回は本テーマ(より良いキャリアを築く)の最終回として、就職された際の「取り組みスタンス」や、意識しておきたい「基本的素養」といった観点を紹介したいと思います。

(訂正)
  ※前回「№22」として投稿した記事は、「№21」の間違いでした。
   お詫びし、訂正致します。

【過去の関連記事】

https://note.com/nac750192/n/n9dc00f30eb54o


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