見出し画像

より良いキャリアを築く「働く場」の選択(12) ~ 各業界分野の取り組み⑤  観光分野(スマート観光)~

5回目の今回は、地域活性化の一施策としてだけではなく、高齢化社会を迎える時代にあっての「観光・旅行分野」ということについて紹介します。 


1回目同様、本稿における記載表現は、「実業企業者 *1の立場」からとしていますので、「実業支援企業の立場」に就職されたい方は、 「活用」「導入」「推進」などの記述表現に対して、「~を支援」という言葉を付加してお読み下さい。

*1 実業企業
本稿では、観光・旅行事業者に加え、国・自治体といった公共事業体も含みます。

1.観光分野を取り巻く環境

コロナ禍を乗り越え、円安を追い風としたインバウンド需要に沸く現在の観光業界ですが、人口減少や地域格差拡大状況下にあって、一過性ではない取り組みが求められています。 既に、「量(団体)」ではない「質(個)」への転換がキーになってきていることは、ご承知の通りです。
また、高齢化社会の到来を迎え、「介護、福祉」といった面からの取り組み期待もあり、新たなビジネスモデル作りが求められています。

【観光分野を取り巻く環境の変化と課題】

■地域振興としての「観光事業」改革  
・国・地域行政としての政策強化
・観光地としての魅力再発掘と、話題作りでの異業種連携推進(外人に気づかされる時代)
・地域再生、活性化必須(人口減少、限界村落の拡大など)

■インバウンド需要の変化での「外国人対応」の必要性増大
(3000万人/年常時超え)
・「爆買い」から、「経験、体験」重視へ(「コト消費」拡大、翻訳ニーズ大)
・オーバーツーリズムへの対応(交通機関、地元民生活弊害回避など)
・規制緩和、振興促進制度整備(観光立国新基本法、旅館業法など)
 
■観光・旅行需要喚起への取り組み強化
・「来る前(喚起)」から「来た時(おもてなし)」、「来た後(フォロー)」までの機会対応
・安心、安全への対応強化
・IoT *2技術を駆使した取り組み強化 
  
■新たなビジネスモデル創出への期待
・介護、福祉分野への展開
・「行けない人(高齢、身体的状況など)」、「思い出」対応
・十人十色、一人十色対応                                 
                       など

*2 IoT
Internet of Things (インターネット上で全ての情報機器が連携する)

以上のような環境変化の中、本分野における皆さんへの「取り組み期待」について以下に示します。

【皆さんへの期待】
「地域の魅力再発掘と個々人に応じたサービス創出で観光・旅行ビジネスの世界」を 変える !

「行きたくなる」、「行った(来た)時に」、「帰ってからも」、「行った気になりたい」といった、TPO *3に合わせた顧客意識への対応がキー!

*3 TPO : 時(Time)、所(Place)、場合(Occasion)

2. 取り組み観点

これまで、自治体を中心とした地域活性化施策におけるIT技術活用は、「HP(ホームページ)制作程度での情報提供、紹介」と言った、受け身方での取り組みが中心でした。もちろん、これまでも新たなIT利活用が行われては
いましたが、あくまで「試行」止まりというのが実態では無かったでしょうか。 
インターネット利用(IoT技術)、特に双方向性を活かし、「待ちのスタイル」から、積極的な「誘致施策」作りに向けた取り組みへの強化拡充が求められています。 また、インターネットは国内という枠に留まらず、地球規模での展開が可能であることを踏まえ、インバウンド需要向けとしての外国人対応を標準とした取り組みが必要でしょう。(多言語対応標準化)
さらに、「介護、福祉領域」での展開も期待が高まっています。

2.1 新たなIT利活用による変革領域

以下に、「事象別」での取り組みについて示します。

【ITの活用で変革すべき領域と取り組み】

■来たくなってもらう 
・旅行計画時におけるアプローチ手法の提供
・異業種企業とのコラボ(ゲーム、キャラクター、オプション作りなど)
・シナリオ作り(ルート作り、料金計算、宿泊施設など)  など

■来てくれた時
・外国人、外国語対応の標準装備 
・翻訳、案内などの多言語化対応 (音声、テキスト、画像)
・観光施設、展示品紹介の高度化
・施設、作品情報のデジタル化
・施設ルート紹介          など

■帰られた後
・「思い出作り」への支援強化(囲い込み)  
・マイサイト(あなただけ)の提供(一連の行動記録、アルバムなど)
・リワードプログラムへの取り組み
・新しいテーマ(計画)、サービス、施設などの情報提供
                    など
■行った気になって 
・介護、福祉サービスへの展開
・体感実演サービスの開発        など

■安心・安全・便利 情報の提供
・観光地における、「安心・安全環境」の提供
・観光客のシチュエーションに応じた情報提供
・緊急時などにおける「多言語・多文化」対応
・公共オープンデータ(交通情報、工事情報、施設公開情報等)連携による、スムーズな移動の実現
・ネットワークカメラによる異常検出と、関連機関への自動通知サービス(人の代わりに見守り)

 【ご参考(見守り観点例)】
 ・侵入してはいけないところに侵入している
 ・不審者、不審物が置かれている
 ・重要物が持ち去られている
 ・止まってはいけない場所に止まっている
 ・混雑がはじまっている         などなど

注:「見守り」と「監視」は、裏表でもあるので、活用する際には目的明示など、十分留意する必要があます。

2.2 磨いてほしいIT技術

今後、本分野において必要となるIT技術について以下に示しますので、参考にして下さい。
 
習得しておきたい技術】
■位置情報技術
・GPS、 WiFi、 NFC *4

■多言語対応技術
・音声認識
・テキストマイニング
・画像検索

■共通技術
・AR *5 (ルート、施設、作品情報など)
・VR *6(仮想現実(ex. Metaverse  *7 ))
・各種センサー技術
・ネットワークカメラ
・SNS
・画像解析
・オープンデータ
・ドローン
・Gamification *8
・各種シミュレーション
・マッピング
             など

*4 NFC:Near Field Communication
*5 AR :Augmented Reality (拡張現実)
*6 VR :Virtual Reality (仮想現実)
*7 Metaverse:コンピュータ内に構築された「3次元仮想空間」
*8 Gamification:顧客ロイヤリティの向上などに、ゲームデザインの技術やメカニズムを利用すること

以上、観光・旅行分野における取り組みについて紹介しました。今後とも、観光立国としての需要拡大に対応し、利便性の向上はもとより、地域生活環境との両立ならびに、安心・安全の確保、介護・福祉分野への新たなビジネス展開など、益々「IT利活用」の拡大、「スマート観光」実現への期待が高まっています。 
本業界も、IT技術者を目指す方々の就活先としての選択肢は低かったのではないかと思いますが、これからは、有望な就活先業界の一つとして考えられて行くことでしょう。

次回は、「消費者ビジネス」について紹介します。

【過去の関連記事】







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?