見出し画像

より良いキャリアを築く「働く場」の選択(11) ~各業界分野の取り組み④ 金融分野(自由化)~

4回目の今回は、今大きくその姿を変えつつある金融分野について紹介します。 


1回目同様、本稿における記載表現は「実業企業者の立場」からとしています。「実業支援企業の立場」に就職されたい方は、 「活用」「導入」「推進」などの記述表現に対して、「~を支援」という言葉を加えて読んで下さい。
さらに、「銀行・クレジット・証券会社」などの既得権益企業(既存金融企業)に進まれる方は、参入企業に対する対抗策を、参入企業(新規に金融業界に参入することを検討している企業)に進まれる方は、規制緩和を鑑みながら既得権益奪取に向けた施策・ビジネス創出への取り組みを、それぞれ意識して就活に臨むことをお薦めします。

1.金融分野を取り巻く環境

金融業界はこれまで自国の厳正な金融法制度の中で、「規制」という高い参入障壁に守られてきた業界でした。しかし社会全体がグローバル化の方向に進み、デジタル技術が急激に進化する中にあって、「効率化や生産性」と言う面に加え、「新たなビジネスモデル創出」といった面でも、「規制」が足かせとなり、世界に遅れをとる結果を招きました。
さらに「自由化、規制緩和」の流れにより、金融機関ではない企業(FinTech  *1)の参入が始まるとともに、これまでと全く異なる取引形態(金融機関を介さない取引)や、ブロックチェーン技術に代表される新たなデジタル技術が登場します。これらの大きな潮流の変化は、これまで国の専権事項であった「通貨発行権」という分野にも波及し、現物(現金、金など)を伴わない「資産(暗号資産)」として定着し、それを「法定通貨(国の通貨)」としようとする国も現れています。こうした流れの中で、金融分野は、大きな変革の時代を迎えていると言えるでしょう。

【金融分野を取り巻く環境の変化と課題】
■既存金融機関の「大艦巨砲主義  *2」からの脱却
・ホストシステム(一極集中)による「勘定系マスタ一元管理方式」の限界
・新たなビジネスモデル作りの限界(巨大で、固定化された仕組み)
■参入障壁の低減(規制緩和)への対応
・グローバル競争の拡大
・金融機関以外からの参入拡大(FinTech企業との競争激化)
・FinTech企業の対応業務範囲の拡大(小口決済中心から、金融業務全般  *3へ展開)
■「取引コスト(手数料)0(ゼロ)」の世界実現
・「口座管理機関(銀行)」などを介さない仕組みの登場
・「P2P(ピアtoピア)」を中心とするリテールビジネス(決済)の拡大
■貨幣価値と同等の機能を持つ、「第二の貨幣」の登場
・国の集中統制機関(日銀など)を介さない仕組みの登場
・「暗号資産(デジタル通貨)」の信任拡大(代表格:ビットコイン)
■社会システムとしての影響拡大
・トラブルの極小化要請拡大
・セキュリティーの強化、拡充(なりすまし防止、本人確認の強化など)

*1 FinTech:
FinanceとTechnology の融合。主に、IT技術を駆使して登場した、既存金融機関以外の企業が行う「金融関連サービス」の総称。
*2 大艦巨砲主義
大きな組織、大きな設備を持つことが、強い競争力をもつとする考え方。 現在では大きすぎて柔軟性を欠き、小回りが利かないことを揶揄する言葉として使用される。
*3 金融業務全般
融資、貸付、決済、送金、投資(個人・機関)、証券、企業財務管理など

以上のような環境の変化の中、本分野に関わることを考えるおける皆さんへの期待を以下に示します。

【皆さんへの期待】
金融世界の「枠組み・仕組み」を 変える !

2.取り組み観点

前述のような環境の中、金融業界には既存の仕組みや枠組みの変革(効率化、生産性向上)、新たなビジネスモデルの創出力の強化に向けた取り組み推進が期待されています。

2.1 新たなIT利活用による変革領域

デジタル技術を駆使することによる「スマート金融(金融×ICT)」の実現、新たな金融世界の再構築に向けた取り組みが急がれています。

ITの活用で変革すべき領域と取り組み】
■巨大基幹システム(勘定系システム)の再構築
・「集中管理システム」を必要としない技術の確立
・新たなビジネスモデルとの連携しやすい仕組み作り
■「暗号資産」の定着と拡大/デジタル通貨への対応
・既存貨幣(現物)と暗号資産との共存
・一元的管理者不要の仕組み作り
■新たな金融サービスの創出
・スマホ決済サービス拡充(既存POS、CAT端末を必要としない決済サービス)
・P2Pの送金サービスへの対応(金融機関レス、送金相手の口座番号を知らなくても送金可など)
・複数枚所持カードの1枚化(スマホ、電子(IC)カード化)
・カード媒体レス取引形態サービス対応 など
■安心、安全対策の強化
・生体認証(静脈、指紋、顔認証など)による、本人認証の強化
・コピー、改竄防止方式の確立(デジタル情報の最大の課題)
■信用調査、融資関連の新潮流への対応(AIの活用)
・信用評価情報の見直し、融資先の裾野拡大への対応
・審査の効率化、迅速化
・信用ノウハウの継承 など

2.2 磨いてほしいIT技術

今後、本分野において必要となるIT技術について以下に示します。
金融業界では、特に巨大なシステムを必要としない「高信頼、分散管理」を可能とする技術、セキュアなモバイル技術が注目されています。またスマホアプリケーションを軸とした新たなサービス創出への取り組みの強化も挙げられています。

【習得しておきたい技術】
■ビットコイン採用技術の汎用化
・分散型元帳管理フレームワーク(Block Chain、Proof of Work)
・応用技術(新たなビジネスモデル創出)
■汎用機器(スマホ)による決済端末などへの活用技術
・スマホ、タブレット活用
・簡易リーダ、QRコード
■クラウドサービス技術
・共同利用における「セキュアな仕組み」の提供技術
■本人認証技術(セキュリティー技術)
・スマホ活用 (モバイル技術)
・カード集約技術
・生体認証技術  
■ビッグデータ解析の高度化(AI、データサイエンス)
・紛失、盗難、改竄防止技術
・調査、審査などの自動化技術        など

以上、金融分野における取り組みについて紹介しました。本分野は、今後さらにデジタル化による新たなサービス創出力や、安心・安全を担保した上での効率化、生産性向上への取り組み強化が求められていくでしょう。そうした点においても、デジタル技術力を活かせる業界の一つになったと言えるかもしれません。
余談ですが、その昔銀行における「IT技術者」は、あくまで「亜流」の存在(システムのお守り役で、間接要員)であり、けして本流になれることはありませんでした。しかし、今やデジタルノウハウは、経営にとって不可欠の存在です。デジタル技術への理解無くして経営は出来ないという時代になり、「IT技術者」の社内、業界内位置づけは高まっています。

次回は、公共自治体などでの取り組みを含め、「観光・旅行分野」について紹介します。

【過去の関連記事】









この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?