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より良いキャリアを築く「働く場」の選択(10)~各業界分野の取り組み③  流通分野(物流)~

3回目の今回は、2024年問題がクローズアップされている「物流の世界」について紹介します。生産分野と同様、本分野も「労働集約型の典型」と言われている業界として、IT技術の徹底活用による「スマート物流(Logi Tech)の実現」が期待されています。 


今までの記事と同様、本稿における記載表現は、「実業企業者の立場」からとしています。「実業支援企業の立場」に就職したい場合は、 「活用」「導入」「推進」などの記述表現に「~を支援」という言葉を付けて読んで下さい。

1.物流を取り巻く環境

物流業界は、以前から「労働集約型からの脱却」に向け、様々なIT利活用の試みが行われてきました。マテハン|《*1》による庫内作業の自動化や、車載機器の搭載拡充(ドライバー、配車計画、運転支援等)により、作業負荷や、環境負荷(CO 2 排出)の軽減、要員の最適化に努めてきました。
しかし、輸配送業界を中心に「多重下請け構造|《*2》」という根本的な課題を抱え、特に中小業者におけるドライバーの長距離運送・長時間労働、運転以外の作業(荷の積み下ろし)対応などが常態化し、それにより支えられてきたというのが現状です。業界全体として、とても「労働集約型の解消」には程遠い状況にあり、抜け出せていないと言えましょう。
今後、本業界における「なりて不足、人手不足」はさらに深刻化することは避けられず、業界構造変革への取り組みはもちろん、中小業者への支援、特に、作業全般へのもう一歩踏み込んだ「IT利活用」の促進が不可欠になっています。

【物流分野を取り巻く環境の変化と課題】

■ドライバーの管理・統制から、「守る」という発想への転換
・ドライバー依存型業務形態(移動中のブラックボックス)からの脱却
・運転技術の見える化(車載機器の高度化)による運転環境改善
■物流作業効率化、生産性向上への取り組み強化 
・夜間作業、重労働、人出不足、人件費拡大、短時間場処理要請、誤出荷回避等への対応
・モーダルシフトへの取り組み(列車・航空機・船舶連携など)
・地球環境負荷軽減(CO2削減)
■業務(ビジネス)効率化、生産性向上への取り組み強化
・積載効率向上(給貨給車マッチング(空走行の削減))
・走路ルート、ラストワンマイル強化、再配送回避
■需要予測の高度化と、全体最適化への取り組み強化
・予測配車(集荷・配荷)、予測在庫配置     
■省人化への要請拡大
・倉庫内ピッキング、搬送、トラック積み込み作業の軽減
・無人対応範囲拡大

*1 :マテハン(Material Handling)
 物流現場で業務の自動化・効率化に使用する機械類の総称。
*2 :多重下請け構造
 300人以下の中小零細運送事業者、約6万社。全体の99%。 
 (出典:日経新聞2024年4月17日 物流クライシスより)

以上のような業界課題に対し、期待されていることについて以下に示します。

【皆さんへの期待】
「輸配送・倉庫運用における労働集約型の世界」 を 変える !

2. 取り組み観点

今、公共ビッグデータ(交通情報、事故情報、天気情報、道路情報(工事や通行規制)など)が整備され始めています。(オープンデータ)
今後は、自社・自グループの情報だけでなく、公共ビッグデータとの連携を図り、製造分野の回でも紹介しましたが、作業の全工程(荷主からお届けまで)に渡る「一気通貫での情報活用」を実現、より緻密な情報分析を行い、輸配倉 *3 における更なる業務・作業効率化、生産性向上に向けた取り組みの強化が期待されています。

*3 輸配倉:輸(輸送)/配(配送)/倉(倉庫)

2.1 新たなIT利活用による変革領域

「人、モノ、車」の位置(場所)・動き(行動)情報が正確に捉えられるようになった時代を踏まえ、IT利活用の推進を考えていくことが必要です。

【ITの活用で変革すべき領域と取り組み】

【輸送】
■ドライブ時における「運転特性・ルート分析」の高度化
・車載情報+オープンデータの活用
・個人ごとの特性把握,(勤怠、業務量、眠気、実績履歴 等)
・ヒヤリハット発生傾向把握(運転状況(急ブレーキ頻度、場所 等))
■「輸配送効率向上」に向けた提携強化
・給貨給車マッチング情報、仕組みの拡充
・長距離運送の改善(地域間事業者連携(中間地区での引継ぎ))
・モーダルシフト拡充(列車、航空機、船舶との併用、連携)

【配送】
■「ラストワンマイル」への取り組み強化
・予測物流、無人配送(ドローン)、ロッカー方式の採用
・置き配の安全・安心強化
・マンションセキュリティー連携
・24時間サービスとの連携(コンビニ、スポーツジムなど)

【倉庫】
■「ロボットを中心とした倉庫内自動化」の推進
・人作業代替え(倉庫内ピッキング、搬送、積み込みまで)
・自動運転適用範囲拡大(倉庫内無人化)
■「人の最適配置、作業ミス・モレ防止」の向上
・庫内位置認識、AR *4 活用による仕分け指示 等

*4 AR : Augmented Reality(拡張現実)

2.2 磨いてほしいIT技術

今後、本分野において必要となるIT技術について以下に示します。参考にして下さい。

【習得しておきたい技術】

■輸送関連
・車載機器(カメラ、プリンタ、バイタル、アルコールチェッカー、マイク・スピーカー、デジタコ、温度・湿度管理等)
・CAN  *5 、GPS、ETC
・ルートシュミレーション、D-BOX  *6ノウハウ
・クラウドサービス

*5 CAN     : Controller Area Network(車載ネットワーク)
*6 D-BOX:電源レス保冷ボックス(富士電機製品)

■配送関連(輸送関連含む)
・シミュレーション(配人・配車計画)
・ドローン技術
・自動ロッカー

■倉庫関連
・センサー技術(音波センサー)
・カメラ画像認識・解析
・ロボット(無人自動化)

■共通技術
・需要予測の高度化(AI活用)による全体最適化
・予測(AI)配車
・予測(AI)在庫配置
・消費者行動分析力

以上、物流業界において、今後重視されるIT技術分野について紹介しました。

次回は、「金融分野」について紹介します。

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