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より良いキャリアを築く「働く場」の選択(9)~ 各業界分野の取り組み②  製造分野(組立)~

2回目の今回は、IT技術の進化がもたらす「モノつくりの世界」。本稿では、組立業界を中心とした「製造分野(スマート製造)」について紹介します。 


1回目同様、本稿における記載表現は、「実業企業者の立場」からとしていますので、「実業支援企業の立場」に就職されたい方は、 「活用」「導入」「推進」などの記述表現に対して、「~を支援」という言葉を加えて読んで下さい。

1.製造業を取り巻く環境

1760年代、イギリスにおける「蒸気機関」による技術革新に始まる「第一次産業革命」以来、製造業界は大きな技術革新を図り、「モノ作り」の世界を大きく変革してきました。
 
皆さんご承知のように、石油発見を軸とした化学工業、鉄鋼などの重工業化の第二次産業革命、コンピュータの登場による「自動化」「情報化」の第三次産業革命へと変貌を遂げてきました。特に、国内製造優先と言う枠組みを大きく変え、国際分業というグローバル化を進展させることになっています。
 
さらに21世紀に入り、コンピュータ技術の進化はさらに進み、AIに代表される「知的コンピューティング時代」を迎え、今や「第四次産業革命」という時代を迎えていると言われていることも、ご承知の通りです。
 
【製造分野を取り巻く環境の変化と課題】
 
本分野においても、さらに「生産性を高め、効率化」を高めることが求められていることは、言うまでもありません。特に、グローバル化が進行した現在、その要請は高まるばかりだと思います。
 
また、これまで日本のお家芸とされてきた「金型」つくりという面においても、IT技術の進化は否応なく押し寄せ、今や「金型は不要」「試作実機不要」といった時代を迎ています。
 
さらに、製造業は「ナショナリズム」とも結びつきやすく、昨今の国際情勢(自国主義への傾斜傾向)、半導体供給体制における状況を踏まえた取り組み、サプライチェーンの再構築作りといった見直しが行われています。
 
■ Industry4.0(Industrie4.0)時代に突入
・先進国(ドイツが提唱、先行)中心に、「自国製造業」の復権、強化への動き活発化 
・国際情勢の流動化に加え、熟練技術者不足の加速や、国内空洞化への懸念が増大
 
■ 「企画・設計から調達、製造、出荷、販売、保守」の全工程にわたるIT化推進
・ネットワーク化とリアルタイム化のさらなる強化、拡充(つながる工場)
・「情報」の一気通貫化(デジタル化の徹底)
 
■ 「誰でも製造」、「工場を持たないメーカ」、「ソフト化」、「モノを作らないモノ作り(物理的試作レス)」 etc.....
・「ファブレス(Fables)企業」「ファンドリー(Foundry)企業」の登場
・IT技術の進化(DX(Digital Transformation)の徹底化)
 
■ ライン自動化に加え、付帯作業領域の自動化も。(現地・現場検証軽減)
・設備点検・保守の自動化、熟練ノウハウの継承、ミス・モレ・危険事前回避の実現など
・いつでも、どこからでも「コントロール」できる仕組みの獲得
 
以上のような環境変化の中、期待されるべきことについて以下に示します。

【皆さんへの期待】
「製造業(メーカ)のあり方、モノ作りの世界」を 変える !

2.取り組み観点

製造業における「IT利活用への取り組み」は、「自動化」「効率化」を中心として、多くの領域でいち早く実践されてきました。 工場ラインにおける「ロボット」活用の定着は言うに及ばず、企画、設計(CAD、CAM)の場におけるIT活用が進化していることはご承知の通りです。
 
本稿では、今後さらに取り組まれるべき観点、領域について、以下に示します。

2.1 新たなIT利活用による変革領域

今、「新たな製造業の「形」の創生」が進められていると考えています。 特に、センシング技術・BIG DATA・ネットワークを駆使し、「製造プロセス(PLM)」と「注文から出荷まで(SCM)」との統合(情報の一気通貫)を実現した、「インテリジェント製造システム(CPS)」の構築が進められています。
 
あわせて、現場の“知”を集約し、「ノウハウの形式知化」を推進することが求められています。(AIシステムの活用拡充)

【ITの活用で変革すべき領域と取り組み】

■「誰でも製造」のできる時代の到来(欲しいものを「選ぶ」から、
 「作る(造る)」時代)
・「マスプロダクション」 から「カストマイズプロダクション」
 仕組みの確立
・多品種、変量(少量ということだけでなく)製品の、早期市場
 投入の確立 
■「工場を持たないメーカ」の出現(ファブレス企業)
・ファンドリー企業とファブレス企業連携対対応
・小ロット要請対応
■「サービス産業化」への展開
・「モノ」作りビジネスから、「コト」作りまでのビジネス展開。
・CPSの構築。(「ものづくりの全領域」への適用) 
■「ソフト化」発想への転換(ソフトがハードを変える)
・情報とモノの「一体化」
・設計手戻りの大幅削減(遠隔地間との設計レビュー、製品の組立、 
 操作・保守性の検証容易化)
■「モノを作らないモノ作り」の実現
・物理的なモックアップ、試作品製作不要化(DMU)
・実検証、実教育訓練などの不要化(バーチャル検証(VR)、
 バーチャルと現実との融合(AR))
■環境負荷軽減への貢献
・CO2排出削減
■さらなる効率化、生産性向上
・自動化、支援技術取り込み強化、拡充
・ロボット活用推進(ロボットの自律化、M2M技術の進展)

【注記】
・AR    : Augmented Reality 
・CAE       : Computer Aided Engineering
・CAD    : Computer Aided Design  
・CAM   : Computer Aided Manufacturing 
・CPS     : Cyber Physical System
・DMU   : Digital Mock-Up 
・M2M    : Machine to Machine
・PDM      : Product Data Management 
・PLM   : Product Lifecycle Management
・VR    : Virtual Reality

2.2 磨いてほしいIT技術

今後、本分野において必要となるIT技術について以下に示します。特に、モノつくりから保守・点検、さらに消費者の手に届くまでの全工程にわたり「デジタル化」を推進するIT技術が、キーになるでしょう。参考にして下さい。

【習得しておきたい技術】

■企画、設計、開発
 ・3D CAD、ホログラムディスプレイ、3Dスキャナ、
  3Dプリンター(3D-P)、VR、CAE、PDM、CAM、DMU  など
■製造、製造、組み立て、制御
 ・センサー技術、M2M通信、3D-P、RFID、シミュレーション、
  ロボット、VR(virtual product/virtual factory)       など
■保守・点検、検査、在庫、出荷
 ・カメラ画像認識・解析、RFID、AR、シミュレーション、
  ロボット、タブレット、モバイル              など

次回は「流通分野」、中でも2024年度問題に揺れる「物流業界」について紹介します。


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