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詩 「時の記憶」


時間は
わたしから
あらゆるものを奪う

若さや
人生や命や
昨日や今日や
明日までも

このままずっと
明けないでほしいと願う
長くて短い夜も

カーテンの隙間から差し込む
シワひとつない洗いたての朝陽や
まだ手つかずの新しい木曜日も

なにもかも
ここにあるのに

なにもかも
ここにあったのに

なにもかも
この手でつかめない

もしも
時間が止まったら
わたしは何も失わずに済む

もしも
人生に限りがなく
時間を巻き戻せるのなら

わたしが懐かしむ日はいつだろう
わたしの大切なものはなんだろう

時が流れるから
この世は美しい

時は無慈悲だから
この世が愛おしい

それなのに
わたしは今も
待っている

時を超える
魔法の列車を
待っている

眠れない夜に
時の記憶駅発
夢の果て行きで
会いましょう



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