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在るまでの日々

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これまで書いた中で好きな文章、 かつ読んで欲しいものをまとめました。
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2019年8月の記事一覧

ズタボロでも歩きたかった、焦げた匂いのする街。

ズタボロでも歩きたかった、焦げた匂いのする街。

今日も目が覚めると昨日と同じように机に座っていた。

僕の夏休みは一体どこに?

自室には砕け散った思い出が所狭しと広がっていたのを思い出しながら一日を終える。今日も疲れた。こんな毎日じゃ思い出に浸る暇もない。

僕は13時を迎えると一番に地獄から抜け出しては自転車にまたがっては坂道を転がる。今の夏の風は思いの外気持ちが良い。しっかり安全運転で家に向かう。時折すれ違う子供想い馳せてしまう。僕も、無

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朝、木漏れ日の差すワンルームで私は自由を手に入れた。

朝、木漏れ日の差すワンルームで私は自由を手に入れた。

高架橋の下の道路に木漏れ日が反射して私の家の窓に入ってくる。そんな夏休みの早朝。

ここは東京の崖っぷちで狭いワンルームアパート。
けれどここは、やっと己で手に入れた自由で、私にとっては十分すぎるほど広くて住みやすい所だった。

瞼が度々くっつきそうになる、まだ眠いみたい。
私はベットからフローリングに転がり込み千鳥足で珈琲を作るべくコーヒメーカーまで向かった。

ひんやりとした空気を浴びて目が少

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鬱蒼とした空間から抜け出して一人で夜の田舎を歩く。

鬱蒼とした空間から抜け出して一人で夜の田舎を歩く。

人の笑い声とか一度泣けば空間を支配することの出来る奴とかベロベロなって頬を赤らめてダルがらみする奴を横目におだてる奴とかで溢れた部屋に僕は来てしまっている。

本当は行きたくなかった、会いたくなかった。

それでも僕は親に言われるがままに連れていかれるがままに、ここに座っている。目の前のテーブルにはおばあちゃんが出前を取ってくれたのであろう寿司があって隣にはピザが鎮座していた。

何故だろうか、僕

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朧げに下る街路樹と踊りだす雨と僕

朧げに下る街路樹と踊りだす雨と僕

鬱蒼としてじめったい歩道にはポツポツと髑髏が転がっており、天井にはまん丸い月があって僕の街を照らしていた。

そして、僕はそんな街をのらりくらりと歩いた。



夜が次第に深くなる。
遠くのほうに聞こえていたはずの猫の鳴き声も近くなる。

今、僕は街の端を歩いている。遠くには海に浮かぶ島があって届くはずのない手を伸ばしては緩やかに手を引っ込める。次第にポツポツと雨が降ってきては雨特有の匂いが一帯

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沢山の思い出をモノクロのまま振り返る。

沢山の思い出をモノクロのまま振り返る。

どうか、夢であってほしい。

今、僕は蛇のように曲がりくねった商店街を歩いている。そこは、もう僕が生まれた頃のような活気は見る影もなく、歩く僕に向けて瞼を下ろしては届かぬ思いを飛ばすだけであった。

しばらく歩くとひっそりと営業している店に出くわした。それは、昔おばあちゃんと散歩に行った際に買っていた饅頭屋さんだった。凄く懐かしい思いが胸に沸いて僕はそこで二つ饅頭を購入した。

僕は饅頭屋さんを後

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夢追い人は街を駆ける。

夢追い人は街を駆ける。

朝に輝く木漏れ日の穴を飛び跳ねながら迎える朝の夢。

今日からは夏休み。
僕はいつも通りの朝に目覚ましで起き朝日を浴びては無性に朝の街を足り出したくて仕方なかった。窓を眺めては、おじいちゃんとおばあちゃんが肩を寄せ合い互いにこやかな表情でランニングをしていた。僕はこの街にも微笑ましい表情もあるのだなと感心して鏡に映る自分を見ては笑みがこぼれてしまった。すると、僕の顔からこぼれた笑みに呼応するように

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不定期に来る揺れに頭を悩ます。

不定期に来る揺れに頭を悩ます。

今、僕は不定期なリズムで揺れ動く鉄の箱の中に座っている。前方には僕の街があって遠くの方には僕の家が見える。さらに、遠くには田んぼが見えて今は居ないおばあちゃんの事を思い出す。懐かしいな。

ここには疎らに人が座る。席は沢山空いている。けれど、立っている人もいる。人の個性が出る。

再び前を見ると懐かしいという思いは次第に遠くに置き去りになっていき数分後には僕が居座る空間を人が覆いつくしていた。それ

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秋の空気と夏の音色を纏った夜の街

秋の空気と夏の音色を纏った夜の街

僕の街を吹き抜ける風は少しばかり秋をほのめかすようになってきた。けれど、少し遠くの方からは夏の風物詩である花火が空を割る音が街を揺らしているのを肌で感じる。要するに、現在僕の街には秋と夏が居座っているということだ。

そして、久しぶりに僕は街を歩いた。

街を歩けば鈴虫の声が聞こえる。
しかし、高架橋の下にある自販機には虫が集っており、ここは未だに夏を置いてくれていることに安堵した僕は高架橋を潜り

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