マガジンのカバー画像

好きな記事

52
運営しているクリエイター

#現代詩

【現代詩】『プラネタ★リウム』

【現代詩】『プラネタ★リウム』

『プラネタ★リウム』
赤黄緑紫

散らかるということは

なんだ

散らかるということ

それは

名も知れぬ

プラネタリウムの

お星様たち

食べ残しの皿 飲み残しの缶

もう誰からも

求められなくなって仕舞には

言葉に詰まってしまう景色の中に

「ひとり」取り残された仕方のない、私

あれは可哀想なベテルの神様

口を啞然と開いたまんまで

炭酸の抜けきったコカ・コーラ

この景色を作

もっとみる
【現代詩】『熱湯✿3分』

【現代詩】『熱湯✿3分』

『熱湯✿3分』
あかきみどりむらさき

カップラーメンが出来上がる迄の
心地良いこの誰のものでもない3分間を
どうぞ私にお捧げ、くださいませ

今、世の中は、残酷にも、春なのです、よ。

自分を駄目だと思う事で
精神の安定を保っていた
我が愛しき婆ちゃん
ここへ、どうぞヒラリ
舞戻ってくださひな



思い出す、華を凍結させた
私達の夢。
願いを込めて、押し花したのは
明日、明後日、それよりず

もっとみる
詩 「そこにいて」

詩 「そこにいて」

そこにいて

ただ そこにいて

まだ そこにいて

ずっと そこにいて

でもさ とか

もっとさ とか

そんなの ないよ

きみが

そこにいて

そうやって 

いきていることが

うれしいから 

そこにいて

ねえ

ねえ

あのさ

そこにいて

星と金属

星と金属

冬の季節風がかき集めた
記憶の中から
端がまくれ上がった手記を
一冊見つけた

葉を落とした欅が
毛細血管のような枝を
空の曲面に張り巡らせていた
優しい言葉をかけてくれる人が
優しい人ではない

あなたにはもう何も言うことはない
そう言われた
取り返しがつかないことを数えあげてみる
忘れてしまった悲しみと
忘れられない悲しみの間を
君は風のように
吹きぬけてゆけるか

あしたの時刻が懸けられてい

もっとみる
「頷きは息をさせる」(詩)

「頷きは息をさせる」(詩)

許さないと決めたこと
それは弱さだと詰られるけれど
私はそれをそのままお腹にいれたい

許す自身でありたい見栄と
許せない理由の最たる私自身
それは同じ地平に立っている

どうか 許すことに倣わないで

太陽の光と出逢っても
乾くことのない湿地はあり
そこにはたしかに豊かな命の巡りがあること

私は
許さないで居続ける私を
何一つ欠けさせることなく 
許したい

精神科医中井久夫の詩魂 

日本精神医学会のウルトラマンである中井久夫は類いまれな語学と文学の才能の持ち主でもあった。1934年生2022年没の88年の人生で実に多方面で鬼才を発揮した、日本が世界に誇れる医学者文学者である。阪神淡路大震災を経験し、大学病院の病床を開放して避難民を受け入れたなど、行動力もたいへんなものだったが、何よりそれまで本邦にはなかった,PTSDという概念を用いて災害に遭遇した人々の「心のケアに」当たった

もっとみる
わかれを越えて

わかれを越えて

わかれは告げなかった
粗鉄色の空のしたで
都市の歩道橋で
アパートの狭い通路で
まるで挨拶のように
わかれはかわされていたから

荒野の電話ボックスは
風に吹かれて思慮深げだ
電話番号と悲劇の関係は?
糸電話による世界通信の方法は?
電話を何回鳴らせば約束は果たされるのか?

大切な言葉はいつも遅れたので
ぼくらは思い出を
未来に保留していた
それにしてもよくいったものだ
 〈ぼくらは〉と・・・・

もっとみる