マガジンのカバー画像

好きな記事、好きな小説、好きな文体

225
個人的に好きな記事や小説や文体。個人的に注目している書き手、活動。
運営しているクリエイター

#コラム

「感動した!」と言ってもらえるぼくの料理には、圧倒的な戦略とロジックがある

「感動した!」と言ってもらえるぼくの料理には、圧倒的な戦略とロジックがある

はじめまして。鳥羽周作と申します。「sio」という代々木上原のレストランでシェフをやっています。

このnoteでは、ぼくがふだんどのようなことを考えながら料理づくり、お店づくりをしているのかをお伝えしていければと思います。



ただの「おいしい」ではなく「感動した!」と言われたいぼくが目指すのは、ただの「おいしい」ではありません。「感動」です。

日本に「おいしい」お店は無数にありますが、「

もっとみる

なにかにつけてタイミングが遅くなってしまう

今回の相談者の方は「やることなすことが周回遅れ」と感じているみたいなのです。

たとえば、高校生になった時に将来を考えてアルバイトや夢を見つけたり、大学生になったら遊び8割、勉強2割みたいに効率良く頑張れる人達がいる。場合によっては、その時期に海外にまで飛び出してしまう人すらいる。そして、就活の時期が来れば、どこで勉強したのかどんどんESを書いて面接に行ったり。社会人になったら仕事で忙しいはずなの

もっとみる
「文化的な生活」とは何か

「文化的な生活」とは何か

「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」。

日本国憲法二十五条を改めて読むと、「最低限度の生活」の基準に「文化的な」の一言が入っていることの意味を考えさせられる。私たちはただ「生きのびる」ためだけに日々を重ねるのではない。「生きる」ために、文化的な暮らしを自分たちの権利として主張できるのだ。

では「文化的な生活」とは何なのだろうか。

テレビや新聞、インターネットなどの

もっとみる
旅行コンプレックスの私が『0メートルの旅』を読んだら

旅行コンプレックスの私が『0メートルの旅』を読んだら

私は旅行が苦手だ。

旅行中、頭の片隅では自宅に帰ることをいつもぼんやりと考えている。もっとも好きなのは観光することでも地元の人と交流することでもなく、ホテルの部屋で風呂上がりにビールを飲みながらテレビを見ている瞬間だ。

旅慣れた誰かから「観光ガイドに載ってる店なんかじゃなくて、地元のおじさん達が日常的に使ってるような小汚いお店がいちばん美味しいんだぜ」とアドバイスをされても、ことりっぷに載って

もっとみる
娘の弁当作ってました。       高校三年の秋

娘の弁当作ってました。       高校三年の秋

高校行かない娘、根性は、ある。たまに行くその学校で絵は描いているらしい。夏休み終わっても始業式にも行かない。もう後半年なんとか出席で卒業、でも行かない。お父さん弁当は作るで。

どや、オムライスやで。明日はどうするんや。

モッツァレラ入れといたぞ。

娘の担任の先生電話くれる、今のままで来年卒業出来るには奇跡が起こるしかないと言う。先生も辛い。

行ったんか、良かったか?

頑張るね、無理するな

もっとみる
フィルモア通信 New York No17     流れる水

フィルモア通信 New York No17     流れる水

流れる水

 天ぷらの修業のつぎは鰻の捌きを覚えようと思い立ち、中央市場の老舗の川魚店に見習いに行くことにした。
朝四時からその捌きは始まり、六時には終わるのでそれから仕事に行くことになった。その川魚店には鰻捌きの名人と言われる人がいて、多くの京都の料理屋がその名人の捌いた鰻を仕入れに来ていた。

 名人は初老の痩せた男で、子供の頃からこの道一筋らしく、まな板の位置と右手の包丁使いの動きに合わせ

もっとみる
弱さのセンサー

弱さのセンサー

最近ある人と会ったのですが、その人に会った後にすごく肩が重くなったのです。昔、占いの鑑定をしていた頃は「肩が重くなる」という現象にはまぁまぁよく出合っていたのですが、今はその鑑定がやれていないので、肩が重くなることが久しぶりで新鮮でした。笑

ただ、僕にとって誰かと会っていて体の一部が痛くなったり、重くなったりするのはけっこう重要なセンサーとして助けられていることがあって、たとえば今回のように「肩

もっとみる
フィルモア通信 New York No6  アメリカの夜 

フィルモア通信 New York No6 アメリカの夜 

 ベトナム戦争時の外交補佐官だったドクター・ヘンリー・キッシンジャー氏のパーティーがあったのは、とても冷える冬の夜だった。
 
 そのパーティーのために作ったラムのローストミント風味、胡瓜と海老のシェリーサラダ、ブルーチーズのスフレなどを次々とダイニングルームへ送り出し、オーブンやスチーマーはうんうん、シューシューと働き、
背の高いシャンパングラスが音をたててキッチンに運び込まれたりするなか、オー

もっとみる
近ごろの若者がアルバイト先に求めていることって?

近ごろの若者がアルバイト先に求めていることって?

人手不足が続く昨今、どうしたら求人に応募してもらえるか、採用後の離職率を下げられるかっていうのは、大手のみならず私たち小さな飲食店にとっても大きな課題です。

この難題を解消するために私はよく、一緒に働く若いスタッフに「実際のところどんな理由でうちを選んだの?」とか「最近はバイト先にどんな条件を求めてる子が多いの?」などといったぶっちゃけ話を聞くようにしています。

するとときどき、こちらが予想も

もっとみる
才能に悩んだら、ぜんぶ物語のせいにしてしまえばいい (#教養のエチュード賞)

才能に悩んだら、ぜんぶ物語のせいにしてしまえばいい (#教養のエチュード賞)

「君って心が安定してるよね」

会社の考課面接にしては、ずいぶん曖昧でゆるい言葉だなと苦笑いしていると
「あ、一応、褒めてるんだよ?」
と申し訳程度のフォローをいただいた。

いろんな企業で、やっぱり社員のメンタルヘルスが課題となっているようです。仕事量はそのまま、責任もそのままに部下を働かせられる時間は激減・・・管理職は大変そうだなぁ。できることなら、なりたくない。

「心が安定」しているのが良

もっとみる
「考える」とは、自己と向き合う時間

「考える」とは、自己と向き合う時間

「インプット」と「アウトプット」という言葉がある。

本を読んだり話を聞いたり、自分の中に何かを取り入れる「インプット」と、それを自分なりに咀嚼した上で表現する「アウトプット」。

この2つのバランスが大事だというのは至るところで言われていることだ。

特にアウトプットは意識しなければできないことでもあるので、行動に移すとか文章やトーク、それ以外にも絵や音楽など何かしら表現することは是とされている

もっとみる
私たちが、自分の才能に気づけない理由

私たちが、自分の才能に気づけない理由

しょっちゅうプロ野球の話をしているので「野球に詳しい子」という扱いをされることが多い私ですが、自分ではあまり詳しいと思ったことがありません。

もっと野球のこと書いた方がいいよ!とか、そのうち野球の仕事くるんじゃない!?と言われるものの、私より詳しい人をたくさん知っているので、謙遜ではなく本気で「いやいや、私なんて…」と思ってしまうのです。

最近そんなやりとりを何度か繰り返していたことで、ふとこ

もっとみる
「あー、これを食べるときが一番幸せ」

「あー、これを食べるときが一番幸せ」

今一番好きな食べ物を聞かれたら、たまご焼きと答える。
それも卵2つに醤油だけで味を付け、少し多いかなと思うくらいの油を熱したところへジュッと一気に入れたら箸で大きく混ぜて、なんとなく形作っただけの適当なのが一番で、自分にとっておいしければそれでいいもの、それが好きな食べ物かなと思う。

これまで直に接した中で最も尊敬する料理人の1人に、料理屋での修行を一度も経験せず、本からの知識と自ら歩いて得た体

もっとみる