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TABLO連載【加筆修正】

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ニュースサイト「TABLO」に連載をした過去記事に加筆修正をしてまとめています。
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#メンタル

あなたのエンターテイメントは人を傷つけてもいいものなのか?

あなたのエンターテイメントは人を傷つけてもいいものなのか?

「文句を言う人ってだいたい当事者じゃないよね」って、歌舞伎町を歩きまわり、いちごミルクの缶ジュースを探していたのは、どんよりした気持ち甘いものでごまかせるかなと思ったからでした。

お昼ご飯を食べるついでに散歩をすることが多い裏通りで、わたしには見向きもしないキャッチの男性が「無料案内所」の看板をテーブル代わりにしていちごミルクの缶を灰皿代わりに使っているのを見かけてから、「そういえばいちごミルク

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釜ヶ崎のおっちゃんとわたしが終わらせないでいる日常

釜ヶ崎のおっちゃんとわたしが終わらせないでいる日常

ドヤ街で初めて手に入れたあだ名 これは数年前の終戦記念日翌日の出来事です。

 わたしはとある"おっちゃん"がどうしても行きたいと言っていた土地のことを何年も探していました。(そのおっちゃんは「あおさん」と名乗っていて、わたしも「あおさん」と呼んでいるので、今後は表記を「あおさん」とします)

 あおさんは、大阪の西成・釜ヶ崎で出会った友人です。

 初めて会ったときに、「成宮アイコ」というわたし

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自分は処方箋をもらう権利なんてないし、人一倍に性格がだらしないだけかも…という不安の先

自分は処方箋をもらう権利なんてないし、人一倍に性格がだらしないだけかも…という不安の先

再び、通院前回の「いつも意識散漫、頭がとっちらかっている、頭の中に教授がいる」といった内容を書いたのですが、あまりにも生活と仕事に支障が出てしまったので、再度、通院を始めました。

そもそもは機能不全家庭がバックボーンにある抑うつと、それにともなった社会不安障害に長年悩まされていたのですが、その治療が数年前にやっとひと段落して突出してつらかった部分が落ち着いたことで、今度は、ふと根本にあった自分自

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人の話がちゃんと聞けない。何度姿勢を正しても、気づくと違うことを考えて壁のシミを見ている

人の話がちゃんと聞けない。何度姿勢を正しても、気づくと違うことを考えて壁のシミを見ている

いつも意識散漫、頭がとっちらかっている片手でドライヤーをかけながら、「やっぱり今日のメールの文章はやなやつに見えたかもしれない、無理にでも絵文字とか入れればよかったな」と思いながら、テーブルに置いたスマホで好きなアイドルの週末のライブ情報をスクロール、目はテレビの『アメトーーク!』を見て、ドアのむこうで「あとでアイス食べるー?」と聴いてくる家族に「食べる」と大声で返事をしました。メールチェックをし

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電気が切れても電気が選べない。取るに足らないようなことで世界から拒絶された気持ちになる

電気が切れても電気が選べない。取るに足らないようなことで世界から拒絶された気持ちになる

文字は読めるのに、わけのわからない呪文に見えるずいぶん前から部屋の電気がひとつ切れています。

天井に取り付ける形の、よくある円形の電気です。蛍光灯が二重になっていて、どちらか片方が切れたからといっても生活ができるので、ずっとそのままにしていました。

もちろん、買いに行こうとは思っていたのですが、電気屋さんの前まで行っては躊躇して帰ってきてしまいます。「また買わずに帰ってきてしまった(=だから自

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黙っているのはなにも考えていないわけじゃないことをわざわざ説明するなんてうんざりする

黙っているのはなにも考えていないわけじゃないことをわざわざ説明するなんてうんざりする

なにも思わなかったの? の裏側に見えるもの日々の報告をするような日常会話がどうもうまくできないので、自分の気持ちや考えていることを、瞬発的に言葉にすることが苦手です。だからこうして文章を書いているのですが、瞬発力を良しとする文化もあるようで、ときどきこんなことを言われます。

「なにも思わなかったの?」

戦後最大級と言われた殺人事件のニュースのときも同じでした。わたしが人生の糧にしている「アイド

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DVが生むのは反撃じゃなく自己肯定感のなさ 祖父に暴力されたわたしは他人に暴力をふるわない

DVが生むのは反撃じゃなく自己肯定感のなさ 祖父に暴力されたわたしは他人に暴力をふるわない

怒りよりも先にあるもの港区南青山に、児童相談所と母子シェルターなどの施設が入る「子ども家庭総合支援センター(仮称)」の建設が予定され、さまざまな声があがっています。

テレビでは影響力のあるタレントさんが、「親に暴行されて『キーッ』となってる子が外にボーンと飛び出して、暴力をふるったりカツアゲしたりするかもしれない」といった発言をされました。



その発言を知ったときには、正直、「はあ? まじ

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ふっと意識が自分だけになる「自分スイッチ」

ふっと意識が自分だけになる「自分スイッチ」

ふっと意識が自分だけになる「自分スイッチ」思えば、小学校のころからそうでした。

「2組の転校生、なまってるけどかっこいいよね」「音楽の先生、すぐ怒るし、むかつかない?」「新しい文房具屋さん見つけたんだよ」

近所の女の子たちと、集団登校で盛り上がっている途中、なにげないことをきっかけに、たとえば道が日陰から日向になるとき、アスファルトがふっと明るくなったあの瞬間に、「自分スイッチ」のようなものが

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コンビニでなにを買えばいいかわからない日、自己否定でズタズタにする前に

コンビニでなにを買えばいいかわからない日、自己否定でズタズタにする前に

空腹でも、コンビニでなにを買えばいいかわからない日ファミリーマートの自動ドアが鳴らすメロディーを聞きながら、おにぎりの棚の前で動けなくなってしまいました。

おなかは空いているのですが、食べたいものがなにも思いつきません。

しかたなく、となりのサンドイッチの棚をながめて、デザートの棚でプリンを手にとり、無意識に裏面のカロリー表示を見ていることに気づき、「だからなんだって言うんだろうな」と棚に戻し

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教務室のテレビと地下鉄サリン事件。神さまは人間だったから、わたし、ギャルになる。

教務室のテレビと地下鉄サリン事件。神さまは人間だったから、わたし、ギャルになる。

先生たちが来なかった朝の地獄あの日、わたしはまだ子どもでした。

常々、神さまなんていない、と思っていたのでおなかが痛くなっても、「神さま、もう悪いことしませんからおなかの痛みをなおしてください」なんてトイレの中で祈ったことはありませんし、ティーン誌の後ろのページの星座占いなんて気にしたこともありませんでした。当時、クラスメイトがつけてたプロミスリング(手首につける紐のブレスレット、切れたら願いが

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都合がいい他人同士だからこそできること。酔っ払ったおじさんが忘れた『男はつらいよ』のこと

都合がいい他人同士だからこそできること。酔っ払ったおじさんが忘れた『男はつらいよ』のこと

わたしだけが覚えている、『男はつらいよ』「はい、今日はもうおしまい。この一杯で帰ってね」

小さな居酒屋さんで、店員さんから席を立たされたおじさんを前に、わたしは、「仕方ないなぁ」と焼き鳥の串を手にとりました。

そのおじさんはさっきまでわたしに、『男はつらいよ』の寅さんがいかにかっこいいかを熱心に説明していました。「寅さんは、ちょっと俺みたいなところがあるな」と笑うおじさん。わたしは寅さんシリー

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自分が世界から不在になりたかったころ

自分が世界から不在になりたかったころ

自分の不在を求めていた夏になると流れてくる、幼いころの夏休みの思い出や切なすぎる恋愛の歌を聴いてると、ぶわーっと風景や情景が浮かび、「ああ、この気持ち、懐かしい…エモい…」と思い出して泣きそうになるのですが、ふと考えてみると、それは全て実体験でもなければ実写でもなく、今まで見てきたアニメやマンガの風景だということに気がつき、愕然としました。

思えば、これまでわたしは、世界に対して自分の不在を求め

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同世代に会わないように、イトーヨーカドーの紳士服売り場のトイレの前の白いベンチに座っていたわたしへ

同世代に会わないように、イトーヨーカドーの紳士服売り場のトイレの前の白いベンチに座っていたわたしへ

定期的にくる「やばい! 取り残されている」という波絶対地雷だろうな、と思いながら買った新発売の缶ジュースを片手に、スマホアプリに、「20時 改札待ち合わせ」と書いてふと思いました。大人になると遊ぶ約束の時間が遅くなります。夕方から会う約束をすることが普通になったのは、何歳からだったか思い出せません。

定期的に、かつて『有名ネトア』(※ネットアイドル)と呼ばれたひとのブログを読みに行きます。そこに

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「前例がない」と自殺防止担当の保健所で門前払いされた雨降りの思い出

「前例がない」と自殺防止担当の保健所で門前払いされた雨降りの思い出

見る「ふり」もされなかった資料いわゆる、門前払いでした。

S区の自殺防止担当の保健所の前で、明らかに落胆したわたしを見て、付き添ってくれた区議会議員Aさんは、「まだまだこれから変わっていくはずです」と気遣ってくれました。

「区の後援をもらったほうがチラシを置いてもらえる場所が増えやすいので、保健所に相談に行きましょう」

自殺防止週間に関連したイベントに出演をすることになり、福祉関係者だけでは

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