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詩 「メモ」

スマートフォンが生み出した アプリの最高傑作は〈メモ〉 アプリにこれ以上の洗練はない このアプリのすごいところは このアプリにすごいところが ひとつもないってこと このアプリは わたしに何もおすすめしないし わたしを誰かに繋げようとしない メモがたのしいとき メモがおもしろいとき それはたぶん〈わたしが〉 たのしさをつくりだしているとき おもしろさをつくりだしているとき  ほら       こんなふうに      ほら             ほら   ほら

    • 詩 「散歩」

      花をみて ああ美しいと 感じるのに 草を踏みつけて ああごめんねとも 思わない無神経さを 草は責めたりしない 花が咲くと よろこぶのに 草が生えても むしり取るだけの残酷さを 草は責めたりしない さりとて花は花で 人に気に入られるために 咲き誇っているわけではない かもしれない かもしれない 言葉を持たず 動かないものたちへ 人は何が言えるだろう 人に何ができるというのだろう 花がなんだ 草がどうした 花のように 草のような なんなのだ 花があそこで 咲いていて

      • 詩 「がんばらないで」

        がんばってるひと もうがんばらないで がんばってないひと もうがんばらないで がんばっても がんばっても がんばらないで がんばらなくても だれもが いつでも うまれた ころから がんばってる がんばりすぎてる あまいことばで きれいごとをいって ばかにされても ゆめをみていて むりしないでと こえをかける このこえが きこえる? きこえるなら へんじをして がんばらないでいて

        • 詩 「ふたり」

          あれは四月 井の頭公園へ向かう道 ふたりで歩いた 初めての春 未来は遠く いつか いつかと 口にする いつかは いつしか 通りすぎた春 あなたなしでも 人生はつづき あなたなしでも 今年も春はゆく あの日 待ち合わせた 喫茶店へ ひとりで歩く 遅すぎた春 そして言います あの日のふたりに わたしは言います 変わらないものが 今もここにあると

        詩 「メモ」

          詩 「春なんて」

          春なんて もういいかい 春なんて まあだだよ 春なんて もういいかい 春なんて もういいよ 春なんて ふりむけば 春なんて みいつけた

          詩 「春なんて」

          詩 「インターネット」

          インターネットの普及 スマートフォンの多機能地獄の果てで わたしたちは 今すぐに 楽しませてもらえないと 我慢ならない人間になった 少しでも退屈するなら  次へ 気に入らなければ  次へ 次がダメなら 次へ  次へ 選択すら 必要ありません 消費する人が 消費されるものを 次々に生み出しながら 忙しいフリをする ここは 歴史上最高に快適な地獄 次へ その次へ そのまた次へ 進みつづけて たどり着いた からっぽの部屋

          詩 「インターネット」

          詩 「国語辞典」

          ぼくの いちばん 好きな詩集は 国語辞典 自己主張 感情表現 比喩表現に 疲れた心を そっと包んでくれる とってもクールで だれよりやさしい すてきなともだち

          詩 「国語辞典」

          詩 「あの世」

          首を吊ったあと 私は意識を失った 気がつくと 私はあの世にいた なぜここが あの世だとわかるかって? さっき〈あの世〉と書かれた 門をくぐったから間違いない ここは〈あの世〉なのだ 君たちが〈この世〉と呼んでいて そちらの世界で〈意識〉とされる 感覚のようなものはまだ続いている 私が私であるために持っていた 肉体やら記憶やら心とかいうものは あの世にいる私にもそなわっている と今の私には思える なぜなら 首を吊る前と なんら変わりない状態で 相も変わらず〈私〉が

          詩 「あの世」

          詩 「でをがに」

          〈容疑者Aの場合〉 白か黒 どっちがいい? うーん 黒でいいかな 〈容疑者Bの場合〉 今日の夕飯 昨日のおかずの余りものか スーパーのお惣菜の予定だけど いいかな? うーん いや コンビニ弁当とかでいいよ 〈神のアナウンス〉 おい こら デ人間どもよ よく聞け 今すぐ で を が に 変えなさい この世に で 呼ばわり していいものは ひとつもない 罰として おまえを デの刑に処す 〈デの刑〉 このボロボロで ゲロのニオイが染み込んだ きったねぇ雑巾か

          詩 「でをがに」

          詩 「なみだ」

          おそらが ざぁざぁ なくから かさを なくした わたし こんなに ずぶぬれ どうしたの? わたし ここにいるよ おそらは とおくて たかいから おはなし できない ひとりぼっちで なかないで わたし ここにいるよ わたし かなしく ないけど いまから ざぁざぁ なくから おそらも もっと ないて いいよ ふたりの なみだで みずたまり つくろ なみだ かれるまで いっしょに あそぼ

          詩 「なみだ」

          詩 「イケメンとは何か」

          【氏名】 池井 ケメン 【生年月日】 イケ年イケ月メンメン日 【職業】 イケメン職員 【好きなもの】 愛、という字のフォルム。 【嫌いなもの】 1秒前の自分。 【好きなタイプ】 君のような人。 【口癖】 (イケメンだね、と評された際に) それな。マジでそれな。ガチでエグいぐらいそれな。 【最近の悩み】 イケメンすぎて逆にキモいって言われること。逆に悩んでるし、悩んでる姿がまたイケメンになってしまう自分がキモい。 【無人島にひとつだけ持っていくも

          詩 「イケメンとは何か」

          詩 「存在」

          1. 生まれなかった息子よ 今どこで何してる 顔も知らぬ娘よ 苺味の飴をあげる 広い宇宙のどこかに 影を持たない君がいて まだかまだかと待っている わたしの連絡待っている 草や木のように 石や砂のように 揺るぎない信念で ただそこで待っていて 2. どこへ行くのときかれたら ちょっとそこまでと答えます 存在しない手のひらの ぬくもり探しに出かけます 愛をささやく船が出て 君の名前を呼びました 声は夜空に消えたあと 君の髪を揺らす風になる 悲しみのように 赤い血の

          詩 「存在」

          詩 「うんこ名言風」

          1. うんこをしたくて うんこをするのではありません うんこをせずにはいられないから うんこをするのです それが私にとっての うんこというものですね ええ、はい。 2. 人生の困難に直面し 一歩も動けなくなったとき その高い壁を越えるためには 何はともあれ、まずは うんこをすることです 身軽になることはもちろん 何よりスッキリしますからね 3. 美しい女性にむかって 「あなたような人でも  うんこをするのでしょうか?」 と質問したら 「いいえ。私のお尻からは  お花が出て

          詩 「うんこ名言風」

          詩 「悪口」

          悪口を言うときの語り口で 褒め称賛できたなら 悪口っぽく 好きな気持ちを語れたとしたら すごくいい  悪口には ある種の情熱と確信がある だから聞いていて印象に残るし 悪口を言う自分も消耗する 言葉は鋭く自らを刺す 好きを語るときにこそ あの情熱と確信がほしい ふわふわした 好きもいいけれど 腹立たしいほどの 好きを語りたい 苛立つほどの 好きを感じたい

          詩 「悪口」

          詩 「親子の台本」

          学校から帰宅した健二 居間にカバンを下ろし キッチンの母をチラ見 熱心にネギを刻む母 おかえり、とは言わないが それ風な表情を顔面に浮かべたのち 刻んだネギを鼻の穴に詰め始める が、ネギのあまりの辛さに涙する 母が無言の涙を流している間 健二はスマートフォンの画面に夢中 しばらくするとキッチンから「フガフガ」という奇妙な音がするので行ってみると、母がゴミ箱を抱え、鼻に詰まったネギをフガフガしているのを目撃 母は涙を拭きつつ健二をチラ見 母を見つめる健二は無表情 だが母は

          詩 「親子の台本」

          詩 「そっか」

          そっか と言うだけで 人は人を励ますことができる ぼくときみは ぜんぜんちがうけど それでいいのかも と思える あの日 きみがくれた そっか が 今もぼくを励まし 肩に手をおくのです だから たまには でもさ を お休みして 今日は そっか そっか へぇ そうなんだ の日

          詩 「そっか」